ベトナム(送出国)とは?
ベトナム(Socialist Republic of Vietnam)は、日本に外国人労働者を最も多く送り出している国です。
厚生労働省「外国人雇用状況」令和7年10月末時点で、在日ベトナム人労働者は605,906人と国籍別1位(構成比23.6%、13年連続最多)を維持しており、技能実習・特定技能・育成就労(2027年4月施行予定)を含めた送出国体制の中核を担っています。
送出機関はベトナム政府が許可した事業者のみが業務を行うことができ、労働・傷病兵・社会問題省(MOLISA)配下の海外労働管理局(DOLAB:Department of Overseas Labour)が許可・監督を行っています。
受入企業にとっては、ベトナム側の送出制度を理解し、DOLAB承認の送出機関を経由することが、コンプライアンスと採用品質の両面で重要となります。
在日ベトナム人労働者の規模と特徴
人数と構成比
令和7年10月末の在日労働者は605,906人で全外国人労働者2,571,037人の23.6%を占めます。中国・フィリピン・ネパールなどを大きく引き離す首位ですが、伸び率は近年やや落ち着き、2024〜2025年で約+8.7%程度の水準で推移しています。
特定技能在留者の中核
2025年6月末時点の特定技能在留者336,196人のうち、ベトナム籍は148,486人(44.2%)と全体の半数近くを占めます。飲食料品製造業(約47,492人)、工業製品製造業(26,648人)、建設業(25,177人)の3分野が中心です。
技能実習から特定技能への移行
技能実習を修了したベトナム人が特定技能1号へ移行するルートが定着しています。2027年4月施行予定の育成就労制度においても、ベトナム人材は最大の供給源となる見込みで、3年で特定技能1号水準まで育成する新スキームの主要対象国です。
主要産業
製造業(食品・工業製品)、建設、農業、介護、外食、宿泊と幅広い分野に分布しています。中堅・中小企業の現場労働者として定着しており、地方の人手不足解消を支える大きな労働力供給源となっています。
送出制度の仕組みと主な機関
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主管官庁 | 労働・傷病兵・社会問題省(MOLISA) |
| 許可・監督機関 | 海外労働管理局(DOLAB) |
| 送出機関の性格 | 許可制(DOLAB認可事業者のみ業務可) |
| 必須要件 | DOLAB承認の「推薦者表」掲載者のみ日本側で受入可 |
| 特定技能MOC | 2019年7月1日署名済 |
| 育成就労MOC | currentDate時点で正式締結未公表(協議中) |
| EPA協定 | 平成26年度(2014年度)開始済(看護師・介護福祉士候補者) |
| 主な日本語試験会場 | ハノイ・ホーチミン・ダナンほか主要都市 |
ベトナムでは送出機関の数が多く玉石混交であるため、DOLAB承認のリストに掲載されているかの確認が必須となります。受入企業や監理団体は、現地視察・面談を通じて送出機関の運営実態を確認し、悪質ブローカー経由の採用を避ける必要があります。
送出手数料・失踪問題と最新動向
送出手数料・債務労働問題
ベトナム人実習生の来日前支払額は平均約67〜68万円、来日前借金率は80.0%と国別で最も顕著です。JICA・ベトナム政府・ILOによる「VJ-FERI」イニシアティブ(2024年合意)で、受入企業負担への移行指針が示され、コスト構造の透明化が進められています。
失踪問題
令和5年の技能実習失踪者9,753人のうちベトナム籍は5,481人(56.2%)と首位でしたが、令和6年は約3割減少しました。失踪多発送出機関への新規受入停止(令和3年)と、費用負担軽減策により改善傾向にあります。
育成就労への移行
2027年4月施行予定の育成就労制度では、ベトナムが最大の送出国として最優先協議対象となっています。育成就労MOCの締結が進めば、技能実習からのリプレース層が育成就労ルートへスムーズに橋渡しされる見込みです。
他の主要送出国との比較
| 項目 | ベトナム | インドネシア | ミャンマー |
|---|---|---|---|
| 在日労働者数 | 605,906人(1位) | 5位(伸び率+34.6%) | 約16万人(伸び率+42.5%) |
| 主な所管 | MOLISA/DOLAB | KemenP2MI(旧BP2MI) | MOLIP |
| 特定技能MOC | 2019年7月 | 2024年6月更新 | 2024年3月更新 |
| 主要産業 | 製造・建設・農業 | 介護・食品・農業 | 介護中心 |
| 特徴 | 累計数で圧倒的シェア | 急増中、現地完結ルート | 軍政下の出国規制が課題 |
ベトナムは累計シェアで他国を圧倒しますが、近年は伸びが落ち着き、インドネシア・ミャンマーが急伸して市場のバランスが変化しています。受入企業は単一国への過度な依存を避け、複数送出国を戦略的に組み合わせる「ポートフォリオ採用」が一般化しつつあります。
よくある質問(FAQ)
Q. ベトナム人材を採用する際、どの送出機関を選べばよいですか?
A. DOLAB承認の「推薦者表」に掲載されている送出機関のみが日本向け送出を行えます。承認状況はDOLABの公式リストで確認できます。
承認の有無に加え、過去の失踪率・手数料水準・日本語教育の品質を比較することが重要です。監理団体・登録支援機関を経由する場合は、その機関が複数の現地送出機関と実地で関係を築いているかを確認すると、採用の質と継続性が高まります。
Q. ベトナム人材の手数料負担は今後どうなりますか?
A. 2024年のVJ-FERI合意以降、受入企業負担への移行が政策的に進められています。育成就労制度施行(2027年4月1日)に向け、本人負担の上限規制も検討されています。
過去のような「本人借金70万円」モデルは、コンプライアンス重視の企業から敬遠される流れにあります。長期的には受入企業がコストを内部化し、来日後の早期失踪リスクを下げる方向が主流となるでしょう。
Q. ベトナム人の失踪はなぜ多いのですか?
A. 主な要因は来日前の高額借金、賃金期待とのギャップ、SNSを通じた他現場の情報入手、そして失踪後の闇雇用ネットワークの存在です。借金返済プレッシャーが最大の要因とされています。
近年は手数料軽減・受入後のサポート強化により失踪率は減少傾向にありますが、受入企業側でも入社後早期に生活相談・賃金見通しの丁寧な説明を行うことが効果的です。多言語の労務相談窓口(JP-MIRAIアシスト等)の周知も重要です。
Q. ベトナムとのEPAはありますか?
A. はい、平成26年度(2014年度)から看護師・介護福祉士候補者の受入れが開始されています。累計で看護師候補者275名、介護福祉士候補者1,669名(2025年度時点)が来日しています。
EPA枠と特定技能・育成就労枠は別ルートで並走しており、介護分野ではEPA・特定技能・身分系・技能実習を組み合わせた多層的な受入が行われています。EPAの窓口はJICWELS(国際厚生事業団)に一本化されています。
Q. ベトナム人材の育成就労MOCはいつ締結されますか?
A. currentDate時点(2026年5月)では正式締結は公表されていませんが、最大送出国であるベトナムは最優先の協議対象とされており、2026〜2027年にかけての締結が見込まれます。
監理支援機関の許可申請受付は2026年4月15日に開始済、育成就労計画認定の申請受付は2026年9月1日開始予定であり、これらに合わせてMOC交渉が加速する見通しです。受入企業は外国人技能実習機構・出入国在留管理庁の発表を定期的に確認することが推奨されます。