入社時健康診断とは?
入社時健康診断(雇入時健康診断)とは、事業者が常時使用する労働者を雇い入れるときに実施する医師による健康診断です。労働者の入社時の健康状態を把握し、適正な配置・健康管理の基礎情報とすることを目的とします。
雇入れの直前または直後に実施するのが原則で、検査項目は11項目あり、定期健康診断と異なり医師判断による省略項目がないのが大きな特徴です。費用は事業者負担が原則です。
入社前3か月以内の健康診断結果を提出することで、該当項目を省略することができます。
実務では「入社前3か月以内の健診結果証明書」を提出させて雇入時健診に代替するケースが多くなっています。外国人労働者の場合、送出国での健康診断結果を日本の安衛則43条の項目を満たす形で活用することが可能です。
特定技能では「健康診断個人票」「受診者の申告書」(出入国在留管理庁書式)の提出が必要で、診断日から3か月以内であることが要件です。
必要になる場面
新規雇用時
常時使用する労働者の新規雇用時に必須です。
「常時使用する労働者」とは
①期間の定めのない契約により使用される者(または1年以上継続使用が予定される者)
②1週間の労働時間数が当該事業場で同種業務に従事する通常労働者の4分の3以上の者を指します。
正社員・契約社員・要件を満たすパート・アルバイトも対象です。
在留資格申請時
特定技能・技能実習・育成就労の在留資格申請時に「健康診断個人票」(出入国在留管理庁書式)の提出が必要です。申請時点で診断日から3か月以内であることが必要で、安衛法上の雇入時健康診断と入管法上の健康診断は項目が重複するため、安衛法に準拠した健診結果は入管申請にも流用可能です。
配置換え・有害業務への移動時
有害業務(有機溶剤・鉛・特定化学物質取扱い等)への配置替え時には、特殊健康診断が必要です。入社時の一般健康診断とは別に実施する必要があります。
申請・取得の手順
- 事業者が労働者の入社日を確認し、雇入時健康診断の実施を計画する。雇入れの直前または直後の実施が原則。
- 労働者が入社前3か月以内に健康診断を受けた場合は、結果証明書の提出を求める。該当項目は省略可能。
- 健診実施医療機関を選定する。受入機関の費用負担で健診費用を支払う。
- 労働者は11項目の検査を受ける(既往歴・自覚症状・身長体重・視力聴力・胸部X線・血圧・貧血・肝機能・血中脂質・血糖・尿・心電図)。
- 健診結果を労働者本人に通知し、健康診断個人票として5年間保存する。
- 外国人の場合、在留資格申請時に出入国在留管理庁書式の「健康診断個人票」「受診者の申告書」を作成・提出する。
注意点・よくある失敗
11項目の省略不可
入社時健康診断は11項目すべて実施が必要で、定期健康診断と異なり医師判断による省略項目がありません。
①既往歴・喫煙歴・服薬歴・業務歴の調査
②自覚症状・他覚症状の有無
③身長・体重・腹囲・視力・聴力(1000Hz・4000Hz)
④胸部X線
⑤血圧
⑥貧血(赤血球数・血色素量)
⑦肝機能(GOT・GPT・γ-GTP)
⑧血中脂質(LDL-C・HDL-C・中性脂肪)
⑨血糖(空腹時血糖またはHbA1c)
⑩尿(糖・蛋白)
⑪心電図検査
この全てが必須です。
3か月以内の健診結果代替
安衛則43条但書により、医師による健康診断を受けた後3月を経過しない者を雇い入れる場合、その者が健診結果証明書を提出すれば該当項目を省略できます。実務では入社前3か月以内の健診結果証明書を提出させて雇入時健診に代替するケースが多いです。新卒採用の場合は学校での定期健診結果を活用できる場合があります。
外国人労働者の送出国健診
多くの送出国(ベトナム・フィリピン・インドネシア等)では出国前の健康診断が送出機関により実施されます。日本の安衛則43条の項目を全て満たしているか確認が必要です。満たさない項目は日本国内で追加実施します。結果証明書が外国語の場合は和訳の添付が望ましい運用です。
特定技能・技能実習・育成就労での要件
特定技能では在留資格申請時に「健康診断個人票」「受診者の申告書」(出入国在留管理庁書式)の提出が必要で、申請時点で診断日から3か月以内であることが必要です。技能実習・育成就労では入国前後の健康診断が実施され、入国後講習中にも改めて診断を実施します。
結核検診(胸部X線)が特に重視され、必要に応じて喀痰検査を追加実施します。
類似書類との違い
| 項目 | 入社時健康診断 | 定期健康診断 | 特定業務従事者健診 |
|---|---|---|---|
| 根拠条文 | 安衛則43条 | 安衛則44条 | 安衛則45条 |
| 実施時期 | 雇入れの直前または直後 | 1年以内ごとに1回 | 配置替え時・6か月以内ごと |
| 対象 | 常時使用する労働者の新規雇用時 | 常時使用する労働者 | 深夜業・有害業務等の従事者 |
| 項目省略 | 不可(11項目全て必須) | 医師判断で一部可 | 同左 |
| 3か月内健診の代替 | 可(安衛則43条但書) | 不可 | 不可 |
| 結果保存 | 5年 | 5年 | 5年 |
入社時健康診断は項目省略が認められない点と、3か月以内の他健診で代替可能な点が他の健康診断と異なる特徴です。新規入社者の健康状態を確実に把握するための制度設計となっています。
よくある質問
Q. 入社前の健診結果で代替できますか?
A. 入社前3か月以内に医師による健康診断を受けた場合、結果証明書の提出により該当項目を省略できます。
新卒採用では学校での定期健診結果、転職者では前職での健診結果を活用できる場合があります。3か月超の場合や項目不足の場合は、日本で追加実施が必要です。
Q. 外国人労働者の送出国での健診結果は使えますか?
A. 日本の安衛則43条の11項目を満たし、かつ診断日から3か月以内であれば代替可能です。
結果証明書が外国語の場合は和訳の添付が望ましく、満たさない項目は日本で追加実施します。特定技能の在留資格申請には「健康診断個人票」(出入国在留管理庁書式)への記載が必要です。
Q. パート・アルバイトも入社時健診の対象ですか?
A. 「常時使用する労働者」の要件を満たすパート・アルバイトも対象です。
1週間の労働時間が通常労働者の4分の3以上で、1年以上継続使用予定の場合は対象となります。短期・短時間労働者は対象外ですが、雇用条件を確認することが重要です。
Q. 結核検診はなぜ重視されますか?
A. 結核は感染力があり、早期発見・治療が公衆衛生上重要です。胸部X線検査で結核の有無を確認します。
結核高蔓延国(東南アジア・南アジア等)からの来日者は特に注意が必要です。必要に応じて喀痰検査を追加実施し、結核疑い・罹患者には適切な医療対応を行います。