用語集 送出国・国際関連

二国間覚書(MOC/MOU)にこくかんおぼえがき

二国間覚書(MOC/MOU)とは?

二国間覚書(英語:Memorandum of Cooperation=MOC、Memorandum of Understanding=MOU)は、日本国政府と送出国政府の間で締結される協力文書です。

主に出入国在留管理庁・厚生労働省と相手国の労働所管省庁との間で署名・交換され、悪質仲介事業者・送出機関の排除、特定技能外国人の送出受入に関する情報共有、労働者の権利保護、試験実施・査証発給等の円滑化を目的としています。

法的性格は国際法上の条約ではなく、行政間の協力文書(紳士協定)であり、直接的な法的拘束力はないものの、運用上の規範として機能します。MOCは「協力関係の継続」、MOUは「合意事項の共有」というニュアンスの差がありますが、実務上はほぼ同義で扱われます。

特定技能・技能実習・育成就労(2027年4月1日施行予定)の3制度それぞれで個別に締結が必要となる構造のため、相手国政府との協議件数が累増しています。

二国間覚書の主な役割と機能

悪質仲介事業者・送出機関の排除

二国間覚書により、日本側と送出国側で悪質な仲介事業者・送出機関の情報を共有し、ブラックリスト化や認定取消などの協調的な対応が可能となります。これにより、労働者保護と適正な人材送出が制度的に担保されます。

特定技能外国人の送出受入の情報共有

送出機関の認定状況、認定取消、違反事例、労働者保護に関する施策など、両国政府間で情報共有する枠組みを定めます。受入企業はこの情報を通じて、信頼できる送出機関の選定が可能となります。

労働者の権利保護と問題発生時の協議枠組み

労働者の権利保護に関する両国の取り組みや、労務トラブル発生時の協議枠組みを定めます。これにより、国境を越える問題への対応が制度的に整備されています。

試験実施・査証発給等の円滑化

JFT-Basicや特定技能評価試験の現地実施、査証発給手続きの円滑化など、運用面での協力事項も含まれます。これにより、人材送出のリードタイム短縮と品質向上が実現されます。

特定技能MOCの締結状況(19か国)

項目内容
正式名称(英語)Memorandum of Cooperation(MOC)/ Memorandum of Understanding(MOU)
正式名称(日本語)二国間覚書/協力覚書
当事者日本国政府と送出国政府
主な署名者出入国在留管理庁・厚生労働省と相手国労働所管省
法的性格国際法上の条約ではない行政間協力文書(紳士協定)
特定技能MOC締結国数19か国(currentDate時点、最新は出入国在留管理庁HP参照)
主な締結国インドネシア・ベトナム・フィリピン・カンボジア・ミャンマー・ネパール・タイ・モンゴル・スリランカ・バングラデシュ・パキスタン・ウズベキスタン・キルギス・タジキスタン・インド・マレーシア・ペルー・ラオス
育成就労MOCcurrentDate時点で未締結(暫定送出機関リストで準備進行中)

特定技能MOCはcurrentDate時点(2026年5月)で19か国と作成済みで、19の特定技能MOC締結国は出入国在留管理庁の公式サイトで最新版を確認できます。なお、中国は特定技能制度上は受入可能ですが、MOC未締結の状態が継続しています。技能実習MOCは別途17か国程度と締結されており、両制度のMOCは相互に独立して運用されています。

技能実習MOCと育成就労MOC

技能実習MOC(17か国程度と締結済)

技能実習制度では、ベトナム(2017年6月)、カンボジア(2017年7月)、インド(2017年10月)、フィリピン(2017年11月)、ラオス(2017年12月)、モンゴル(2017年12月)、バングラデシュ(2018年1月)、スリランカ(2018年2月)、ミャンマー(2018年4月)、ブータン(2018年10月)、ウズベキスタン(2019年1月)、パキスタン(2019年2月)、タイ(2019年3月)、インドネシア(2019年6月)、東ティモール(2024年10月)、フィジー(2025年11月)などと締結されています。

育成就労MOC(currentDate時点未締結)

育成就労制度については、currentDate時点(2026年5月)でMOC本体は未締結です。原則としてMOC作成国からのみ受入可能となる予定ですが、協議中の国については暫定送出機関リスト(2026年3月下旬以降OTIT公表)に基づき、監理支援機関の許可に係る施行日前申請(2026年4月15日開始=施行済み)が進行しています。

3制度それぞれに個別MOCが必要

技能実習・特定技能・育成就労の3制度それぞれで個別にMOC締結が必要となる構造のため、相手国政府との協議件数が累増しています。これにより、各制度間でMOC締結国に差異が生じることもあります。

育成就労施行に向けたスケジュール

2026年4月15日に監理支援機関の許可に係る施行日前申請開始(施行済み)、2026年9月1日に育成就労計画認定の施行日前申請開始予定、2027年4月1日育成就労制度本体施行予定、と段階的に進められています。育成就労MOCも順次締結が見込まれます。

受入実務上の重要ポイント

MOC締結国の確認

特定技能・技能実習・育成就労の各制度で、採用予定国のMOC締結状況を必ず確認する必要があります。MOC未締結の国からの採用は制度上困難な場合や、運用が不安定な場合があるため注意が必要です。

MOC本文の参照

MOC本文(英文・和訳)は出入国在留管理庁の公式サイトに掲載されています。送出機関認定の枠組み、悪質仲介排除の取り組み、情報共有の範囲などが定められており、採用実務の前提知識として確認することが推奨されます。

送出国側の運用変更への対応

ミャンマーのOWIC運用変更や、ベトナムのLaw 69施行など、MOC締結後も送出国側の運用が変更されることがあります。受入企業は最新の運用情報を継続的に確認し、対応を柔軟に調整する必要があります。

中国はMOC未締結だが特定技能受入可能

中国は特定技能MOC未締結ですが、特定技能制度は二国間取決めの有無に関わらず受入可能なため、中国籍の特定技能在留者も一定規模存在しています。ただし、MOC未締結のため悪質仲介排除の制度的枠組みは弱く、自己責任での信頼できるリクルートチャネル選定が重要です。

MOCとMOU・国際条約との違い

項目MOC(協力覚書)MOU(了解覚書)国際条約・協定
正式名称Memorandum of CooperationMemorandum of UnderstandingTreaty/Agreement
法的性格行政間協力文書(紳士協定)行政間協力文書(紳士協定)国際法上の条約
ニュアンス協力関係の継続合意事項の共有法的拘束力ある合意
批准手続き不要不要国会承認等が必要
特定技能MOC・技能実習MOC類似(実務上ほぼ同義)EPA、日インドCEPAなど

MOCとMOUの違いは実務上ほぼ同義ですが、国際条約とは大きく異なる位置づけです。条約は国会承認等の批准手続きを経て法的拘束力を持ちますが、MOC/MOUは行政間の紳士協定として迅速に締結・運用できる柔軟性があります。一方、法的拘束力が弱いため、運用面での信頼関係構築が制度の機能性を左右します。

よくある質問(FAQ)

Q. MOCがないと特定技能で採用できませんか?

A. 制度上は受入可能ですが、MOC締結国からの採用が標準的です。MOC未締結の中国でも特定技能在留者は一定規模存在しています。

ただし、MOC未締結国からの採用は悪質仲介排除の制度的枠組みが弱く、自己責任での信頼できるリクルートチャネル選定が重要となります。リスク分散の観点から、MOC締結国を優先するのが実務上のスタンダードです。

Q. MOCとMOUは何が違いますか?

A. MOC(Memorandum of Cooperation)は「協力関係の継続」、MOU(Memorandum of Understanding)は「合意事項の共有」というニュアンスの差がありますが、実務上はほぼ同義で扱われます。

両者とも国際法上の条約ではなく、行政間の協力文書(紳士協定)です。日本の特定技能・技能実習では主にMOCが使用されていますが、文書名の差で運用に大きな違いは生じません。

Q. 育成就労MOCはいつ締結されますか?

A. currentDate時点(2026年5月)では未締結ですが、暫定送出機関リスト(2026年3月下旬以降OTIT公表)に基づき準備が進行中です。2027年4月1日施行予定の育成就労制度に向け、順次締結が見込まれます。

育成就労暫定送出機関リストには2026年5月時点でネパール・東ティモール・ラオス・ウズベキスタン・カンボジア・ベトナム・インドネシア・スリランカ・タイ・バングラデシュなどが順次掲載されており、これらの国が育成就労MOC締結の有力候補となっています。

Q. 特定技能MOCと技能実習MOCは同じ国でも別の文書ですか?

A. はい、別の文書です。技能実習・特定技能・育成就労の3制度それぞれで個別にMOC締結が必要となります。同じ国でも、技能実習MOCは2017〜2018年頃、特定技能MOCは2019年以降に締結されたケースが多く見られます。

各制度で別途締結する構造のため、ベトナム・インドネシア・ミャンマーなどMOC更新が継続的に進行している国もあります。締結年度・更新状況は出入国在留管理庁の最新公表で確認することが重要です。

Q. MOCの内容はどこで確認できますか?

A. 特定技能MOCは出入国在留管理庁の公式サイト(https://www.moj.go.jp/isa/policies/ssw/nyuukokukanri05_00021.html)、技能実習MOCは厚生労働省の公式サイトで本文(英文・和訳)が公開されています。

各MOCには送出機関認定の枠組み、悪質仲介排除の取り組み、情報共有の範囲などが定められており、受入実務の前提知識として確認することが推奨されます。育成就労MOCについては外国人技能実習機構(OTIT)の暫定送出機関リストとあわせて確認しましょう。

参考資料

用語集
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