雇用調整とは?
雇用調整とは、景気変動・産業構造の変化・経営状況等に応じて、企業が労働者数・労働時間・賃金等を調整し、企業の存続と雇用の維持を図る一連の経営対応の総称です。
具体的な手段として残業削減・配置転換・出向・休業・希望退職募集・整理解雇等があり、解雇という最終手段に至る前の段階的な対応として位置づけられます。整理解雇の有効性判断における「解雇回避努力義務」の中核を構成する概念でもあります。
政府は雇用調整助成金等の公的支援制度により、休業・教育訓練・出向で雇用を維持した事業主の賃金等の一部を助成しています。中小企業の助成率は2/3、大企業は1/2が基本です(令和8年4月1日改訂版)。
外国人労働者にも雇用保険適用者であれば同様に適用されるため、特定技能・育成就労外国人の雇用維持にも有効な支援策です。
具体的な意味・内容
残業削減・労働時間調整
最初に検討される雇用調整手段です。所定外労働時間の削減、所定労働時間の一時的短縮等により総人件費を抑制します。労働者の収入減少を伴うため、対象者への丁寧な説明と就業規則・労使協定の整備が必要です。
配置転換・出向
余剰人員を業務需要のある部門・事業所・関連会社へ配置転換することで雇用を維持します。在籍型出向は出向元・出向先双方に雇用関係が残り、移籍型出向は転籍となります。
産業雇用安定助成金のスキルアップ支援コースは、在籍型出向先でのスキル習得・賃金上昇を支援します。
休業・一時帰休
事業活動の一時的縮小に対応し、労働者を一時的に休業させる措置です。労働基準法26条により使用者の責に帰すべき事由による休業の場合は休業手当(平均賃金の60%以上)を支払う義務があります。雇用調整助成金により休業手当の一部が補填されます。
希望退職募集・整理解雇
上記手段でも対応できない場合の最終手段です。希望退職は労使合意による退職で、退職金の上乗せ等のインセンティブが付与されます。
整理解雇は使用者の経営事情に基づく解雇で、判例上の整理解雇4要件(人員削減の必要性・解雇回避努力・人選の合理性・手続の妥当性)を充足する必要があります。
関連する制度・助成金
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 雇用調整助成金 | 休業・教育訓練・出向で雇用維持時の賃金助成 |
| 中小企業の助成率 | 2/3(令和8年4月1日改訂版) |
| 大企業の助成率 | 1/2 |
| 支給日数 | 1年100日/3年150日(30日到達後は教育訓練実施率で変動) |
| 主な要件 | 直近3か月の生産指標が前年同期比10%以上低下/雇用保険適用事業主 |
| 対象 | 休業手当の一部・教育訓練の賃金・出向元の賃金等 |
| 休業手当 | 平均賃金の60%以上(労基法26条) |
| 外国人への適用 | 雇用保険適用者は対象(特定技能・育成就労含む) |
| 申請窓口 | 都道府県労働局・ハローワーク |
実務上の注意点
解雇回避努力としての位置づけ
整理解雇の有効性判断において、雇用調整は「解雇回避努力義務」の中核を構成します。残業削減・配置転換・休業・希望退職募集等の段階的措置を実施せずに整理解雇を行うと、解雇権濫用として無効となるリスクが高まります。法的リスク回避の観点からも、雇用調整の段階的実施が重要です。
特定技能・育成就労外国人への影響
特定技能外国人を雇用する企業にとって、雇用調整は「非自発的離職」を回避するための重要な手段です。解雇に至れば過去1年以内の発生で新規受入1年間禁止のペナルティが課されます。育成就労でも本人意向の転籍が制度として認められたことから、雇用維持のための丁寧な対応がより重要となっています。
休業手当の計算
労働基準法26条に基づく休業手当は平均賃金の60%以上です。実務上は60%が一般的ですが、就業規則で60%超の率を定めることも可能です。雇用調整助成金により中小企業では助成率2/3が適用されるため、企業負担を抑えながら雇用維持が可能です。
教育訓練の活用
休業期間中に教育訓練を実施すると雇用調整助成金の助成率が高くなる傾向があります。教育訓練実施率10%未満の場合は助成率が中小企業1/2・大企業1/4に引き下げられるため、計画的な教育訓練の組み込みが推奨されます。外国人労働者の日本語学習・技能向上にも活用できます。
関連用語との違い
| 項目 | 雇用調整 | 整理解雇 | 休業 | 配置転換 |
|---|---|---|---|---|
| 性質 | 手段の総称 | 個別の解雇 | 労働義務の一時免除 | 業務・部署の変更 |
| 労働契約の継続 | 多くは継続 | 終了 | 継続 | 継続 |
| 賃金の取扱い | 手段により異なる | 終了 | 休業手当60%以上 | 変更前同水準 |
| 労働者の同意 | 手段により異なる | 不要(要件充足必要) | 個別同意不要(労使協定推奨) | 就業規則・契約による |
| 法的根拠 | 労働契約法・労基法 | 労契法16条 | 労基法26条 | 労契法・就業規則 |
雇用調整は複数の手段を組み合わせた経営対応の総称で、整理解雇は雇用調整の最終手段の一つです。労働者の不利益を最小限に抑えながら企業の存続を図る観点から、整理解雇に至る前の段階的な雇用調整が重要となります。
よくある質問
Q. 雇用調整助成金は外国人にも適用されますか?
A. はい、雇用保険被保険者であれば外国人にも適用されます。特定技能・育成就労外国人も対象となります。
休業手当の助成、教育訓練期間の賃金助成、出向時の賃金助成等、日本人労働者と同様の制度活用が可能です。雇用保険未加入者は対象外のため、加入状況の確認が必要です。
Q. 休業手当はいくら支払う必要がありますか?
A. 平均賃金の60%以上が労働基準法26条に基づく義務的支払いです。実務上は60%が一般的です。
「使用者の責に帰すべき事由」による休業の場合に適用されます。雇用調整助成金により中小企業は助成率2/3で実質的な企業負担を抑えられます。
Q. 雇用調整を実施する際の労働者への説明は必要ですか?
A. はい、整理解雇4要件における「手続の妥当性」要件として、労働者・労働組合への説明・協議が求められます。
外国人労働者には特に丁寧な説明が必要で、母国語・やさしい日本語での通知書・説明会の開催が推奨されます。本人理解と納得を得る取組がトラブル防止につながります。