用語集 雇用・労務関連

ハラスメント防止措置はらすめんとぼうしそち

ハラスメント防止措置とは?

ハラスメント防止措置とは、事業主に課されたパワーハラスメント・セクシュアルハラスメント・マタニティハラスメント等を防止するための雇用管理上の措置義務です。

2020年6月1日に大企業に義務化、2022年4月1日に中小企業にも適用拡大され、現在は全企業が対象です。事業主の方針明確化・周知啓発、相談体制の整備、事案発生時の迅速対応、プライバシー保護等が必須となっています。

2025年6月11日に労働施策総合推進法等の改正法が公布され、2026年10月1日施行予定でカスタマーハラスメント(カスハラ)対策が従来の努力義務から事業主の雇用管理上の措置義務に格上げされます。あわせて就活生等へのセクハラ防止、治療と仕事の両立支援推進が盛り込まれています。

外国人労働者に対しては言語・文化的差異を背景としたハラスメントが発生しやすく、厚生労働省「あかるい職場応援団」が13言語のリーフレットを提供する等、多言語対応の相談体制整備が事実上必須となっています。

制度の背景・法的根拠

ハラスメント防止措置は労働施策総合推進法・男女雇用機会均等法・育児介護休業法に基づく事業主の措置義務です。日本でのハラスメント問題の深刻化を受け、段階的に法制度が整備されてきました。パワハラ防止法(労働施策総合推進法改正)は2020年6月に大企業、2022年4月に中小企業へ適用が拡大されました。

外国人労働者への対応としては、厚生労働省「外国人労働者の雇用管理の改善等に関する指針」で多言語対応・本人理解できる言語での相談体制整備が求められています。技能実習・特定技能・育成就労での外国人労働者の労務トラブルの予防にもハラスメント防止措置が重要な役割を果たしています。

主な内容と要件

① パワハラの定義(厚労省指針/3要素)

項目内容
要素1優越的な関係を背景とした言動
要素2業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動
要素3労働者の就業環境が害されること
パワハラ6類型身体的攻撃/精神的攻撃/人間関係からの切り離し/過大な要求/過小な要求/個の侵害

パワハラは3要素を全て満たす言動を指します。指示・指導との区別が重要で、業務上必要かつ相当な範囲内であれば該当しません。6類型は典型的なパワハラパターンを示しています。

② 事業主の措置義務

項目内容
方針の明確化と周知・啓発就業規則・ハラスメント防止規程の整備
相談体制の整備相談窓口の設置・担当者の選定
事後対応事案発生時の迅速・適切な対応
併せて講ずべき措置プライバシー保護・不利益取扱禁止

事業主はこれら4項目の措置を講じる必要があります。セクハラ(男女雇用機会均等法11条)、マタハラ(同法11条の3/育介法25条)も同様の措置義務があります。

③ 2026年10月施行のカスハラ対策

項目内容
改正法公布2025年6月11日
施行予定2026年10月1日
対象労働者が1人でもいる事業主
変更点従来の努力義務から雇用管理上の措置義務に格上げ
あわせて就活生等へのセクハラ防止/治療と仕事の両立支援推進

2026年10月1日施行予定のカスハラ対策は、顧客等からの著しい迷惑行為への対応を事業主に義務付けるものです。外国人労働者は言語・文化的差異から顧客対応で困難に直面することがあるため、特に重要な制度となります。

立場別の実務ポイント

受入機関の体制整備

受入機関は就業規則・ハラスメント防止規程の整備、相談窓口の設置、定期研修の実施が必須です。外国人労働者向けには母国語での相談体制、通訳体制が事実上必須となります。厚労省「あかるい職場応援団」のリーフレットは13言語(日・英・中・韓・越・タガログ・尼・タイ・ネパール・カンボジア・モンゴル・西・葡)で展開されており、活用が推奨されます。

外国人労働者特有のハラスメント

外国人労働者には、言語の壁・文化的差異を背景としたハラスメントが発生しやすい特徴があります。「日本語ができない」ことを理由とした嘲笑、宗教・食文化への配慮不足、出身国への差別的言動等が典型例です。多文化共生研修・異文化研修と組み合わせた防止策が効果的です。

違反時のリスク

直接的な刑事罰はありませんが、厚労大臣による助言・指導・勧告(同法33条)、勧告に従わない場合の企業名公表(同法33条2項)があります。安全配慮義務違反に基づく民事損害賠償請求リスク、レピュテーション低下、外国人雇用認定機関としての適格性疑義等の影響があります。技能実習・育成就労では監理団体・監理支援機関の許可取消にも繋がる可能性があります。

2026年10月のカスハラ対応

カスハラ対策の措置義務化に向けて、2026年10月までに対応マニュアル整備・現場対応フロー策定・相談体制充実が必要です。外国人労働者がカスタマー対応に従事する宿泊・外食・小売等の業種では特に重要な対応となります。

類似制度との比較

項目パワハラ防止セクハラ防止マタハラ防止カスハラ防止(2026年10月〜)
根拠法令労働施策総合推進法30条の2男女雇用機会均等法11条同法11条の3/育介法25条労働施策総合推進法改正
義務化時期大2020年6月/中小2022年4月同左(既存)同左(既存)2026年10月予定
対象全事業主全事業主全事業主労働者1人以上
典型例身体的・精神的攻撃性的言動妊娠・出産・育児への嫌がらせ顧客等からの過剰要求

各種ハラスメント防止措置は別々の法令に基づきますが、事業主の措置義務は共通する内容が多くなっています。一体的な防止規程・相談窓口の整備が効率的です。2026年10月施行のカスハラ対策により、職場内・職場外の双方からのハラスメントへの対応が制度化されます。

よくある質問

Q. 中小企業もパワハラ防止措置の義務がありますか?

A. はい、2022年4月1日から中小企業にも義務化されています。現在は全企業が対象です。

2020年6月に大企業に義務化、2022年4月に中小企業へ適用が拡大されました。違反時は厚労大臣の助言・指導・勧告、企業名公表のリスクがあります。

Q. 外国人向けの相談窓口はどう整備しますか?

A. 母国語での相談体制、通訳体制の整備が事実上必須です。厚労省「あかるい職場応援団」のリーフレットを13言語で活用できます。

外部相談窓口の活用、多言語対応の相談員配置、社内通訳の確保等の方法があります。受入機関の規模・対応言語に応じた整備が重要です。

Q. カスハラ対策の義務化はいつからですか?

A. 2026年10月1日施行予定です。労働者が1人でもいる事業主が対象となります。

従来の努力義務から事業主の雇用管理上の措置義務に格上げされます。対応マニュアル整備・現場対応フロー策定・相談体制充実が必要です。

Q. ハラスメント発生時の対応手順は?

A. ①相談受付・事実確認、②被害者への配慮(心身ケア・配置転換等)、③加害者への措置(注意・処分)、④再発防止策の実施が基本フローです。

プライバシー保護・不利益取扱禁止が併せて講ずべき措置として求められます。事案ごとに記録を残し、再発防止に活用することが重要です。

参考資料

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