用語集 雇用・労務関連

賃金台帳ちんぎんだいちょう

賃金台帳とは?

賃金台帳とは、労働基準法第108条に基づき、使用者が事業場ごとに調製・保存することが義務付けられた帳簿です。

賃金計算の基礎となる事項および賃金の額その他厚生労働省令で定める事項を、賃金支払の都度・遅滞なく記入することが義務です。労働者名簿・出勤簿と並ぶ「法定三帳簿」の一つで、労働基準監督署の調査や在留資格申請時の重要な提出書類となります。

記載必須事項は、氏名・性別・賃金計算期間・労働日数・労働時間数・時間外労働時間数・深夜労働時間数・休日労働時間数・賃金の種類ごとの額・控除額の10項目です。

保存期間は原則5年間(経過措置で当分の間3年間でも可)です。違反は労基法120条により30万円以下の罰金です。

外国人材の在留資格申請・特定技能基準審査でも「日本人と同等以上の報酬」要件の証拠書類として活用される重要書類です。

必要になる場面

賃金支払時の都度作成

賃金支払の都度、遅滞なく記入する必要があります。給与計算から支払までのプロセスで賃金台帳の調製・記録を行うのが標準的な運用です。月次・週次・日次など賃金支払頻度に応じて記録します。

労働基準監督署の調査時

労基署の定期調査・申告調査時に提示が求められる主要書類です。賃金台帳の不備は是正勧告の対象となり、悪質な場合は刑事罰(30万円以下の罰金)に発展する可能性があります。労働者名簿・出勤簿と併せて常時整備しておくことが重要です。

在留資格申請・更新時

外国人の在留資格認定証明書交付申請・在留資格更新許可申請時に、給与関連の証拠書類として提出が求められる場合があります。特定技能・技能実習・育成就労では「日本人と同等以上の報酬」要件の証明として重視されます。

未払賃金請求の証拠

労働者からの未払賃金請求や労働審判・訴訟の際、労働時間・賃金額の客観的証拠として活用されます。記録の不備は使用者にとって不利な認定の根拠となるため、正確な記録が必須です。

申請・取得の手順

  1. 労働者の入社時に賃金台帳を新規作成し、氏名・性別等の基本事項を記入する。
  2. 各賃金計算期間の労働日数・労働時間数(時間外・深夜・休日労働を含む)を出勤簿等から転記する。
  3. 給与計算に基づき基本給・各種手当の額、控除額を記入する。
  4. 賃金支払の都度、遅滞なく記入を完了する。
  5. 労働者の退職時には最終記入日から起算して原則5年間(当分の間3年間でも可)保存する。
  6. 労基署調査・在留資格申請時に提示・提出する。

注意点・よくある失敗

給与明細との混同

給与明細は従業員へ交付する書類で、賃金台帳は企業内部の帳簿です。給与明細では賃金台帳の代用にならず、労働日数・労働時間等の必須記載事項が不足する点に注意が必要です。

両者は別々に整備する必要があります。

必須記載事項の漏れ

労働基準法施行規則54条の10項目(氏名・性別・賃金計算期間・労働日数・労働時間数・時間外/深夜/休日労働時間数・賃金種類別額・控除額)は必須です。労働時間数の記録漏れ、時間外・深夜・休日労働の区分なし等が労基署調査での頻出指摘事項です。

電子化と保存要件

賃金台帳は紙・電子データいずれでも可です。電子保存の場合、必要時に画面表示・印刷が可能であり改ざん防止措置が講じられていることが要件です。クラウド型給与計算システムで自動生成される賃金台帳は、要件を満たすシステムを選定することが重要です。

外国人材の特別な留意点

特定技能・技能実習・育成就労で「日本人と同等以上の報酬」要件を満たす証明書類として活用されます。同職種の日本人従業員の賃金台帳との比較が監査時に求められる場合があるため、賃金体系の透明性・合理性の確保が重要です。

入管庁・労基署の合同調査で不備が発覚すると、不正行為認定や受入機関の欠格事由に発展するリスクがあります。

類似書類との違い

項目賃金台帳給与明細労働者名簿出勤簿
根拠法令労基法108条所得税法231条労基法107条労基法108条(労働時間記録)
主な記載事項賃金額・労働時間等支給額・控除額氏名・住所・履歴等始業終業時刻・休憩
交付義務不要(内部帳簿)従業員に交付必須不要不要
保存期間原則5年(当分の間3年)規定なし(事業者判断)原則5年(当分の間3年)原則5年(当分の間3年)
違反時罰則30万円以下の罰金1年以下の懲役・50万円以下の罰金30万円以下の罰金30万円以下の罰金

賃金台帳・労働者名簿・出勤簿は「法定三帳簿」と呼ばれ、労働基準法に基づく必須書類です。給与明細は所得税法上の交付義務書類で、賃金台帳とは目的・記載事項が異なります。これらを一体的に整備することが労務管理の基本です。

よくある質問

Q. 賃金台帳はクラウド給与計算ソフトで自動生成されますか?

A. はい、多くのクラウド給与計算ソフトで自動生成されます。電子保存要件を満たすシステムを選定することが重要です。

必要時の画面表示・印刷可能性、改ざん防止措置(変更履歴の保存等)が要件です。電子帳簿保存法対応のシステムであれば概ね要件を満たします。

Q. 保存期間は3年と5年のどちらですか?

A. 法律上は原則5年間ですが、経過措置により当分の間は3年間でも可とされています。

2020年4月の労基法改正で3年から5年に延長されました。労務管理の安全性確保の観点からは5年保存が望ましく、多くの企業が徐々に5年保存運用に移行しています。

Q. パート・アルバイトも賃金台帳の対象ですか?

A. はい、雇用形態を問わずすべての労働者について賃金台帳を作成する必要があります。

正社員・契約社員・パート・アルバイト・派遣社員(派遣元事業主が作成)等、雇用形態に関わらず労基法108条が適用されます。日雇い・短期労働者でも対象です。

Q. 在留資格申請でどのように使われますか?

A. 「日本人と同等以上の報酬」要件の証明書類として、出入国在留管理局が提出を求める場合があります。

特定技能・技能実習・育成就労で重要視されます。同職種の日本人従業員の賃金台帳との比較や、外国人特有の差別的処遇がないことの確認に活用されます。

参考資料

用語集
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