用語集 雇用・労務関連

出向・転籍しゅっこう・てんせき

出向・転籍とは?

出向は、雇用契約を出向元に維持したまま出向先の指揮命令下で労働させる人事異動であり、在籍型出向移籍型出向(実質的に転籍と同義)に分かれます。転籍は出向元との労働契約を解除し、転籍先と新たに労働契約を結ぶ形態で、出向元との雇用関係は終了します。

在籍型出向は出向元への復帰を前提とし、転籍は復帰しない点が大きな違いです。

出向命令には就業規則・労働契約の根拠が必要で、転籍は個別の同意が必須です。在籍型出向は産業雇用安定助成金(スキルアップ支援コース・産業連携人材確保等支援コース)の活用が可能で、雇用維持・人材活用の有力な手段となります。

外国人労働者の場合、出向・転籍時に在留資格との整合性確認が必要で、特に育成就労(2027年4月1日施行予定)では本人意向による転籍が新たに認められ、分野ごとに1〜2年の就労期間要件等が設定されています。

具体的な意味・内容

在籍型出向

出向元との労働契約を残し、出向先とも新たに労働契約を結ぶ二重契約です。原則として出向元への復帰を前提とします。賃金支払・労働時間管理・安全配慮義務等は出向契約書で分担し、一般的には出向先が指揮命令と労働時間管理、出向元が賃金支払と社会保険を継続するパターンが多くなっています。

移籍型出向(転籍)

出向元との労働契約を解除し、転籍先と新たに労働契約を結ぶ形態で、出向元との雇用関係は終了します。実質的に「転籍」と同義です。労働者にとっては企業を移籍する意味を持つため、個別の同意が必須となります。退職金・勤続年数の取扱いは転籍時に精算するケースが一般的です。

出向命令の根拠

就業規則または労働協約に「業務上必要な場合は出向を命じることがある」等の規定があり、かつ出向の目的・期間・労働条件が合理的であれば、個別同意なしに命令可能です(民法625条との関係で包括的同意があると解されます)。転籍は労働契約法・民法上、必ず個別同意が必要で、出向命令と異なります。

外国人の出向・転籍と在留資格

「技術・人文知識・国際業務」等の在留資格は業務内容と専攻・職歴の関連性が要件のため、出向・転籍先の業務が要件を満たすかの再確認が必要です。業務内容が大きく変わる場合は「就労資格証明書」の交付申請が推奨されます。「契約機関に関する届出」(14日以内)を出入国在留管理庁に行う義務もあります。

関連する制度・在籍型出向と転籍の比較

項目在籍型出向移籍型出向(転籍)
出向元との雇用契約継続終了
出向先との雇用契約新規締結(二重契約)新規締結
労働者の同意就業規則等に根拠があれば原則不要個別同意が必須
復帰の前提原則あり原則なし
退職金・勤続年数出向元で通算転籍時に精算が一般的
主な助成金産業雇用安定助成金(スキルアップ支援等)
派遣との違い双方と雇用契約/派遣法対象外

実務上の注意点

特定技能・育成就労での出向・転籍

技能実習は原則として出向・転籍は認められず、やむを得ない事情のみ例外的に認められます。

特定技能では転籍(受入機関の変更)が同一業務区分の要件で可能です。育成就労(2027年4月施行予定)では本人意向による転籍が新たに認められ、要件は①同一業務区分、②転籍元での就労期間が分野ごとに定める1〜2年を超えていること、③技能検定試験基礎級・一定水準以上の日本語能力試験合格、④転籍先機関が適切な要件を満たすことです。

産業雇用安定助成金の活用

在籍型出向支援として、スキルアップ支援コース(出向先でスキル習得・復帰時5%以上の賃金上昇で出向元支援)、産業連携人材確保等支援コース(中小1人最大250万円)が活用可能です。雇用維持支援コースは令和5年10月31日に廃止されたため、現在は2コース体制です。2026年度(令和8年度)も継続運用予定です。

在留資格との整合性確認

外国人の出向・転籍時には在留資格の活動内容との整合性を確認する必要があります。業務内容が大きく変わる場合は就労資格証明書の交付申請が推奨されます。出向・転籍後14日以内に「契約機関に関する届出」を出入国在留管理庁に提出する必要があります。

偽装出向のリスク

実態は派遣だが出向契約を装う「偽装出向」は、労働者派遣法違反として1年以下の懲役または100万円以下の罰金です。出向は出向先での雇用契約締結が必須で、指揮命令のみの場合は派遣となります。出向契約書の整備と運用実態の整合性確認が重要です。

関連用語との違い

項目在籍型出向転籍派遣育成就労の本人意向転籍
雇用契約双方と契約転籍先のみ派遣元のみ転籍先のみ
労働者の同意原則不要必須登録時の同意本人意向
主な目的人材交流・雇用維持キャリア転換人材活用労働者保護・キャリア形成
法的根拠労契法・民法労契法・民法労働者派遣法育成就労法
違反時偽装出向で派遣法違反無効派遣法違反で罰則計画認定取消等

出向・転籍・派遣はそれぞれ異なる労務形態で、雇用契約の所在・指揮命令の主体・法的根拠が異なります。育成就労の本人意向転籍は新制度独自の概念で、外国人労働者の権利保護を強化する仕組みとなっています。

よくある質問

Q. 出向命令を労働者が拒否できますか?

A. 就業規則・労働契約に出向条項があり、出向の目的・期間・労働条件が合理的であれば、個別同意なしに命令可能です。

ただし、不利益が著しい場合・命令の必要性に乏しい場合等は出向命令権の濫用として無効となる可能性があります。転籍は労働者の個別同意が必須のため、本人が拒否すれば実施できません。

Q. 産業雇用安定助成金は出向で活用できますか?

A. はい、在籍型出向支援としてスキルアップ支援コース・産業連携人材確保等支援コースが活用可能です。

2026年度も継続運用予定です。雇用維持支援コースは令和5年10月31日に廃止されたため、現行の2コース体制を確認することが重要です。

Q. 育成就労外国人は出向できますか?

A. 育成就労は受入機関での実施が前提のため、原則として出向は認められません。本人意向による転籍は新制度で認められます。

転籍要件は同一業務区分・分野ごと1〜2年の就労期間・技能基礎級+日本語A1合格・優良受入先かつハローワーク等経由です。技能実習修了者の特定技能経由移行ルートも維持されます。

Q. 外国人を転籍させる際の在留資格手続きは?

A. 「契約機関に関する届出」を14日以内に出入国在留管理庁に提出する必要があります。業務内容が大きく変わる場合は「就労資格証明書」の交付申請が推奨されます。

就労資格証明書は転籍先の業務が在留資格の活動内容と整合することを証明する書面で、後日のトラブル防止に有効です。任意ですが取得が推奨されます。

参考資料

用語集
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