用語集 特定技能関連

漁業分野(特定技能)ぎょぎょうぶんや

漁業分野(特定技能)とは?

漁業分野(特定技能)とは、在留資格「特定技能」の対象となる19分野の一つで、日本の漁業・養殖業における人材不足に対応するための分野です。

所管省庁は水産庁(農林水産省)で、2019年の制度創設時から対象分野として運用されています。業務区分は「漁業」と「養殖業」の2区分で、特定技能1号・2号の両方が設定されています。

農業分野と並び、派遣雇用が認められる例外的な分野です。

漁期や海象条件による業務の繁閑に対応するため、19分野中2分野のみに認められた特例措置です。受入見込数は令和6年から5年間で17,000人と設定され、日本の沿岸漁業・遠洋漁業・養殖業を支える重要な制度として機能しています。

制度の背景

漁業分野の特定技能は、日本の漁業従事者の高齢化と後継者不足への対応として設けられました。日本の漁業就業者数は減少を続けており、特に若年層の参入が限られる状況下で、外国人材の活用が業界維持の鍵となっています。

運用は漁業特定技能協議会(水産庁・大日本水産会・全国漁業協同組合連合会・全日本海員組合・全国海水養魚協会等で構成)が中心となります。試験実施機関は大日本水産会で、業界団体主導による試験運営により漁業の実務水準を維持しています。

海上労働の特殊性に配慮した制度設計が特徴で、協議会加入を受入前に完了させることが必須となりました。

主な種類と要件

漁業分野での特定技能活用には、業務区分・取得要件・受入機関要件の3つを理解することが重要です。海上業務の安全管理が他分野にはない特徴です。

① 業務区分(2区分)

漁業漁具の製作・補修、漁ろう機器の操作、水産動植物の探索・漁獲、漁獲物の処理・保蔵、漁業生産物の管理
養殖業養殖資材の製作・補修・管理、養殖水産動植物の育成管理・収獲(穫)・処理、養殖生産物の管理
付随業務船体の清掃・整備、安全確保のための業務、船員業務(漁業区分のみ)

漁業区分は沿岸漁業・沖合漁業・遠洋漁業すべてが対象で、定置網・刺網・トロール・延縄・釣りなど多様な漁法に対応します。養殖業区分は魚類・貝類・海藻類の養殖が対象です。

漁業ではさらに船員業務(航海・運航補助)も含まれる点が特徴的です。

② 取得要件(外国人本人)

特定技能1号漁業技能測定試験(漁業または養殖業)+日本語試験(JLPT N4以上またはJFT-Basic)
特定技能2号2号漁業技能測定試験(漁業または養殖業)+JLPT N3以上+複数の従業員の指導経験
試験免除(1号)漁船漁業・養殖業職種の技能実習2号良好修了者は試験免除
試験実施機関大日本水産会

2号試験ではJLPT N3以上の高い日本語能力が求められます。2号取得者が現場の指導的役割を担うため、日本人作業員との緊密なコミュニケーションが必要となるためです。

試験はCBT方式またはペーパー方式で、学科試験と実技試験の両方が課されます。

③ 受入機関(企業)の要件

事業者要件漁業・養殖業を営む事業者(個人・法人)
派遣雇用可農業と並び派遣雇用が認められる例外分野(19分野中2分野のみ)
協議会加入漁業特定技能協議会の構成員になること(受入前必須)
船員労働法令船員法・船員職業安定法・最低賃金法等の遵守
報酬日本人と同等額以上の報酬

漁業分野の受入機関は、個人漁業者から大規模な漁業法人まで幅広く認められます。派遣雇用が可能なため、季節的な操業に応じた柔軟な人材配置が可能です。

船員として勤務する場合は船員法が適用され、陸上業務とは異なる労働条件管理が必要となります。

立場別の実務ポイント

漁業分野の特定技能活用には、漁業者・外国人本人・派遣事業者それぞれで押さえるべき実務ポイントがあります。

受入企業(漁業・養殖業者)

海上労働の安全管理

漁業では海上での重労働・気象リスク・転落事故などの危険があり、外国人材の安全確保が最重要課題です。安全教育・救命具の使用方法・緊急時の対応手順を母国語または平易な日本語で徹底教育する必要があります。労災保険・船員保険の適切な加入も不可欠です。

派遣活用による柔軟な雇用

漁期に応じた季節雇用が中心となる小規模漁業者は、派遣雇用を活用することで通年雇用の負担なく人材確保が可能です。派遣会社が複数の漁業者で人材をシェアすることで、年間を通した安定就労と漁業者の労働力確保を両立できます。

外国人本人

漁法・養殖技術の習得

日本の漁業・養殖は世界的にも高い技術水準を持ち、定置網・養殖・冷蔵保蔵などの技術は習得価値が高いものです。長期的に1号・2号と進むことで、母国に持ち帰れる高度な水産技術を獲得できます。

2号取得を見据えた日本語学習

2号取得にはJLPT N3以上が必須となるため、来日後も継続的な日本語学習が重要です。1号としての就労中に語学力を高めることで、家族帯同・無期限就労の道が開けます。

類似制度との比較

漁業分野には特定技能以外にも複数の外国人受入制度があります。それぞれの違いを整理することが重要です。

比較項目特定技能1号(漁業)特定技能2号(漁業)技能実習(漁業関係)
在留期間通算5年無期限最長5年
家族帯同不可不可
派遣雇用(特例)(特例)不可
日本語要件N4以上N3以上業務配慮レベル
業務範囲漁業・養殖業の2区分2区分+指導業務個別職種

漁業分野は2号で日本語N3以上を要求する点が他分野との大きな違いです。海上での緊急対応や安全確保のため、より高い日本語能力が必要とされます。

よくある質問

Q. 派遣で雇用するメリットは何ですか?

A. 漁業の季節性・操業日数の変動に柔軟に対応できる点が最大のメリットです。漁期のみの集中雇用や、複数漁業者で人材をシェアする運用が可能となります。雇用管理ノウハウのない個人漁業者でも、派遣会社のサポートを受けながら受入が可能です。

派遣事業者は労務管理・支援体制を一元的に担うため、個別の漁業者の管理負担が軽減されます。漁業現場では実際の指導に集中でき、人材確保と業務効率化を両立できます。

Q. 漁船の船員として乗船することは可能ですか?

A. 漁業区分の業務として船員としての乗船が認められています。沿岸漁業から遠洋漁業まで、漁船での操業に従事できます。ただし、船員として勤務する場合は船員法が適用され、陸上業務とは異なる労働条件・社会保険の扱いとなります。

遠洋漁業など長期航海を伴う場合は、特殊な労務管理体制と船員保険・労災適用などの整備が必要です。船舶免許等の追加要件は通常不要ですが、船員としての基礎研修は必須となります。

Q. 養殖業区分の対象範囲はどこまでですか?

A. 養殖業区分は魚類・貝類・海藻類などすべての水産動植物の養殖が対象です。マグロ養殖・ブリ養殖・カキ養殖・ノリ養殖など、海面・陸上の養殖事業のいずれも含まれます。

養殖資材の製作・補修・管理から、養殖物の育成・収穫・処理まで、養殖業務全般に従事できます。陸上養殖(閉鎖循環式養殖等)も対象で、近年成長している先端養殖技術にも外国人材を活用できます。

Q. 2号でN3が必要なのはなぜですか?

A. 2号では現場の指導的立場として複数の作業員を指揮することが想定されており、より高度な日本語能力が必要となります。海上での緊急時対応・安全指示の伝達・気象情報の共有など、即時かつ正確なコミュニケーションが命を守ります。

他の特定技能2号では日本語試験が不要な分野もありますが、漁業の労働環境の特殊性から特別にN3以上が要求されています。受入企業としても、外国人材のN3取得を支援することが2号への道を開く重要な投資となります。

参考資料

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