自社支援とは?
自社支援とは、特定技能1号外国人に対する義務的支援10項目を、登録支援機関へ委託せず受入れ機関(特定技能所属機関)が自社で直接実施する運用形態を指します。
「直接支援」「内製支援」とも呼ばれ、登録支援機関への委託費用(一人あたり月2〜3万円が相場)を削減できる一方、入管法施行規則で定められた厳格な体制要件を満たす必要があります。
2025年末時点の統計では、依然として受入れ企業の約8割が外部委託を選択していますが、2027年の「育成就労制度」開始を見据え、外国人材を自社の「基幹人材」として育成するために自社支援へ切り替える企業が着実に増加しています。
主な業務・役割
自社支援を選択する場合、受入れ機関は義務的支援10項目すべてを自社の責任で実施します。以下が主要な業務です。
事前ガイダンスの実施
雇用契約締結後、在留資格認定証明書交付申請前までに、労働条件・活動内容・入国手続・保証金徴収の禁止などについて、本人が十分理解できる言語で3時間以上の説明を行います。対面・テレビ電話のいずれも可能ですが、書面交付のみは不可です。
出入国時の送迎
入国時は空港等から事業所または住居まで送迎し、帰国時は空港の保安検査場まで同行して送迎します。空港から自宅・職場までの移動を確実に支援することで、入国直後のトラブル防止と帰国時の確実な出国を担保します。
住居の確保・生活契約支援
賃貸物件の連帯保証人の引受けまたは社宅提供、銀行口座開設、携帯電話契約、ライフライン契約などの支援を行います。連帯保証人になれない場合は家賃債務保証会社の利用料を支援する形で代替可能です。
生活オリエンテーションの実施
入国後遅滞なく、日本での生活ルール(ゴミ出し・交通法規・税金・社会保険・医療機関の利用方法など)について8時間以上の説明を行います。災害時の対応や緊急連絡先の周知も必須項目です。
公的手続きへの同行・相談対応・面談など
住民登録・年金・保険・税務などの公的手続きへの同行、日本語学習機会の提供、相談・苦情への対応(本人が十分理解できる言語で対応すること)、日本人との交流促進、転職支援(受入れ機関都合の解雇時)、3か月に1回以上の定期面談と入管・労基への通報など、外国人本人の生活と権利を守る支援を継続的に実施します。
関与する場面・登録要件
自社支援を行うためには、受入れ機関側に支援体制と人的要件が整っていることが法令上求められます。要件を満たさないまま自社支援を行うと特定技能外国人の在留資格が許可されないため、事前確認が不可欠です。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 中長期在留者の雇用・管理実績 | 過去2年以内に中長期在留者(就労資格を持つ外国人)の受入れ・雇用実績があること |
| 支援責任者・支援担当者の選任 | 過去2年以内に中長期在留者の生活相談業務を行った経験を有する者を選任。特定技能外国人を直接監督する立場にない部署所属が条件 |
| 外国語対応体制 | 本人が十分理解できる言語で支援を提供できる人員配置。社内通訳・委託通訳のいずれでも可 |
| 支援記録の作成・保管体制 | 支援実施記録を作成・保管する仕組み。記録は雇用契約終了から1年以上保存が必要 |
| 支援体制基準への適合 | 10項目すべてを継続的に履行できる体制(人員・予算・運用フロー)が整備されていること |
支援責任者と支援担当者は別人を選任することも、兼任することも可能です。ただし、特定技能外国人を業務上指揮監督する立場の者は支援担当者になれないため、人事・総務部門など独立性のある部署からの選任が一般的です。
自社支援のメリット・選び方
委託費用の削減
登録支援機関への委託費用は一人あたり月額2〜3万円が相場で、年間では一人あたり24〜36万円のコスト負担となります。受入人数が多くなるほど委託費は累積するため、10名以上を雇用する企業では自社支援への切替によるコストメリットが大きくなります。
支援品質の自社コントロール
自社で支援を行うことで、外国人本人の状況をリアルタイムで把握でき、業務上の課題と生活上の課題を一体的に解決できます。登録支援機関を介する場合に比べて情報伝達の遅延がなく、定着率向上や離職防止につなげやすい点が利点です。
外国人材活用ノウハウの社内蓄積
支援業務を通じて外国人材のマネジメント・コミュニケーション・労務管理のノウハウが社内に蓄積され、将来的な事業拡大や他在留資格(技術・人文知識・国際業務など)の活用にも応用できます。グローバル人材戦略を推進する企業に適した形態です。
向いている企業・向かない企業
過去に外国人雇用経験があり多言語対応人材を抱える中堅以上の企業、製造業・建設業など複数拠点を持ち拠点ごとに支援担当者を配置できる企業に適しています。一方、外国人雇用が初めての企業、人事部門の人員が限られる企業、複雑な公的手続のサポートに不安がある企業は登録支援機関への委託が現実的です。
登録支援機関への委託との違い
自社支援と登録支援機関への委託では、コスト・支援品質・社内負担などが大きく異なります。自社の体制と外国人受入れ規模に応じた選択が求められます。
| 項目 | 自社支援 | 登録支援機関への委託 |
|---|---|---|
| コスト | 支援担当者の人件費・通訳費等の社内コスト | 一人あたり月2〜3万円の委託費 |
| 支援体制要件 | 受入れ機関自身が要件を満たす必要 | 登録支援機関の体制をもって基準充足とみなす |
| 支援品質の管理 | 自社で完全コントロール可能 | 委託先のノウハウに依存 |
| 定期届出の責任 | 受入れ機関が一括提出(2025年4月以降) | 受入れ機関が一括提出(2025年4月以降) |
| 導入難易度 | 体制整備に時間とコストを要する | 契約締結のみで開始可能 |
2025年4月の制度改正により、定期届出は登録支援機関への委託有無にかかわらず受入れ機関が一括して提出する建付けとなりました。委託していても受入れ機関の届出責任は残るため、自社支援の負担との比較では届出業務の差は実務上限定的です。
よくある質問
Q. 登録支援機関に委託中ですが、自社支援に切り替えることは可能ですか?
A. 可能です。自社で支援体制要件を満たしたうえで、支援委託契約を解約し、支援計画変更の随時届出を行うことで切替できます。
切替時には、参考様式第3-2号(支援計画変更)と参考様式第3-3号(支援委託契約変更)を切替日から14日以内に提出する必要があります。逆に自社支援から登録支援機関への委託へ戻すことも同じ要領で可能です。
Q. 過去2年以内の中長期在留者雇用実績がない場合、自社支援はできませんか?
A. 原則として自社支援は認められませんが、代替要件として支援責任者・支援担当者の生活相談業務経験で代替できる場合があります。
具体的には、過去5年以内に2年以上、就労資格をもって在留する外国人の生活相談業務に従事した経験を有する者を選任することで、雇用実績要件の代替が可能です。判断は管轄入管が行うため、事前相談を強く推奨します。
Q. 義務的支援10項目の一部だけを登録支援機関に委託することはできますか?
A. 可能です。これを「一部委託」と呼び、自社の弱い領域だけを補完的に登録支援機関に依頼する運用形態です。
ただし一部委託の場合は、自社で実施する項目について受入れ機関自身が支援体制要件を満たしている必要があります。一部委託でも委託先機関が「みなし要件充足」の対象となるのは全部委託の場合のみであるため、要件を満たせない項目だけを切り出して委託する設計は実務上難しい面があります。
Q. 自社支援を行ううえで、社内通訳の常勤雇用は必須ですか?
A. 必須ではありません。本人が十分理解できる言語での支援が提供できれば、外部通訳サービスや派遣通訳の活用も認められます。
事前ガイダンス・生活オリエンテーション・定期面談・相談対応など、本人が深く理解する必要がある場面では通訳介在が原則必要です。日常的な業務指示は日本語で行い、重要な場面のみ通訳を活用するハイブリッド運用が一般的です。