外食業分野(特定技能)とは?
外食業分野(特定技能)とは、在留資格「特定技能」の対象となる19分野の一つで、日本の外食業(レストラン・居酒屋・カフェ・ファストフード等)における人材不足に対応するための分野です。
所管省庁は農林水産省で、2019年の制度創設時から対象分野として運用されています。インバウンド観光の回復とともに、外食産業の中核人材として活発に活用されている分野です。
業務内容は飲食物調理・接客・店舗管理などの外食業全般で、特定技能1号・2号の両方が設定されています。2号は2023年8月から開始されており、指導的立場での長期就労が可能となっています。
試験実施機関はOTAFF(一般社団法人外国人食品産業技能評価機構)で、飲食料品製造業分野と共通の運営体制となっています。
制度の背景
外食業分野の特定技能は、日本の外食産業の慢性的な人材不足への対応として設けられました。外食業はアルバイト・パートを中心とした労働集約型産業で、若年層の確保が困難な状況が続いていることが背景にあります。
運用は食品産業特定技能協議会が中心となり、飲食料品製造業分野と一体的に管理されています。風俗営業等規制法に基づく規制対象店舗(キャバクラ・スナック等)では受入が認められない点が特徴で、健全な外食業の振興という制度設計が反映されています。
2026年度からは試験がCBT方式に移行する予定で、利便性の向上が進められます。
主な種類と要件
外食業分野での特定技能活用には、業務内容・取得要件・受入機関要件の3つを理解することが重要です。風俗営業関連店舗が対象外となる点が他分野と異なる特徴です。
① 従事できる業務
| 飲食物調理 | 食材の仕込み・調理・盛り付け・配膳準備など、厨房全般の業務 |
|---|---|
| 接客 | 注文取り・配膳・会計・テーブル整備、顧客対応全般 |
| 店舗管理 | 仕入れ・在庫管理・スタッフ指導・衛生管理・売上管理 |
| 付随業務 | 店舗で使用する原材料の生産、調理品以外の物品販売(テイクアウト商品等) |
| 対象施設 | レストラン・居酒屋・カフェ・ファストフード・社員食堂・給食施設等 |
| 対象外 | 風俗営業等規制法の対象施設(キャバクラ・スナック・ホストクラブ等) |
外食業のすべての業務を横断的に担当でき、特定の業務(調理のみ・接客のみ)に限定する必要はありません。外食業の中で柔軟な配置が可能な点が魅力です。
風俗営業関連店舗は深夜営業の有無に関わらず原則として対象外で、健全な外食業に限定されています。
② 取得要件(外国人本人)
| 特定技能1号 | 外食業特定技能1号技能測定試験+日本語試験(JLPT N4以上またはJFT-Basic) |
|---|---|
| 特定技能2号 | 外食業特定技能2号技能測定試験+複数の従業員を指導しながらの実務経験2年以上(2023年8月開始) |
| 試験免除(1号) | 外食業関係職種の技能実習2号良好修了者は試験免除 |
| 試験実施機関 | OTAFF(一般社団法人外国人食品産業技能評価機構) |
1号試験は学科30問(衛生管理・飲食物調理・接客全般 各10問)+実技試験で構成されます。
2026年度からCBT方式に移行する予定で、受験機会の拡大が見込まれます。海外でも実施されており、現地での採用活動が活発な分野です。
③ 受入機関(企業)の要件
| 業種要件 | 外食業を営む事業者(レストラン・居酒屋・カフェ等) |
|---|---|
| 対象外施設 | 風俗営業等規制法の対象施設では一切の業務(接客・調理含む)で受入不可 |
| 協議会加入 | 食品産業特定技能協議会への加入が必須(受入前必要) |
| 雇用形態 | 直接雇用のみ(派遣不可) |
| 報酬 | 日本人と同等額以上の報酬 |
協議会加入は受入前に完了させる必要があり、承認には通常2〜3ヶ月を要するため、採用計画と並行して早期に手続きを進めることが重要です。
風俗営業対象店舗(深夜営業の居酒屋・キャバクラ等)は厨房業務でも受入不可となるため、自社の営業形態を確認することが必要です。
立場別の実務ポイント
外食業分野の特定技能活用には、外食事業者・外国人本人それぞれで押さえるべき実務ポイントがあります。
受入企業(外食事業者)
風俗営業該当性の確認
自社の店舗が風俗営業等規制法の対象に該当するか必ず確認します。深夜の酒類提供を主とする居酒屋・スナック等は対象となる場合があります。営業許可の種別(飲食店営業・深夜酒類提供飲食店等)を行政書士や警察署生活安全課に確認することが推奨されます。
多言語接客の活用
インバウンド観光客が多い飲食店では、外国人材の母国語+日本語+英語の多言語対応が大きな価値となります。アジア系観光客の増加により、中国語・韓国語・ベトナム語等の対応ができる人材は店舗の差別化要素となります。採用段階から言語能力を確認し、戦略的な配置を行うことが効果的です。
外国人本人
日本の食文化・接客作法の習得
日本の外食業は「お客様第一」の接客文化と独自の食文化が特徴です。挨拶の仕方・敬語の使用・配膳の作法など、日本特有のサービス文化への理解が業務の質を左右します。試験対策段階から接客マナーを学ぶことで、採用後すぐに活躍できます。
2号取得による店長候補へのキャリア
2号取得には複数従業員の指導経験2年以上が必要です。1号として就労中に副店長・店長候補としての経験を積むことで、2号取得が可能となり家族帯同・無期限就労が実現します。外食業界の店長・エリアマネージャーを目指す長期キャリアパスが描けます。
類似制度との比較
外食業界には特定技能以外にも複数の外国人受入制度があります。それぞれの違いを整理することが重要です。
| 比較項目 | 特定技能1号(外食) | 特定技能2号(外食) | 技能ビザ(外国料理調理師) |
|---|---|---|---|
| 在留期間 | 通算5年 | 無期限 | 5年・3年・1年・3月 |
| 家族帯同 | 不可 | 可 | 可 |
| 業務範囲 | 外食業全般 | 外食業全般+指導 | 外国料理の調理(外国料理店のみ) |
| 要件 | 技能試験+N4 | 2号試験+指導2年 | 10年以上の実務経験 |
| 典型例 | ファストフード等の店員・調理 | 店長候補・指導者 | 本格中華・フレンチの専門料理人 |
外食業界では特定技能が一般飲食店の現場業務、技能ビザが本格的な外国料理専門店という棲み分けが一般的です。特定技能2号取得により家族帯同・無期限就労が可能となるため、長期定着を目指す外国人材にとっては魅力的なキャリアパスとなります。
よくある質問
Q. 居酒屋でも受入できますか?
A. 飲食店営業許可のみの通常の居酒屋は受入可能です。ただし、深夜酒類提供飲食店として営業し、風俗営業等規制法の対象となる店舗(接待を伴う居酒屋・スナック等)は受入できません。
営業許可の確認が重要で、深夜0時を超えて酒類を提供する場合は所轄警察署への届出が必要です。届出の有無によって受入可否が変わるケースもあるため、行政書士等への事前相談が推奨されます。
Q. 接客のみ・調理のみの業務でも採用できますか?
A. 可能です。外食業分野では調理・接客・店舗管理のいずれか、または複数を担当する形で就労できます。専属で接客のみ、または調理のみの業務に従事しても問題ありません。
店舗の業態に応じて柔軟に配置でき、ファストフードのレジ・接客専門、中華料理店の調理専門、レストランのホール業務などさまざまな配置が可能です。複数業務をローテーションで担当することも一般的です。
Q. 飲食料品製造業との違いは何ですか?
A. 外食業は店舗で調理してその場で提供する事業(レストラン等)が対象です。一方、飲食料品製造業は工場・施設で製造して販売する事業(弁当工場・食品メーカー等)が対象となります。
テイクアウト中心の店舗や弁当製造販売は判定が難しいケースもあります。イートインがある飲食店は外食業、製造販売中心は飲食料品製造業が原則です。判断に迷う場合は協議会への確認が確実です。
Q. 2号取得後はどのようなキャリアになりますか?
A. 2号取得により無期限の在留・家族帯同が可能となり、外食業の店長・店舗管理者としてのキャリアが現実的になります。さらに長期在留により永住申請の道も開けます。
受入企業としては、優秀な1号取得者を計画的に副店長・店長候補に育成し、2号取得を支援することで、外国人材の中で幹部候補を育てることが可能です。インバウンド対応に強い多言語スタッフが店舗運営の中核を担うことで、店舗の競争力強化につながります。