雇用契約の解除とは?
雇用契約の解除とは、使用者または労働者の一方の意思表示により雇用契約を終了させることを指します。使用者側からの解除は「解雇」、労働者側からの解除は「退職」と呼ばれます。
日本では、労働契約法16条により「解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は権利濫用として無効」とする解雇権濫用法理が確立されており、解雇には厳しい要件が課されます。あわせて労働基準法20条に基づき、少なくとも30日前の予告または平均賃金30日分以上の解雇予告手当の支払いが必要です。
外国人材の雇用契約解除には日本人と異なる特別な留意点があります。
退職・解雇後、原則3か月(高度専門職等は6か月)を超えて在留資格に該当する活動を行わない場合、在留資格取消対象(入管法22条の4)となります。求職活動を行っていれば「正当な理由」として取消対象外です。
特定技能では受入企業が過去1年以内に「非自発的離職」(解雇等)を発生させた場合、特定技能外国人の新規受入が1年間禁止される重要なペナルティもあります。
具体的な意味・内容
普通解雇
労働契約の不履行(能力不足・勤務不良・私傷病による就労不能等)による契約解除です。労働者個人の事情に基づく解雇で、客観的合理性・社会的相当性が必須要件です。能力不足を理由とする場合、改善指導・配置転換等の解雇回避努力が前提となります。
整理解雇
使用者側の経営事情に基づく人員削減のための解雇です。
判例上の整理解雇4要件として、
①人員削減の必要性
②解雇回避努力義務
③人選の合理性
④手続の妥当性
これらの総合考慮で有効性が判断されます。コロナ禍以降、整理解雇の有効性をめぐる訴訟が増加しています。
懲戒解雇
労働者の重大な企業秩序違反(横領・暴力行為・著しい職務怠慢等)に対する制裁としての解雇です。最も重い処分で、就業規則の明確な根拠規定が必要です。本人への弁明機会の付与等、手続的正当性も求められます。
試用期間中の解雇
試用期間中も労働契約は成立しているため、客観的合理性・社会的相当性が必要です。「採用決定後の調査・観察により判明した事実から不適格と判断した場合」は本採用拒否の自由が比較的広く認められます。
試用開始から14日を超えた段階での解雇は予告(または予告手当)が必要です。
関連する法律・罰則
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 解雇権濫用法理 | 労働契約法16条(客観的合理性・社会的相当性) |
| 解雇予告 | 労働基準法20条(30日前予告または平均賃金30日分の予告手当) |
| 整理解雇4要件 | ①人員削減の必要性 ②解雇回避努力 ③人選の合理性 ④手続の妥当性 |
| 解雇予告除外 | 天災事変・労働者の責に帰すべき事由(労基監督署の認定要) |
| 試用期間中の解雇 | 14日超で予告必要/本採用拒否の自由は比較的広い |
| 外国人の在留資格取消 | 退職後3か月超の活動なし(高度専門職等6か月)/求職活動は正当理由 |
| 特定技能の非自発的離職 | 過去1年以内に発生した受入機関は新規受入1年間禁止 |
| 事業主の届出(特定技能) | 雇用契約終了から14日以内に出入国在留管理庁へ届出 |
| 本人の届出(外国人共通) | 退職日から14日以内に契約機関に関する届出 |
| 不当解雇の損害賠償 | 解雇無効に伴うバックペイ・慰謝料等 |
実務上の注意点
在留資格との関係
外国人材の解雇・退職時には、在留資格の継続活動要件への留意が必須です。退職後3か月(高度専門職等6か月)を超えて在留資格に該当する活動を行わない場合、出入国在留管理庁による在留資格取消の対象となります。
求職活動を行っていれば取消対象外となるため、本人へのハローワーク利用・転職活動の支援が重要です。
特定技能の受入禁止リスク
特定技能外国人を雇用する企業にとって最も重要な留意点は、過去1年以内に「非自発的離職」(解雇等)を発生させた場合、特定技能外国人の新規受入が1年間禁止される点です。安易な解雇は将来の人材確保に重大な影響を与えるため、解雇回避努力(雇用調整・配置転換等)が特に重要となります。
育成就労での対応
育成就労(2027年4月施行予定)では、転籍時の職業紹介を外国人育成就労機構・監理支援機関・ハローワークが支援します。受入機関での解雇・契約終了は機構への通知対象となり、外国人本人の転籍支援に活用されます。本人意向での転籍が認められる新制度では、解雇に頼らない人材管理の重要性が増しています。
届出義務
特定技能では雇用契約終了から14日以内に出入国在留管理庁へ「特定技能雇用契約の終了に係る届出」を提出する必要があります。本人も14日以内に「契約機関に関する届出」を提出する必要があり、双方の届出義務があります。届出漏れは法令違反となります。
関連用語との違い
| 項目 | 普通解雇 | 整理解雇 | 懲戒解雇 | 合意退職 |
|---|---|---|---|---|
| 主体 | 使用者 | 使用者 | 使用者 | 労使合意 |
| 原因 | 労働者の事情 | 使用者の経営事情 | 労働者の重大違反 | 双方の合意 |
| 予告・予告手当 | 必要 | 必要 | 除外認定で不要可 | 不要(合意による) |
| 退職金 | 原則支給 | 原則支給 | 不支給規定の例多 | 原則支給 |
| 失業給付 | 会社都合扱い | 会社都合扱い | 原則自己都合扱い | 合意内容次第 |
| 特定技能の影響 | 非自発的離職 | 非自発的離職 | 労働者責で例外あり | 合意内容次第 |
解雇の3類型は法的根拠・要件・効果が異なります。特定技能・育成就労外国人を雇用する企業は「非自発的離職」の発生を避ける観点から、合意退職や雇用調整等の代替手段を優先的に検討することが推奨されます。
よくある質問
Q. 解雇予告手当は必ず支払う必要がありますか?
A. 30日前に解雇予告をすれば予告手当は不要です。即日解雇の場合は平均賃金30日分以上の予告手当が必要となります。
予告日数と手当日数の合計が30日に達していれば短縮も可能です。天災事変や労働者の責に帰すべき事由による場合は労働基準監督署の認定により予告除外が認められます。
Q. 解雇された外国人は強制送還されますか?
A. 解雇=強制送還ではありません。退職後3か月(高度専門職等6か月)以内に新たな就労先を見つけるか、求職活動を継続していれば在留資格を維持できます。
3か月超の活動なしで在留資格取消対象となります。受入機関は離職時にハローワーク利用方法・転職支援サービス等を本人に案内することが重要です。
Q. 特定技能で1年間新規受入禁止とは具体的に何ですか?
A. 受入企業が過去1年以内に解雇等の「非自発的離職」を発生させた場合、新たな特定技能外国人の受入(COE申請等)が1年間できなくなる規制です。
既存の特定技能外国人の在留期間更新等は影響を受けませんが、追加採用ができないため人材計画上の重大な制約となります。安易な解雇は将来の人材確保に大きな影響を与えます。
Q. 試用期間中の外国人は自由に解雇できますか?
A. 試用期間中も労働契約は成立しているため、客観的合理性・社会的相当性が必要です。完全に自由な解雇は認められません。
「採用決定後の調査・観察により判明した事実から不適格と判断した場合」は本採用拒否の自由が比較的広く認められます。試用開始から14日を超えると予告(または予告手当)が必要となります。