日本語能力試験(JLPT)とは?
日本語能力試験(JLPT:Japanese Language Proficiency Test)とは、日本語を母語としない人の日本語能力を測定し認定する、世界最大規模の日本語試験です。
国際交流基金(海外)と日本国際教育支援協会(国内)が共催し、1984年に開始されて以来、約80の国と地域で実施されています。
在留資格「特定技能」「高度専門職」「医療」などの取得要件や、日本の専門学校・大学への進学要件として広く利用されており、日本語学習者の公式な能力証明として事実上の国際標準となっています。
レベルは最もやさしい「N5」から最も難しい「N1」までの5段階で、受験者は自身の学習到達度に応じてレベルを選択して受験します。試験はマークシート方式で実施され、「聞く」「読む」能力を中心に測定します。
2024年の世界応募者数は過去最多の約172万人に達し、2025年7月試験の海外応募者数は560,148人と記録を更新しました。
レベル別の認定目安と試験構成
JLPTの5つのレベルは、日本語の運用能力を段階的に評価するよう設計されています。N1〜N2は「現実の生活の幅広い場面での日本語」、N3は移行期、N4〜N5は「教室内で学ぶ基本的な日本語」を中心に測定します。
試験科目・試験時間・配点はレベルにより異なります。
| N1 | 幅広い場面で使われる日本語を理解できる。論理的にやや複雑な文章・抽象度の高い文章の読解、自然なスピードの会話の聴解が可能。大学・大学院レベル。 |
|---|---|
| N2 | 日常的な場面+幅広い場面の日本語をある程度理解できる。新聞・雑誌の記事、まとまりのある会話・ニュースの聴解が可能。大学・ビジネスレベル。 |
| N3 | 日常的な場面の日本語をある程度理解できる。日常的な話題の具体的な内容の文章を読み、ほぼ自然なスピードの会話を聞き取れる。 |
| N4 | 基本的な日本語を理解できる。日常生活の身近な話題を読んで理解し、やや遅いスピードの日常会話の内容をほぼ理解できる。特定技能の基準レベル。 |
| N5 | 基本的な日本語をある程度理解できる。ひらがな・カタカナ・基本漢字で書かれた定型的な表現を読み、短く遅い会話を聞き取れる。初学者レベル。 |
試験は「言語知識(文字・語彙・文法)」「読解」「聴解」の3科目(N4・N5は一部科目を統合して2科目)で構成されます。
合格には①総合得点が合格点以上であること、②すべての得点区分で基準点以上であることの両方が必要です。例えばN1は総合180点満点・合格点100点、各得点区分(0〜60点)でそれぞれ19点以上が基準点です。
関連する法律・制度での活用
JLPTの合格実績は、日本の入管手続きや各種国家資格の要件として広く制度化されています。特に2019年創設の特定技能制度や、2027年4月施行予定の育成就労制度では、日本語能力の客観的指標として中心的な役割を果たします。
| 制度 | 要件となるレベル | 備考 |
|---|---|---|
| 特定技能1号(全分野共通) | N4以上 | JFT-Basic A2相当以上での代替可 |
| 特定技能1号(介護分野) | N4以上+介護日本語評価試験 | 介護現場での専門用語を別途測定 |
| 育成就労(2027年4月〜)入国時 | N5または相当の講習履修 | 在留中にN4到達が前提 |
| 高度専門職ポイント制 | N1=15点/N2=10点 | 70点以上で認定 |
| 永住許可 | 法定要件ではないが素行要素 | 日本社会への統合度の参考 |
| 医師・看護師国家試験 | 実質N1相当 | 日本語による高度専門的意思疎通が必要 |
| 在留資格「医療」(外国人医師・看護師) | N1相当 | 国家試験合格が前提要件 |
特定技能制度では日本語能力の証明としてJLPT N4またはJFT-Basic A2相当が選択可能ですが、JLPTのほうが年2回の定期実施で受験機会が安定しています。
一方、JFT-BasicはCBT方式で通年実施されるため、受験タイミングの柔軟性が高い点が特徴です。
実務上の注意点
JLPTは受験から結果通知までに約2ヶ月を要するため、在留資格申請のスケジュールを逆算して受験計画を立てる必要があります。また、試験の特性上、実際の会話能力・作文能力を直接測定しないため、JLPTの級だけで実務能力を判断するリスクも認識しておくべきです。
試験日・申込時期の把握
国内試験は毎年7月第1日曜と12月第1日曜に実施され、第1回(7月)の申込は3〜4月、第2回(12月)は8〜9月が中心です。海外では国・地域により年1回のみの実施もあるため、JLPT公式サイトで実施都市ごとの日程を確認してください。結果発表は試験後約2ヶ月(8月末/2月初め頃)です。
合格証明書の有効期限
JLPTの認定結果は有効期限が定められていないため、いつ取得した証明書でも在留資格申請時に使用可能です。ただし、実際の日本語力は使用していないと低下するため、企業側は合格証明書と現在の能力を別個に評価することが望ましいです。
「聞く・読む」に偏る試験特性
JLPTはマークシート方式で、「書く」「話す」能力を直接測定しません。N4合格者でも会話や作業指示のやり取りに課題があるケースがあり、面接・試用期間での実技確認が重要です。業務日本語の追加研修を前提とした採用計画が現実的です。
N4と業務レベルのギャップ
特定技能の日本語要件はN4以上ですが、実務では専門用語・安全指示・顧客対応など、N4では対応しきれない場面もあります。企業は業務日本語研修や現場OJTを補完的に提供し、段階的なレベルアップを支援する必要があります。
受験手配の支援
特定技能の義務的支援「日本語学習の機会の提供」の一環として、JLPT受験申込の補助、受験料の補助、学習時間の有給化などを任意的支援で実施する企業が増えています。受験料は国内・海外で異なるため、雇用契約時に明記することが推奨されます。
関連する試験との違い
日本語能力を測定する試験はJLPT以外にも複数あり、それぞれ目的・形式・認定範囲が異なります。在留資格や就労場面に応じて、適切な試験を選択することが重要です。
| 試験名 | 主催 | 特徴 |
|---|---|---|
| JLPT(日本語能力試験) | 国際交流基金・日本国際教育支援協会 | 年2回、マークシート、N1〜N5、世界80以上の国・地域で実施 |
| JFT-Basic(国際交流基金日本語基礎テスト) | 国際交流基金 | CBT方式で通年実施、A2相当レベル、特定技能用 |
| BJT(ビジネス日本語能力テスト) | 日本漢字能力検定協会 | CBT方式でビジネス場面を測定、高度専門職ポイントに活用可 |
| J.TEST(実用日本語検定) | 日本語検定協会 | 上級〜入門の6レベル、ビジネス現場での活用 |
| 日本語検定 | 日本語検定委員会 | 日本人・外国人両方向け、敬語・漢字・文法など7領域を測定 |
| 介護日本語評価試験 | 国際交流基金 | 特定技能介護分野で追加的に課される専門試験 |
特定技能の日本語要件では、JLPT N4とJFT-Basic A2が同等レベルとして扱われますが、JFT-BasicはCBT方式で通年実施されるため、受験機会を確保しやすい特徴があります。
建設・農業・介護など分野特化型のキャリアでは、JLPTをベースとしつつBJTやJ.TESTで実務的運用能力を補完するケースも見られます。
よくある質問
Q. JLPTはいつ・どこで受験できますか?
A. 日本国内および海外約80の国・地域で、毎年7月第1日曜と12月第1日曜に実施されます(年2回)。
海外では国・地域により年1回のみの実施地もあり、JLPT公式サイトで実施都市ごとの日程を確認できます。
申込は第1回が3〜4月、第2回が8〜9月が一般的で、国内はJEES(日本国際教育支援協会)、海外は国際交流基金または現地実施機関を通じて行います。
Q. 合格基準と結果の見方はどうなっていますか?
A. 合格には①総合得点が合格点以上、②すべての得点区分(言語知識・読解・聴解)で基準点以上、の両方を満たす必要があります。
例えばN1は総合180点満点・合格点100点で、各得点区分では60点満点中19点が基準点です。
総合点が合格点を超えていても、ひとつの区分で基準点を下回れば不合格となる「足切り方式」である点に注意してください。
Q. 特定技能の採用ではJLPTとJFT-Basicのどちらがよいですか?
A. 法令上はJLPT N4以上とJFT-Basic A2相当以上が同等に扱われ、どちらでも採用要件を満たせます。JLPTは年2回(7月・12月)の定期実施で国際的知名度が高く、日本語学習の総合的到達度を示すのに適しています。
JFT-BasicはCBTで通年実施のため採用スケジュールに合わせやすく、特定技能に特化した実践的な測定が行われます。
候補者の受験履歴と受験可能性を踏まえて選択してください。
Q. 介護分野では追加の試験がありますか?
A. はい、介護分野の特定技能1号ではJLPT N4またはJFT-Basic A2相当に加え、「介護日本語評価試験」の合格が必要です。
この試験は介護現場で頻出する専門用語や利用者とのコミュニケーションを測定する追加テストで、国際交流基金が実施しています。
介護以外の分野ではJLPTまたはJFT-Basicのみで要件を満たせます。
Q. 合格したレベルは履歴書にどう書けばよいですか?
A. 履歴書には「日本語能力試験N○合格(○○年○月)」と表記し、受験回(例:2025年第1回)と合格年月を明記します。在留資格申請では合格証明書(認定書)の原本または写しを添付します。
認定結果の再発行には所定の手数料がかかるため、原本は紛失しないよう管理してください。
また、国内外で取得したものは同等に扱われるため、海外での合格実績もそのまま利用できます。