脱退一時金とは?
脱退一時金とは、短期滞在の外国人が老齢年金を受け取れずに帰国するケースを救済するための一時金給付制度です。受給要件は日本国籍を有しないこと、被保険者期間が6か月以上あること、被保険者資格を喪失していること、日本国内に住所を有しないこと、日本年金機構への請求が出国後2年以内であることです。
2025年6月13日成立の年金制度改正法により、支給月数上限が現行5年(60月)から8年(96月)に拡大され、2026年4月1日施行です。これは育成就労3年+特定技能1号5年=計8年の就労期間をカバーする趣旨です。あわせて、再入国許可・みなし再入国許可の有効期間内は脱退一時金を請求できないことも明確化されました。支払時には所得税及び復興特別所得税20.42%が源泉徴収され、退職所得控除を適用した還付請求も可能です。
必要になる場面
技能実習・育成就労・特定技能の帰国時
技能実習生・育成就労外国人・特定技能外国人が帰国する際の重要な制度です。日本での厚生年金・国民年金加入期間が6か月以上あれば、出国後2年以内に請求することで保険料の一部が返還されます。2026年4月から支給月数上限が8年に拡大されるため、長期就労者の還付額が大幅に増加します。
短期滞在・短期赴任の終了時
1年以内の短期赴任等で日本での就労を終えて帰国する場合も、被保険者期間6か月以上あれば対象です。社会保障協定締結国出身者の場合は年金通算と脱退一時金のいずれが有利か比較検討が必要です。
永続出国時
2025年6月の改正により、再入国許可・みなし再入国許可の有効期間内は脱退一時金を請求できないことが明確化されました。一時帰国ではなく永続出国者のみを対象とする趣旨です。一時帰国予定者は再入国許可期間が満了してから請求する必要があります。
申請・取得の手順
- 出国前に「脱退一時金請求書」を入手する(年金事務所・年金機構HP)。請求書様式は2025年2月に変更済み。
- 転出届を市区町村に提出し、住民票除票の写しを取得する。
- パスポート・住民票除票の写し・受取金融機関情報・基礎年金番号通知書または年金手帳を準備する。
- 出国後2年以内に請求書+必要書類を日本年金機構(中央年金センター)へ郵送する。
- 支払時に所得税及び復興特別所得税20.42%が源泉徴収される。
- 退職所得控除を適用した還付請求は出国前に「退職所得の受給に関する申告書」を納税管理人を通じて税務署に提出することで可能。
注意点・よくある失敗
2026年4月の支給月数上限拡大
2025年6月13日成立の年金制度改正法により、支給月数上限が5年(60月)から8年(96月)に拡大され、2026年4月1日施行です。育成就労+特定技能1号の通算8年に対応した改正で、長期在留者の還付額が大幅に増加します。受入機関は外国人材へ最新情報を案内することが重要です。
再入国許可期間内は請求不可
2025年6月改正で、再入国許可・みなし再入国許可の有効期間内は脱退一時金を請求できないことが明確化されました。一時帰国予定者は再入国許可期間が満了してから請求する必要があります。永続出国者のみを対象とする趣旨です。
出国後2年以内の請求期限
出国後2年以内に日本年金機構(中央年金センター)への請求が必要です。期限超過は請求権消滅となります。受入機関は帰国予定者に対し、帰国前に請求書様式・必要書類の入手と手続き方法を案内することが重要です。
社会保障協定との比較検討
2025年12月1日の日・オーストリア協定発効で日本は24か国と社会保障協定締結です。脱退一時金を受給すると、それ以前の年金加入期間は通算対象から除外されます。協定国出身者は通算受給と一時金受給を比較検討する必要があります。長期的な年金受給を優先する場合は通算が有利な場合があります。
類似制度との違い
| 項目 | 脱退一時金 | 社会保障協定(年金通算) | 老齢年金 |
|---|---|---|---|
| 対象 | 日本国籍を持たない者 | 協定国出身者 | 受給資格期間10年以上 |
| 要件 | 被保険者期間6か月以上・出国後2年以内 | 協定加入期間と日本期間の合算 | 受給資格期間10年以上 |
| 受給時期 | 出国後(永続出国時) | 本国年金支給時 | 原則65歳から |
| 支給上限(現行) | 5年(60月) | - | - |
| 支給上限(2026年4月〜) | 8年(96月) | - | - |
| 課税 | 20.42%源泉徴収(還付請求可) | 各国の年金課税ルール | 公的年金等控除 |
脱退一時金は短期滞在者向けの一時金、社会保障協定は加入期間通算の制度、老齢年金は受給資格期間10年以上の通常給付です。出身国・在留期間・将来の年金受給見込みに応じて最適な選択肢が異なります。
よくある質問
Q. 2026年4月から何が変わりますか?
A. 支給月数上限が現行5年(60月)から8年(96月)に拡大されます。育成就労3年+特定技能1号5年=計8年の就労期間をカバーする趣旨です。
長期在留者の還付額が大幅に増加します。再入国許可期間内は請求できないことも明確化されました。
Q. 脱退一時金には税金がかかりますか?
A. はい、所得税及び復興特別所得税20.42%が源泉徴収されます。
退職所得控除を適用した還付請求が可能です。出国前に「退職所得の受給に関する申告書」を納税管理人を通じて税務署に提出することで実現できます。税理士・税務代理人を通じた還付実務が一般的です。
Q. 社会保障協定締結国の出身者はどう判断すべきですか?
A. 協定国出身者は通算受給と一時金受給を比較検討する必要があります。脱退一時金を受給すると、それ以前の年金加入期間は通算対象から除外されます。
長期的な年金受給を優先する場合は通算が有利な場合があります。短期滞在で本国の年金加入期間も短い場合は脱退一時金が有利な場合があります。個別状況に応じた判断が重要です。
Q. 受入機関はどう支援すべきですか?
A. 帰国予定者に対し、帰国前に請求書様式・必要書類の入手と手続き方法を案内することが重要です。
転出届の市区町村提出、パスポート・住民票除票の写し・受取金融機関情報の準備等、複数の手続きが必要です。多言語での説明資料の整備や社労士・税理士による相談機会の提供が望まれます。