用語集 雇用・労務関連

雇用維持支援策こよういじしえんさく

雇用維持支援策とは?

雇用維持支援策とは、景気変動・産業構造の変化・経営状況の悪化等により事業活動が縮小した企業に対し、政府が雇用維持を支援する公的助成金・支援制度の総称です。

代表的な制度として雇用調整助成金産業雇用安定助成金中小企業緊急雇用安定助成金等があり、休業手当の補填・教育訓練費用の助成・出向支援等を通じて企業の雇用維持を後押しします。

雇用保険被保険者であれば、外国人労働者にも適用されるため、特定技能・育成就労外国人を雇用する企業にとっても重要な支援策です。

令和8年(2026年)4月1日に雇用調整助成金の支給要領・申請様式・ガイドブックが改訂され、最新の運用体制が整備されています。整理解雇を回避するための解雇回避努力義務の中核手段としても位置づけられています。

制度の背景

雇用維持支援策の主要な根拠法令は雇用保険法で、雇用安定事業の一環として位置づけられています。雇用保険料収入を財源とする形で運用され、事業主の雇用調整努力に対する公的支援を提供します。

リーマンショック・東日本大震災・コロナ禍等の経済危機時には特例措置が拡充され、平時には通常制度として運用される構造です。

整理解雇の有効性判断における解雇回避努力義務を実質化するための公的支援としても重要な機能を担います。雇用維持支援策を活用せずに整理解雇を行うと、解雇権濫用として無効となるリスクが高まる構造的関係があります。

主な支援策と要件

① 雇用調整助成金

項目内容
対象休業・教育訓練・出向で雇用維持した事業主
中小企業の助成率2/3(令和8年4月1日改訂版)
大企業の助成率1/2
主な要件直近3か月の生産指標が前年同期比10%以上低下/雇用保険適用事業主
支給日数1年100日/3年150日
30日到達後の特例教育訓練実施率10%未満で助成率引下げ

最も主要な雇用維持支援策で、休業手当の一部を補填する仕組みです。教育訓練を併用すると助成率が高くなるため、休業期間中の人材育成への活用が推奨されます。

② 産業雇用安定助成金

コース内容
スキルアップ支援コース在籍型出向先でスキル習得・復帰時に賃金5%以上上昇した場合の出向元支援
産業連携人材確保等支援コース令和5年11月29日創設/中小1人最大250万円・大企業1人最大180万円(5人まで)
災害特例人材確保支援コース自然災害発生時の特例

在籍型出向支援・産業構造変化対応の人材確保支援等、雇用調整助成金を補完する制度です。出向元・出向先の双方が支援対象となり、企業間の人材活用を促進します。

③ その他の関連助成金

助成金主な内容
キャリアアップ助成金非正規雇用労働者の正社員化・処遇改善
業務改善助成金中小企業の生産性向上・賃金引上げ支援
人材開発支援助成金従業員のキャリア形成・人材育成

雇用維持に直接関連する助成金以外にも、賃金引上げ・人材育成・キャリア形成等を支援する複数の助成金が運用されています。外国人労働者の処遇改善・キャリア支援にも活用可能です。

立場別の実務ポイント

中小企業の活用

中小企業の助成率(雇用調整助成金2/3、産業雇用安定助成金で1人最大250万円等)は大企業より優遇されています。経営状況の悪化時に積極的に活用することで雇用維持コストを大幅に抑えることができます。申請手続きの詳細は管轄の都道府県労働局・ハローワークに事前相談することが推奨されます。

外国人材の雇用維持

特定技能外国人を雇用する企業は、解雇発生で「過去1年以内の非自発的離職」となり新規受入1年間禁止のペナルティを受けるリスクがあります。

雇用維持支援策の活用は、このペナルティを回避し人材確保を継続するための重要な手段です。育成就労制度(2027年4月施行)でも同様の重要性があります。

教育訓練の組み込み

休業期間中の教育訓練は雇用調整助成金の助成率を高めます。日本語学習・技能検定対策・OJT等を計画的に組み込むことで、企業の負担軽減と人材育成の両立が可能です。外国人労働者の能力向上にも有効です。

出向の活用

産業雇用安定助成金のスキルアップ支援コースは、在籍型出向先でのスキル習得を支援する制度です。グループ会社・取引先企業等への出向を通じた人材活用が可能です。出向元・出向先双方への助成があるため、相互にメリットのある運用ができます。

類似制度との比較

項目雇用調整助成金産業雇用安定助成金キャリアアップ助成金
主目的雇用維持(休業・教育訓練・出向)在籍型出向支援・人材確保非正規労働者の処遇改善
主な対象事業活動縮小事業主出向元・出向先・産業構造変化対応企業非正規労働者を雇用する事業主
中小企業助成率2/31人最大250万円(産業連携)正社員化等で大幅助成
外国人への適用雇用保険適用者は対象同左同左
申請窓口都道府県労働局・ハローワーク同左同左

各助成金は目的・対象が異なるため、企業の状況に応じて適切な制度を選択することが重要です。複数の助成金を併用することで、雇用維持と処遇改善を同時に進めることも可能です。

よくある質問

Q. 外国人材も雇用維持支援策の対象になりますか?

A. はい、雇用保険被保険者であれば日本人と同様に対象となります。特定技能・育成就労外国人も対象です。

雇用保険未加入の場合は対象外となるため、加入状況を確認することが重要です。育成就労外国人は雇用保険加入が必須要件となる見込みです。

Q. 申請はどこに行えばよいですか?

A. 管轄の都道府県労働局またはハローワークが申請窓口です。事前相談から開始することが推奨されます。

各助成金の様式は厚生労働省サイトからダウンロード可能です。社労士や産業雇用安定センター等の専門家に相談することも有効です。

Q. 過去にコロナ特例を利用した企業も通常制度を使えますか?

A. はい、コロナ特例(令和5年3月31日終了)を利用した企業も通常制度を活用できます。

支給日数は通常制度のルール(1年100日/3年150日)に基づき計算されます。過去の利用実績は新規申請には基本的に影響しませんが、不正受給歴がある場合は申請できません。

Q. 雇用維持支援策と整理解雇は両立できますか?

A. 整理解雇の有効性判断における「解雇回避努力義務」の中核として、雇用維持支援策の活用が前提となります。

支援策を活用せずに整理解雇を行うと、解雇権濫用として無効となるリスクが高まります。最終手段として整理解雇を行う前に、雇用維持支援策の最大限活用が必要です。

参考資料

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