用語集 雇用・労務関連

外国人向け医療機関がいこくじんむけいりょうきかん

外国人向け医療機関とは?

外国人向け医療機関とは、訪日外国人旅行者および在留外国人が言語・文化・宗教の違いを越えて安心して医療サービスを受けられるよう、多言語対応・医療通訳・院内案内の翻訳・宗教文化への配慮などの体制を整えた医療機関の総称です。

代表的な枠組みとして、一般財団法人日本医療教育財団が運営するJMIP(外国人患者受入れ医療機関認証制度)、厚生労働省と観光庁が連携して公表する「外国人患者を受け入れる医療機関の情報リスト」、各都道府県が選定する「外国人患者を受け入れる拠点的な医療機関」などがあります。

在留外国人が増加するなか、外国人材を雇用する企業にとっても、社員やその家族が安心して受診できる医療機関情報の把握は、定着支援・労務管理の重要な要素となっています。

2027年4月施行予定の育成就労制度では、生活支援・医療アクセス支援の責任が受入企業や監理支援機関に明確に課される見通しであり、外国人向け医療機関の活用がいっそう重要になります。

制度の背景

日本における外国人医療体制整備は、訪日観光客の急増と在留外国人数の拡大を背景に、厚生労働省・観光庁・出入国在留管理庁が連携して進めています。

中核となる仕組みがJMIP(Japan Medical Service Accreditation for International Patients)であり、2012年に創設され、一般財団法人日本医療教育財団が運営しています。厚生労働省・観光庁・各都道府県は、訪日外国人旅行者および在留外国人の医療アクセスを確保するため、拠点的医療機関の整備・医療通訳の配置・情報リストの公表を継続的に進めています。

厚生労働省と観光庁が連携して作成する「外国人患者を受け入れる医療機関の情報を取りまとめたリスト」は、2025年12月25日に初版が公表され、その後2026年2月26日および2026年3月31日に更新されています。

掲載される医療機関は各都道府県が選定し、リストは日本政府観光局(JNTO)ウェブサイトを通じて日本語・英語・中国語(繁体字・簡体字)・韓国語の4カ国語で検索できる仕組みとなっています。

JMIP認証制度の主な内容

JMIPは、日本医療教育財団が日本国内の医療機関に対して、外国人患者の受入れに資する体制を第三者的・中立公平に評価する任意の認証制度です。書面調査と訪問調査の組み合わせで審査され、評価項目は98項目に及びます。

認証医療機関は財団のウェブサイトで公表され、訪日・在留外国人が安心して受診できる目印として機能します。

項目内容
運営機関一般財団法人 日本医療教育財団(JME)
制度開始2012年
対象日本国内の病院(任意申請)
評価項目数98項目(多面的な基準)
評価分野受入れ/患者サービス/医療提供の運営/組織体制と管理/改善に向けた取り組み
審査方法書面調査+訪問調査
認証の有効期間原則3年(更新審査あり)
認証医療機関数2026年3月時点で順次拡大中(直近3か月で計11医療機関が新規認証)

2025年11月27日に3医療機関、2026年2月9日と3月17日にそれぞれ4医療機関が新たに認証されるなど、認証取得・更新の動きは継続しています。認証取得は、外国人患者対応の体制整備を網羅的に進められる点、第三者評価による職員教育の促進、地域医療機関としての信頼性向上といった意義があります。

主な評価項目と対応内容

多言語対応・院内案内

院内の案内表示・案内文書・診療同意書などを、英語・中国語・韓国語などを中心に多言語化することが評価されます。重要書類(同意書・問診票・診療計画書)を翻訳した上で、職員がどのように説明するかという運用面まで含めて整備状況が評価されます。

医療通訳の確保と運用

院内通訳者の配置、医療通訳派遣機関との契約、ビデオ通訳・電話通訳サービスとの遠隔契約整備など、複数手段を組み合わせた通訳体制が求められます。翻訳アプリや会話集と医療通訳の役割分担をルール化し、誤訳によるリスクを抑える仕組みが評価対象となります。

宗教・文化への配慮

食事の宗教対応(ハラル食・ベジタリアン食・コーシャ食など)、礼拝スペースの確保、男女別対応や肌の露出を抑える配慮、輸血や臓器移植に関する宗教上の制約への対応など、文化・宗教に基づくニーズに個別に対応する体制が問われます。ハラル食は専門店のインスタント食品を活用する、家族による持ち込みを許容するなどの運用例があります。

医療費・保険対応のリスクマネジメント

訪日外国人による未収金リスクへの備え、海外旅行保険・国民健康保険・健康保険被保険者証の確認手順、自由診療価格の事前提示、クレジットカード決済対応など、財務・事務面のリスク管理体制が評価されます。

医療通訳と医療機関情報リストの活用

厚生労働省は「医療通訳者、外国人患者受入れ医療コーディネーター配置等支援事業」を実施しており、令和7年度(2025年度)も拠点的医療機関への医療通訳者・コーディネーター配置を支援しています。地域の拠点的医療機関は、対面通訳・電話通訳・ビデオ通訳の3形態を組み合わせた体制整備が標準的になりつつあります。

外部リソースとしては、特定非営利活動法人AMDA国際医療情報センターが代表的な存在です。AMDAは在留・訪日外国人と医療機関の双方を支援しており、2025年1月6日からは「アムダ通訳ライン」として電話による無料医療通訳サービスを開始しました。英語・中国語・韓国語・タイ語・スペイン語・タガログ語・ベトナム語・ポルトガル語の8言語に対応し、平日10:00〜15:00に利用できます。

支援機関・制度概要
JMIP認証医療機関日本医療教育財団による第三者認証を受けた医療機関。98項目で評価。
厚労省・観光庁リスト各都道府県が選定し、JNTOサイトで4カ国語検索可能(2025年12月初版/2026年3月更新)。
拠点的医療機関医療通訳・コーディネーター配置の補助対象。都道府県単位で公表。
AMDA国際医療情報センター8言語の無料電話医療通訳「アムダ通訳ライン」(2025年1月開始)。
都道府県の外国人医療相談窓口東京都保健医療局など、地域単位の外国人向け医療ポータルサイトが整備。

在留外国人と訪日外国人の医療ニーズの違い

外国人患者は大きく「在留外国人」と「訪日外国人」に分けられ、医療制度上の扱いとニーズに違いがあります。受入企業は、雇用する外国人材が「在留外国人」に分類されるため、健康保険加入と通常の自己負担割合(原則3割)に基づく医療アクセスを前提に対応します。

項目在留外国人訪日外国人(旅行者等)
滞在期間3か月超(中長期在留)主に短期滞在
公的医療保険健保・協会けんぽ・国民健康保険のいずれかに加入原則未加入(自由診療)
自己負担割合原則3割全額自己負担(海外旅行保険でカバーする場合あり)
主な医療ニーズ慢性疾患管理、健康診断、出産・小児医療、メンタルヘルス急病・けが、観光中のトラブル対応
言語ニーズ生活言語(多言語)・通訳の継続的活用短時間で完結する通訳・案内
未払い金の特性少額(1件5万円以下が約7割)1件あたり高額になりやすい

訪日外国人の医療費未払い問題に対しては、厚生労働省と出入国在留管理庁が連携して情報共有システムを運用しています。2026年度からは、報告対象の基準額が従来の20万円以上から1万円以上に引き下げられ、不払い履歴がある外国人の再入国審査が厳格化される見通しです。中長期在留者については2027年度以降、不払い情報を在留資格審査に連動させる仕組みの整備が進められています。

受入企業による活用のポイント

入社時の医療機関情報の提供

外国人材の入社時に、勤務地・寮の近隣のJMIP認証医療機関や拠点的医療機関をリスト化して案内します。厚生労働省・観光庁のリストやJNTOサイトを活用し、対応言語・診療科とあわせて伝えることが有効です。

健康保険被保険者証の提示と本人確認

受診時には健康保険被保険者証(またはマイナ保険証・資格確認書)と在留カードの提示が原則となります。2024年12月以降、健康保険証の新規発行は原則廃止され、マイナ保険証または資格確認書を用いる運用に移行しており、外国人材にも仕組みを丁寧に説明することが必要です。

医療通訳の事前手配

受診予定の医療機関が院内通訳を持たない場合、AMDA通訳ラインや自治体の医療通訳派遣事業、民間の遠隔通訳サービスを事前に確認し、利用方法を本人に周知します。重大な治療方針説明の場面では、企業側担当者の同席ではなく中立的な医療通訳を用いることが望まれます。

健康保険料の納付管理

外国人の健康保険料・国民健康保険料の滞納情報は、在留資格の更新審査に連動する方向で制度整備が進んでいます。受入企業は、給与天引きでの保険料納付状況を継続的に確認し、本人の在留資格更新リスクを未然に防止する体制が望まれます。

2025〜2026年の最新動向

外国人患者リストの定期更新化

厚生労働省と観光庁が連携する「外国人患者を受け入れる医療機関の情報リスト」は、毎年2回(5月・11月ごろ)に各都道府県経由で登録依頼を行い、定期的に更新する運用へ移行しています。2026年3月31日更新版が現時点の最新版です。

医療費不払い対策の強化

2025年11月26日に示された政府方針により、訪日外国人の医療費不払いに関する報告基準が1万円以上に引き下げられます。出入国管理上の再入国拒否との連動が強化される予定で、観光庁・厚労省・入管庁の連携が一段と強まる見通しです。

育成就労制度の施行に向けた医療アクセス支援

2027年4月1日施行予定の育成就労制度では、外国人本人の権利保護と生活支援が制度の柱に据えられており、医療アクセスの確保も生活支援の重要な要素です。受入企業・監理支援機関は、健康保険加入の徹底、医療機関情報の周知、医療通訳の手配体制を就労前から整備しておくことが求められます。

JMIP認証取得の継続的拡大

2025年11月以降も、地方病院を中心にJMIP認証取得・更新が続いており、地域の拠点的医療機関が外国人材の医療アクセス受け皿として機能を広げています。東京都など一部自治体は、独自のJMIP認証医療機関一覧を継続的に更新・公開しています。

類似制度との違い

項目JMIPJCI厚労省・観光庁リスト
運営主体日本医療教育財団(日本)米国JCI(国際組織)厚生労働省・観光庁(国)
主目的外国人患者受入れ体制の整備医療の質・安全の国際基準受入可能医療機関の情報公開
選定方法申請・第三者審査申請・国際審査各都道府県の選定
主な評価対象多言語対応・宗教文化配慮等98項目医療安全・組織管理対応言語・診療科の情報公表
取得形態任意(認証)任意(国際認証)申請・登録(認証ではない)

受入企業の実務では、JCIは医療ツーリズム重視の指標、JMIPは在留外国人を含めた受入体制の指標、厚労省・観光庁リストは「対応可能な医療機関を地域単位で探す入り口」と整理して使い分けると把握しやすくなります。

よくある質問

Q. JMIP認証医療機関は全国に何施設ありますか?

A. JMIPは2012年の制度開始以降、累計で70施設前後が認証を受けてきましたが、有効期間(原則3年)の更新を経て、現在も新規認証・更新が継続的に行われています。

2025年11月以降の3か月だけでも、計11医療機関が新たに認証されており、認証医療機関数は緩やかに増加しています。

最新の認証医療機関一覧は、日本医療教育財団の公式サイト(jmip.jme.or.jp)の検索ページで確認するのが確実です。

Q. 外国人材を雇う場合、特定の医療機関を指定する必要がありますか?

A. 特定の医療機関を指定する法的義務はありません。健康保険加入者は通常の保険診療と同じく自由に医療機関を選択できます。

ただし実務上は、勤務地・寮の近隣にあるJMIP認証医療機関や厚労省・観光庁リスト掲載医療機関、対応言語のある医療機関をあらかじめ調べておくと、急病時の対応がスムーズになります。

育成就労制度の運用が始まる2027年4月以降は、生活支援の一環として医療アクセス情報を提供することが、受入企業・監理支援機関にとっての標準的な実務になると見込まれます。

Q. 医療通訳は誰が手配するのが原則ですか?

A. 治療方針の説明や手術同意など医学的に重要な場面では、医療機関側が中立な医療通訳を手配することが原則です。家族や同僚など利害関係者は誤訳・心理的負担のリスクがあり推奨されません。

院内通訳が常駐していない医療機関では、AMDA国際医療情報センターの「アムダ通訳ライン」(無料電話通訳、8言語対応)や、自治体・民間の遠隔医療通訳サービスを利用するケースが増えています。

受入企業は、自社が雇用する外国人材の受診時に備え、利用可能な医療通訳手段を事前に整理・周知しておくとよいでしょう。

Q. 健康保険被保険者証はマイナ保険証に切り替わったのですか?

A. 2024年12月2日以降、従来の紙の健康保険被保険者証の新規発行は原則廃止され、マイナンバーカードを健康保険証として利用する「マイナ保険証」に移行しています。

マイナンバーカードを保有していない、または保険証利用登録ができない場合は「資格確認書」が交付され、これを医療機関に提示することで保険診療を受けることができます。

外国人材の場合、在留カードと併用する形で本人確認・資格確認が行われるため、受入企業は入社時にマイナンバーカード取得と保険証利用登録の手続きを支援することが望まれます。

Q. ハラル食や礼拝への配慮はどの程度求められますか?

A. 入院期間中の食事や祈祷時間の確保について、宗教・文化的背景に基づく合理的な配慮が求められます。JMIP認証医療機関では、こうした宗教・文化への対応も評価項目に含まれています。

ハラル食については、専門店で購入したインスタント食品の提供や、家族による持ち込みを許容する運用、礼拝についてはミーティングルーム等の活用などの事例があります。

受入企業は、雇用する外国人材の宗教・食習慣を入社時にヒアリングし、入院や受診の際に医療機関へ事前共有できる体制を整えると、スムーズな受入につながります。

参考資料

用語集
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