労働条件通知書とは?
労働条件通知書とは、使用者が労働契約の締結に際して労働者に対して賃金・労働時間その他の労働条件を明示する書面です。
労使間で「合意」する雇用契約書とは異なり、使用者から労働者への一方的な「通知」と位置づけられ、書面交付が法的義務となっています。違反した場合は30万円以下の罰金に処せられます。
2024年(令和6年)4月1日施行の改正により、従来の絶対的明示事項6項目に加えて、就業場所・業務の変更の範囲、更新上限の有無と内容、無期転換申込機会、無期転換後の労働条件の4項目が追加で明示義務化されました。
外国人労働者向けには厚生労働省が13言語のモデル労働条件通知書(英語・中国語・韓国語・ポルトガル語・スペイン語・タガログ語・ベトナム語・インドネシア語・タイ語・ネパール語・クメール語・ミャンマー語・モンゴル語)を公表しています。
実務では「雇用契約書兼労働条件通知書」として一体化することで、通知義務と契約合意を同時に果たす運用が一般的です。
必要になる場面
労働契約の締結時
労働契約の締結時には、労働条件を明示する義務があります。新規採用・契約更新・転籍時等が対象で、書面交付が原則です。労働者が希望した場合に限りファクシミリ・電子メール・SNS等の電磁的方法での交付も可能となります(2019年4月の労基法施行規則改正)。
有期契約の更新時
有期労働契約の更新時にも改めて労働条件通知書を交付する必要があります。2024年4月施行の追加明示事項として、有期契約労働者対象の「更新上限の有無と内容」、無期転換申込権が発生する更新時の「無期転換申込機会」「無期転換後の労働条件」も明示が必要です。
特定技能・育成就労での要件
特定技能では「特定技能雇用契約書」「雇用条件書」を所定様式で作成し、入管庁への提出が必要です。日本人と同等以上の報酬・適切な労働条件を担保する追加要件があります。育成就労(2027年4月施行予定)でも同様の枠組みが踏襲されます。
申請・取得の手順
- 厚生労働省のモデル労働条件通知書(多言語版)を厚生労働省サイトからダウンロードする。
- 絶対的明示事項6項目(労働契約期間、契約更新基準、就業場所・業務、始業終業時刻等、賃金、退職)を記入する。
- 2024年4月施行の追加明示事項4項目(就業場所・業務変更範囲、更新上限、無期転換申込機会、無期転換後労働条件)を記入する。
- 相対的明示事項(退職手当、賞与、食費負担等)について定めをした場合は記入する。
- 労働者本人が理解できる言語版を併せて作成し、契約締結時に書面で交付する。
- 本人の理解度を口頭で確認し、写しを本人と事業主双方で保管する。
注意点・よくある失敗
2024年4月施行の追加明示事項漏れ
2024年4月施行で追加された4項目(就業場所・業務変更範囲、更新上限、無期転換申込機会、無期転換後労働条件)の記載漏れが頻出する指摘事項です。古いひな形を使い続けるとコンプライアンス違反となるため、最新版の厚生労働省モデル様式の活用が重要です。
電子交付の要件
電子交付には労働者の個別同意が必須で、労使協定だけでは不可です。出力して書面化できる方式に限られます。労働者が希望しない場合は書面交付が原則です。電子交付を選択する場合も、書面化可能なPDF等での提供が一般的な実務運用です。
外国人労働者への配慮
外国人雇用管理指針に基づき、本人理解できる言語での明示が求められます。日本語版のみの交付は理解不足によるトラブルの原因となるため、母国語版・「やさしい日本語版」の併用が推奨されます。特定技能・育成就労では母国語での交付・説明が省令義務となっています。
違反時の処分
労基法120条に基づく30万円以下の罰金に加え、特定技能・育成就労では受入機関の認定取消・新規受入停止のリスクがあります。労働者からの異議申立による契約条件の無効主張、未払賃金の請求等の民事的リスクも発生します。
類似書類との違い
| 項目 | 労働条件通知書 | 雇用契約書 | 就業規則 |
|---|---|---|---|
| 法的位置づけ | 労基法15条の通知義務 | 労使合意の契約書(民法・労契法) | 労基法89条の作成義務 |
| 性質 | 使用者からの一方的通知 | 双方の合意 | 事業場の労働条件・服務規律 |
| 作成義務 | 必須(書面交付) | 義務なし(推奨) | 常時10人以上で必須 |
| 記載事項 | 絶対的明示事項+相対的明示事項 | 合意事項全般 | 労働条件・服務規律 |
| 違反時罰則 | 30万円以下の罰金 | 労働者の異議・契約無効 | 30万円以下の罰金 |
| 多言語化 | 外国人雇用管理指針で推奨 | 同左 | 外国人理解促進義務 |
実務では「雇用契約書兼労働条件通知書」として一体化することで、通知義務と契約合意を同時に果たす運用が一般的です。労働者の合意を確実に得る観点からも、書面交付+本人の署名・捺印を取得する形式が推奨されます。
よくある質問
Q. 2024年4月の改正で何が変わりましたか?
A. 4項目が追加で明示義務化されました。
①就業場所・業務の変更の範囲(全労働者対象)
②更新上限の有無と内容(有期契約対象)
③無期転換申込機会
④無期転換後の労働条件
古いひな形を使い続けると違反となるため、厚生労働省サイトの最新版モデル様式を活用することが重要です。
Q. 多言語版モデル様式はどこで入手できますか?
A. 厚生労働省の公式サイトから13言語のモデル労働条件通知書を無料でダウンロードできます。
英語・中国語・韓国語・ポルトガル語・スペイン語・タガログ語・ベトナム語・インドネシア語・タイ語・ネパール語・クメール語・ミャンマー語・モンゴル語の各言語版が提供されています。
Q. メールやLINEでの通知は可能ですか?
A. 労働者の個別同意があれば、ファクシミリ・電子メール・SNS等の電磁的方法での交付も可能です。
ただし、出力して書面化できる方式に限られます。LINE等のSNSでも、PDFファイル添付で書面化可能な形式での送付が望ましい運用です。労働者が同意しない場合は書面交付が必要です。
Q. 雇用契約書と一体化してもよいですか?
A. はい、「雇用契約書兼労働条件通知書」として一体化する運用が一般的です。通知義務と契約合意を同時に果たせます。
使用者側の通知(労働条件通知書部分)と労使双方の合意(雇用契約書部分)を1通の書面で果たすことで、書類管理の効率化と紛争予防の両立が可能です。本人の署名・捺印を取得することで合意の証跡を残せます。