事前ガイダンスとは?
事前ガイダンスとは、特定技能1号外国人を受け入れる際に、受入機関または登録支援機関が外国人本人に対して、在留資格の申請前に実施する情報提供の支援です。
1号特定技能外国人支援計画の10項目の義務的支援の一つに位置付けられ、雇用契約の内容・日本での活動範囲・入国手続き・保証金徴収禁止・支援費用の負担区分などを、本人が十分理解できる言語で、対面またはビデオ通話を用いて3時間以上かけて説明する必要があります。
「生活オリエンテーション」が入国後の生活立ち上げに特化した情報提供であるのに対し、事前ガイダンスは「来日前の期待と現実のズレを埋めるため」の情報提供で、実施時期も実施内容も異なります。
実施後は参考様式第5-9号「事前ガイダンスの確認書」に本人の署名を得て保管する必要があり、出入国在留管理庁の実地検査や定期届出の裏付け資料となります。
必要になる場面
事前ガイダンスは、特定技能1号の在留資格申請に先立って必ず実施する必要があります。
実施が漏れている場合、在留資格認定証明書交付申請または在留資格変更許可申請の段階で基準違反として不許可となる可能性があります。
海外から新規に呼び寄せる場合
海外の求職者と特定技能雇用契約を締結した後、在留資格認定証明書交付申請を行う前に実施します。ビデオ通話による実施が一般的で、送出機関・現地の人材紹介会社の施設を利用するケースも多く見られます。
国内で在留資格変更を行う場合
留学生・家族滞在者・技能実習修了者等が特定技能1号に在留資格を変更する場合、変更許可申請を行う前に実施します。既に国内に在住しているため、対面での実施が選ばれることが多いです。
転職などで新たな特定技能雇用契約を結ぶ場合
特定技能1号の外国人が転職し、新しい受入機関と雇用契約を結ぶ場合も、新たな雇用条件・業務内容について事前ガイダンスを再実施する必要があります。
複数人を一括で採用する場合
同じ時期に複数の外国人を採用するときは、まとめて実施することも可能です。3名の外国人に3時間の事前ガイダンスを一斉実施した場合、全員について3時間実施したものとみなされます。
実施の手順と説明項目
事前ガイダンスは文書のみの郵送・送付では認められず、対面またはビデオ通話を用いた「双方向コミュニケーション」が必須です。
本人からの質問に答え、理解度を確認しながら進める必要があります。所要時間3時間以上を一度に消化するか、分割で実施するかは自由です。
- 実施体制を整える。受入機関が自社で実施するか、登録支援機関に委託するかを選択します。通訳・翻訳者を手配し、本人の母国語または十分理解できる言語での資料・説明を準備します。
- 実施日時・方法(対面/ビデオ通話)を調整し、本人に通知します。海外在住の候補者にはビデオ通話での実施が現実的で、送出機関等と協力して現地に集まって受講する方法もあります。
- 以下の項目について情報を提供します。①業務内容・報酬額・労働時間・休日等の労働条件、②取得予定の在留資格で従事できる活動の範囲、③在留資格の申請前に支払う費用があるか、④保証金・違約金契約の禁止(徴収されていないこと、徴収する契約を結ばないこと)、⑤送出機関等への支払いがある場合はその内容、⑥支援費用は受入機関が負担し本人に負担させないこと、⑦入国時の空港送迎および住居確保の支援内容、⑧相談・苦情対応の窓口と連絡先、⑨本人の権利(労働基準法の適用・不当な扱いを受けた際の相談先等)、⑩その他日本での就労・生活に必要な情報。
- 本人からの質問に答え、理解度を確認します。項目ごとに「わかりましたか」と確認するのではなく、本人に要約してもらったり、質問を促すことで理解度を把握します。
- 参考様式第5-9号「事前ガイダンスの確認書」を本人に提示し、内容を確認した上で署名を得ます。実施記録は支援を行う事務所で保管し、入管への提出は不要ですが、実地検査等の証跡として5年以上の保管が望ましいとされています。
注意点・よくある失敗
事前ガイダンスは「来日前のミスマッチ防止」が本来の目的です。
実施時間の3時間を埋めることだけを目指すのではなく、本人が雇用条件・活動範囲・権利義務を正確に理解した状態で来日できるよう、実効性のある説明を行うことが求められます。
文書のみの送付は不可
資料を送付しただけでは事前ガイダンスを実施したことにはなりません。対面またはビデオ通話による双方向コミュニケーションが必須で、録画動画を一方的に視聴させるだけの方法も認められません。
本人の理解できる言語で実施する
日本語のみで実施しても、本人の日本語能力が不十分な場合は理解できたとみなされません。通訳者の同席または母国語対応可能な担当者による実施が必要です。登録支援機関に委託する際も、対応言語を事前確認することが重要です。
保証金・違約金契約の有無確認
本人が送出機関や仲介者から高額な保証金を徴収されていたり、逃亡時の違約金契約を結ばされていたりすると、特定技能の基準違反となります。事前ガイダンスでは「そのような契約がないこと」を必ず確認し、あった場合は解約を求める対応が必要です。
実施時期の誤り
在留資格認定証明書交付申請または在留資格変更許可申請の「前」に実施する必要があります。申請後・許可後に実施したものは事前ガイダンスとして認められず、基準不適合となるため、スケジュール管理に注意が必要です。
確認書の署名漏れ・保管不備
参考様式第5-9号への本人署名がない、紛失している等のケースでは、実施証跡がないと判断されるおそれがあります。電子化してクラウドに保存するなど、紛失防止策を講じることが推奨されます。
類似支援項目との違い
特定技能1号の義務的支援には、類似の情報提供支援が複数あります。
目的・実施時期・必要時間・様式番号が異なるため、それぞれ独立して実施・記録する必要があります。
| 支援項目 | 実施時期 | 主な内容・最低時間・様式 |
|---|---|---|
| 事前ガイダンス | 雇用契約締結後〜在留資格申請前 | 雇用契約・在留資格・権利義務等/3時間以上/参考様式第5-9号 |
| 生活オリエンテーション | 入国後または資格変更後の就労開始前後 | 日本の生活一般・医療・公的手続き等/8時間以上/参考様式第5-8号 |
| 出入国送迎 | 入国時・帰国時 | 空港と住居または事業所間の送迎/様式なし |
| 住居確保・生活契約支援 | 入国前〜入国後 | 住居の確保、ライフライン・携帯契約の補助 |
| 公的手続き等への同行 | 必要時に随時 | 市役所・銀行・病院等への同行 |
| 相談・苦情対応 | 在留中常時 | 本人からの相談受付と対応 |
特に事前ガイダンスと生活オリエンテーションは混同されやすいですが、実施時期(入国前/入国後)・実施内容(雇用条件/生活情報)・最低時間(3時間/8時間)・記録様式(5-9号/5-8号)がすべて異なる別々の支援です。
どちらか一方を省略することはできず、両方の確認書が実地検査時に求められます。
よくある質問
Q. 事前ガイダンスは必ず3時間以上実施しなければなりませんか?
A. はい、3時間以上の実施が義務付けられています。時間短縮は認められず、省略することもできません。
ただし、1日で3時間を連続実施する必要はなく、複数回に分割しての実施も可能です。
複数の外国人に対して同時実施する場合、3名に3時間実施すれば3名とも3時間の事前ガイダンスを受けたとみなされます。
Q. どの言語で実施すればよいですか?
A. 特定技能外国人本人が十分理解できる言語で実施する必要があります。
原則は本人の母国語(ベトナム語・インドネシア語・ミャンマー語・フィリピン語・中国語・英語等)ですが、本人の日本語能力が十分高ければ日本語での実施も認められます。
通訳者の同席、多言語資料の活用、母国語対応可能な登録支援機関への委託が一般的な対応方法です。
Q. 動画視聴や録画の視聴で実施しても大丈夫ですか?
A. 一方的な動画視聴のみでは事前ガイダンスとして認められません。
対面またはビデオ通話(Zoom・Teams・LINE等)による双方向のコミュニケーションが必須で、本人の質問に回答できる体制が必要です。
参考資料として動画を併用することは問題ありませんが、動画視聴+質疑応答+個別説明の組み合わせで設計してください。
Q. 費用は誰が負担しますか?
A. 事前ガイダンスの実施費用(通訳料・会議システム利用料・資料作成費等)は、すべて受入機関が負担します。
外国人本人に直接または間接的に負担させることは禁止されており、事前ガイダンスの中でも「支援費用は本人負担ではないこと」を説明する義務があります。
登録支援機関への委託料は、月額委託料に含まれる場合と別料金になる場合があるため、契約前に確認してください。
Q. 確認書はどのように保管すればよいですか?
A. 参考様式第5-9号「事前ガイダンスの確認書」は、支援を行う事務所で保管します。
入管への提出は不要ですが、実地検査や定期届出の裏付け資料として必要となるため、5年以上の保管が推奨されます。
紙の原本に加え、PDFスキャンしてクラウドストレージにバックアップ保存しておくと、紛失時のリスクを軽減できます。