漁業分野の派遣雇用特例とは?
漁業分野の派遣雇用特例とは、特定技能制度において原則として直接雇用が必須とされる中、漁業分野では例外的に派遣形態での雇用が認められている制度です。
農業分野とともに、特定技能17分野中わずか2分野のみに認められた特例措置です。
漁業の季節変動の大きさと離島・遠隔地での労働需要に対応するため、受入機関が地域・漁種を移動しながら年間就労を実現する仕組みとして導入されました。
派遣元事業者は水産業との関連性が必須要件で、一般の派遣会社が漁業特定技能を派遣することはできません。派遣先となる漁業事業者・養殖事業者は派遣元と派遣契約を締結し、漁期に応じた人材確保を行います。
派遣元・派遣先の双方が漁業特定技能協議会への加入が必須です。
具体的な意味・内容
派遣雇用が認められる理由
漁業は漁期・水揚げ時期に労働需要が集中する季節変動の大きい産業です。特に沿岸漁業・定置網漁業など季節性が強い漁業では、年間を通じた直接雇用が困難なケースが多くなっています。
派遣形態を認めることで、地域内で派遣先を移動して一人の労働者が年間を通じてフルタイム就労できる仕組みが必要との趣旨で導入されました。
派遣元事業者の要件
労働者派遣事業の許可(厚生労働大臣許可)に加え、水産業との関連性が必要です。①水産業を行う事業者、②水産業関連事業者の出資・関与する事業者、③水産業協同組合(漁協・漁連等)が出資する事業者などが該当します。一般の派遣会社が直接派遣元になることはできません。
派遣先事業者の要件
労働・社会保険・租税法令の遵守、過去1年以内の非自発的離職を発生させていないこと、過去1年以内の行方不明者を発生させていないこと、欠格事由(暴力団関係・刑罰法令違反等)に該当しないこと、漁業特定技能協議会への協力義務などが要件です。
協議会加入の必須化
派遣元・派遣先双方が漁業特定技能協議会への加入が必須です。在留資格認定証明書交付申請の前段階で加入完了していることが求められます。
関連する制度・運用
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所管省庁 | 農林水産省(水産庁)、出入国在留管理庁 |
| 適用分野 | 漁業分野(農業分野とともに特例) |
| 派遣元義務 | 労働者派遣事業許可、水産業関連性、義務的支援10項目の実施、定期届出 |
| 派遣先義務 | 就労環境提供、業務指示、安全衛生管理、協議会加入 |
| 協議会加入 | 派遣元・派遣先双方が必須 |
| 典型的な活用 | 季節漁業(定置網・サンマ漁等)、地域横断派遣、繁忙期労働確保 |
| 2027年以降 | 育成就労制度施行後も派遣特例の枠組みは継承される予定 |
実務上の注意点
水産業関連性の証明
派遣元事業者は水産業との実体的関係を証明する必要があります。漁業協同組合(漁協)の関連事業会社、水産事業者の出資する派遣会社、水産業協同組合連合会(漁連)の関連組織などが代表的なケースです。
複数派遣先のスケジューリング
派遣形態の場合、漁期に応じて派遣先を切り替える運用が想定されます。派遣元はスケジューリング・移動・住居確保を担う必要があり、季節を超えた継続雇用の労務管理が課題となります。
義務的支援10項目の派遣元実施
義務的支援10項目(事前ガイダンス・住居確保・生活オリエンテーション等)は派遣元の責任で実施されます。派遣先での就労環境とは別に、派遣元による継続的な生活・支援対応が必要です。
海上作業の安全衛生
漁船での作業は労災リスクが高いため、派遣元・派遣先の両方が安全衛生管理に共同責任を負います。派遣先における安全衛生体制の事前確認が派遣元の重要な義務です。
関連用語との違い
| 項目 | 漁業派遣特例 | 農業派遣特例 | その他分野(直接雇用必須) |
|---|---|---|---|
| 派遣形態 | 可能(特例) | 可能(特例) | 不可 |
| 派遣元の関連性要件 | 水産業関連性 | 農業関連性 | 該当なし |
| 背景 | 漁期の季節変動 | 農繁期・農閑期の差 | 通年の労働需要 |
よくある質問
Q. 派遣形態は他分野でも認められますか?
A. 認められません。漁業分野と農業分野の2分野のみの例外措置です。両分野とも季節変動の大きい産業であることが特例の根拠です。
Q. 一般の派遣会社が派遣元になれますか?
A. なれません。水産業との関連性が必要で、漁業協同組合・水産事業者の出資する派遣会社などに限定されます。
Q. 派遣先での業務範囲は?
A. 特定技能漁業の業務区分(漁業・養殖業)に該当する範囲に限定されます。漁業区分合格者を養殖業務に従事させるなどの区分横断派遣はできません。
Q. 漁船での業務も派遣で従事できますか?
A. 漁業区分試験合格者であれば、派遣形態でも漁船作業に従事できます。安全衛生・操業ルールへの適応が重要で、派遣元・派遣先の連携体制が求められます。
Q. 義務的支援10項目は誰が実施しますか?
A. 派遣元の責任で実施されます。事前ガイダンス・住居確保・生活オリエンテーション・相談対応・定期面談などすべて派遣元が担当します。
参考資料
- [1] 水産庁「在留資格『特定技能』による新たな外国人材の受入れ」
- [2] 大日本水産会「漁業技能測定試験」
- [3] 水産庁「漁業特定技能協議会」
- [4] 出入国在留管理庁「特定技能制度」