特定技能雇用契約とは?
特定技能雇用契約とは、特定技能所属機関(受入れ機関)と特定技能外国人の間で締結される雇用契約のことです。一般的な労働契約に加え、報酬同等要件・産業分野要件・帰国旅費負担義務など特定技能制度固有の事項を盛り込む必要があります。
契約締結は、在留資格認定証明書交付申請または在留資格変更許可申請の前提条件であり、契約書のコピーは申請書類の必須添付資料です。
契約に法令違反や記載漏れがあると申請不許可となるため、入管が公開する参考様式(第1-5号「特定技能雇用契約書」、第1-6号「雇用条件書」)に沿って作成するのが実務上の標準的な対応となります。
必要になる場面
特定技能雇用契約は、外国人の入国前から退職時まで特定技能制度のライフサイクル全般で必要となります。
在留資格認定証明書交付申請時(海外からの新規受入れ)
海外在住の外国人を新規に呼び寄せる場合、申請前に特定技能雇用契約を締結し、契約書コピーを認定証明書交付申請書に添付して提出します。契約締結なしでは在留資格申請自体ができません。
在留資格変更許可申請時(国内資格からの切替)
技能実習2号修了者・留学生・他の就労資格保有者などが特定技能1号へ変更する場合も、変更許可申請の前に特定技能雇用契約を締結します。日本国内での申請のため契約発効日と入国予定日の調整は不要ですが、報酬同等要件を満たす条件設計は同様に必要です。
雇用条件の変更時
賃金・労働時間・業務内容・勤務地などの雇用条件に変更が生じた場合は、契約変更を行ったうえで参考様式第3-1号により14日以内に随時届出が必要です。軽微な変更(労働条件に実質的影響のない事項)は対象外となります。
契約期間満了・退職時
契約期間の満了や退職に伴う契約終了時も、参考様式第3-1号で随時届出が必要です。在留期間更新を予定している場合は、更新前に新契約の締結状況を整理しておくことが推奨されます。
申請・取得の手順
特定技能雇用契約の作成から在留資格申請までは、概ね以下のステップで進めます。
契約書と雇用条件書はセットで作成し、外国人本人が十分理解できる言語の翻訳版も用意するのが標準的な運用です。
- 受入れ予定の業務内容が産業分野(17分野)の対象業務に該当するかを確認する。分野別運用方針で認められた業務区分に限り雇用契約が有効となる。
- 比較対象となる日本人労働者を特定し、報酬水準(基本給・固定手当・賞与)を整理する。賃金規程がある場合は規程の写しを用意する。
- 参考様式第1-5号「特定技能雇用契約書」と参考様式第1-6号「雇用条件書」を作成する。あわせて参考様式第1-4号「報酬に関する説明書」も作成する。
- 外国人本人が十分理解できる言語に翻訳した契約書・雇用条件書を作成し、本人と署名・押印して契約を締結する。事前ガイダンスでも内容を口頭説明する。
- 在留資格認定証明書交付申請または変更許可申請を行い、契約書・雇用条件書・説明書のコピーを添付して管轄入管へ提出する。
注意点・よくある失敗
記載必須項目の漏れ
雇用期間・就業場所・従事業務・労働時間・休日・報酬・割増賃金・待遇・一時帰国時の有給休暇付与・帰国旅費の負担・保証金徴収の禁止・退職事項・分野別基準など、特定技能制度固有の項目を網羅する必要があります。一般的な労働契約のひな型をそのまま流用すると要件を満たさないことが多いため、参考様式の利用が推奨されます。
業務内容の記述が抽象的すぎる
「製造業務全般」のような抽象的記述ではなく、産業分野の業務区分名(例:機械金属加工、塗装、溶接など)を明確に記載する必要があります。区分外業務に従事させると不法就労となるため、雇用契約上で従事業務を明確に限定することが重要です。
外国人本人が理解できる言語での説明不足
契約書・雇用条件書は、本人が十分理解できる言語に翻訳して交付する義務があります。日本語のみで署名させ、後にトラブルになるケースが頻発しているため、母国語版または英語版を必ず併用してください。
保証金・違約金条項の挿入
特定技能雇用契約に保証金徴収・違約金設定・自由意思に反する身柄拘束を内容とする条項を入れることは明確な禁止事項です。技能実習生時代の慣習で同様の条項を流用すると違反となるため、契約書のレビュー時に必ず確認してください。
類似書類との違い
特定技能雇用契約は、雇用条件書・支援計画書・支援委託契約と密接に関連しますが、それぞれ役割と当事者が異なります。
| 書類名 | 当事者 | 主目的 |
|---|---|---|
| 特定技能雇用契約書(第1-5号) | 受入れ機関 ⇔ 特定技能外国人 | 雇用関係の成立・基本条件の合意 |
| 雇用条件書(第1-6号) | 受入れ機関 ⇔ 特定技能外国人 | 労働条件の詳細明示(労基法上の通知) |
| 1号特定技能外国人支援計画書(第1-17号) | 受入れ機関が単独作成 | 義務的支援10項目の実施計画 |
| 支援委託契約書(第5-10号) | 受入れ機関 ⇔ 登録支援機関 | 支援業務の外部委託の取り決め |
雇用契約書と雇用条件書は実務上ほぼセットで取り扱われ、契約書で雇用関係の成立を、条件書で労基法第15条に基づく労働条件の詳細を示す役割分担となっています。
新規受入れではこの4種類の書類が一式で揃うことが必要です。
よくある質問
Q. 一般的な労働契約書のひな型を流用しても問題ないですか?
A. 推奨されません。特定技能制度固有の必須項目(一時帰国時の有給休暇・帰国旅費負担・保証金禁止・分野別基準など)が漏れるリスクが高く、申請不許可の原因となります。
出入国在留管理庁が公開する参考様式第1-5号・第1-6号をベースに使用するのが最も安全な運用です。自社書式を使う場合は、参考様式の必須項目をすべて網羅したうえで、行政書士等の専門家にレビュー依頼することが推奨されます。
Q. 雇用期間は何年まで設定できますか?
A. 法令上の上限はありませんが、特定技能1号の在留期限が通算5年であるため、実務上は5年以内の有期契約とするケースが多いです。
1年・3年・5年の期間設定が一般的で、在留期間(1年・6か月・4か月のいずれかで付与)と整合させて契約期間を更新する運用となります。特定技能2号への移行を見据える場合は無期契約とする企業もあります。
Q. 試用期間は設定できますか?
A. 設定可能ですが、日本人と同等の運用ルールである必要があります。試用期間中の賃金減額や解雇要件の運用が日本人と異なる場合は差別的取扱いとなり、報酬同等要件違反のリスクがあります。
試用期間を設ける場合は、社内の試用期間運用ルールが日本人にも一律に適用されていることを賃金規程・就業規則で明示し、在留資格申請時に説明できる体制を整えてください。
Q. 派遣で特定技能外国人を雇用することはできますか?
A. 原則として直接雇用が必要ですが、農業・漁業の2分野に限り派遣形態での雇用が認められています。
派遣形態の場合は、派遣元事業者と派遣労働者の間で特定技能雇用契約を締結し、派遣先と派遣元の間で派遣契約を別途締結する建付けとなります。派遣先での就労状況も派遣元による定期届出の対象となるため、派遣元・派遣先の連携体制が重要です。