用語集 雇用・労務関連

二重課税防止協定にじゅうかぜいぼうしきょうてい

二重課税防止協定とは?

二重課税防止協定(租税条約)とは、二国間で同一の所得に対して二重に課税されることを防止し、脱税・租税回避の防止と相互の経済交流の促進を目的とする国際条約です。

2025年4月1日現在、日本は157の国・地域との間で86の条約等を締結しています(租税条約・情報交換協定・税務行政執行共助条約・日台民間租税取決め等を含む)。

外国人労働者にとって特に重要なのは、短期滞在者免税(183日ルール)学生・研修生条項です。

短期滞在者免税は3要件(183日以下の滞在、報酬支払者が他方締約国居住者でない、報酬を恒久的施設が負担しない)を満たす場合に適用されます。学生・研修生条項は中国・ベトナム・フィリピン・インドネシア等の主要送出国ごとに内容が異なります。特定技能・育成就労外国人は研修生免税の対象外で給与は通常通り課税されます。

租税条約に関する届出書を支払日前日までに支払者経由で税務署に提出することで軽減・免除を受けられます。

制度の背景

租税条約は、二国間の合意に基づく国際条約で、所得税法・法人税法等の国内法に優先して適用されます。日本が締結する条約はOECDモデル租税条約をベースとしつつ、各国との交渉により個別の規定を調整しています。

外国人労働者が日本で働く場合、出身国によって租税条約の内容が異なるため、本人の状況に応じた個別確認が必要です。特に学生・研修生条項は国別の差が大きく、技能実習生・特定技能外国人の取扱いも国によって異なります。

主な内容と要件

① 短期滞在者免税(183日ルール)

項目内容
要件1課税年度(または継続する12か月)の滞在日数が183日以下
要件2報酬の支払者が他方締約国の居住者でない雇用者
要件3報酬を他方締約国の恒久的施設(PE)が負担しない
適用結果日本での所得税課税が免除
留意点183日の起算方法(暦年/12か月)は条約により異なる

短期滞在者免税は出張・短期赴任での来日者に適用される制度です。3要件を全て満たす必要があり、いずれか1つでも該当しなければ通常通り課税されます。

② 学生・研修生条項(送出国別)

免税内容
中国国内源泉所得も上限なく免税(学資・生計費の範囲で)/技能実習生も対象
ベトナム国外払いに限定して免税/日本払い給与は課税(実習生・特定技能はほぼ免税対象外)
フィリピン年間1,500米ドル以下が免税(3年間限定、所得税のみ)
インドネシア年間60万円以下が免税(5年間限定)
タイ一定要件で免税

学生・研修生条項は国別に内容が大きく異なります。中国は最も広範な免税が認められる一方、ベトナム・フィリピンは限定的です。本人の出身国の条項を必ず確認することが重要です。

③ 特定技能・育成就労への適用

特定技能は「事業修習者」「事業習得者」に該当しないため、租税条約の研修生免税は原則として適用されません。給与は通常通り所得税・住民税が課税されます。育成就労(2027年4月施行予定)でも同様の扱いが想定されます。技能実習生は中国出身者を除き多くが免税対象外で、日本での課税が必要です。

立場別の実務ポイント

租税条約に関する届出書

租税条約による減免を受けるためには「租税条約に関する届出書」を支払日の前日までに支払者経由で支払者の納税地の所轄税務署長に提出する必要があります。様式1〜10(配当・利子・使用料・自由職業・短期滞在者・教授・学生など)から該当するものを選択します。学生・研修生の免税適用には「様式8(学生免税)」等を年初に提出する運用です。

受入機関の確認義務

受入機関は外国人労働者の出身国の租税条約を確認し、適用可能性のある減免措置を本人に案内することが推奨されます。届出書の提出が遅れると初回の支払いから減免が受けられないため、計画的な手続きが必要です。社労士・税理士等の専門家に相談することも有効です。

国別の注意点

中国出身の技能実習生は日中租税条約第21条で広範な免税が適用される一方、ベトナム・フィリピン出身の技能実習生は基本的に免税対象外です。受入機関は本人の出身国・在留資格に応じて適切な源泉徴収を行う必要があります。判断に迷う場合は税務署または税理士への確認が推奨されます。

類似制度との比較

項目租税条約社会保障協定外国為替及び外国貿易法
主目的所得税の二重課税防止年金保険料の二重負担防止国際取引の管理
所管財務省・国税庁厚生労働省・日本年金機構財務省・日本銀行
締結数(2025年)157の国・地域24か国(オーストリア発効後)
適用方法届出書提出適用証明書取得取引時の届出
外国人への影響給与課税の軽減・免除母国年金との通算国際送金への影響

租税条約は税金の二重課税防止、社会保障協定は年金保険料の二重負担防止と、それぞれ別の制度です。両方を活用することで外国人労働者の経済的負担を軽減できます。

よくある質問

Q. 特定技能外国人にも租税条約は適用されますか?

A. 短期滞在者免税は適用されませんが、租税条約の他の規定(配当・利子等の軽減税率等)は出身国に応じて適用される場合があります。

給与所得については原則通り課税されます。学生・研修生条項の対象外のため、研修生免税は適用されません。

Q. 中国の技能実習生は免税ですか?

A. はい、日中租税条約第21条により、生計・教育・訓練のための受給は上限なく免税となります。

「租税条約に関する届出書(様式8)」を年初に支払者経由で税務署に提出することで適用されます。中国は他国と比較して最も広範な免税が認められています。

Q. ベトナムの技能実習生も免税ですか?

A. ベトナムは国外払いに限定して免税のため、日本払い給与は通常通り課税されます。実質的に技能実習生・特定技能はほぼ免税対象外です。

受入機関は本人の出身国を確認し、適切な源泉徴収を行う必要があります。判断に迷う場合は税務署または税理士に確認することが推奨されます。

Q. 届出書はいつまでに提出しますか?

A. 給与等の最初の支払日の前日までに支払者経由で所轄税務署長に提出する必要があります。

提出が遅れると初回の支払いから減免が受けられません。学生・研修生の免税適用には年初の早い段階での提出が推奨されます。

参考資料

用語集
お問い合わせ 03-5772-7338平日(10:00~19:00)
LINE