用語集 技能実習関連

技能移転ぎのういてん

技能移転とは?

技能移転とは、開発途上地域(主にアジアの送出国)から外国人技能実習生を受け入れ、日本で培われた技能・技術・知識を当該国に移転することにより、その国の経済発展を担う「人づくり」(人材育成)に協力するという、技能実習制度の根幹概念です。

技能実習法(平成28年法律第89号)第1条は「人材育成を通じた開発途上地域等への技能、技術又は知識の移転による国際協力の推進を図ることを目的とする」と規定し、技能移転を制度の唯一の法目的として位置づけてきました。

技能実習法第3条第2項では「技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」と明記され、技能移転を担保する歯止めとなってきました。しかし、2024年6月14日成立・21日公布の法改正により技能実習制度は廃止され、2027年4月1日から育成就労制度に移行します。

育成就労法では、制度目的が「人材育成と人材確保」に転換され、「技能移転による国際協力」という制度目的は法律上廃止されることとなりました。「技能移転」は技能実習制度を理解する上で不可欠な概念で、新制度移行に伴う制度趣旨の根本転換を理解する鍵となります。

具体的な意味・内容

技能実習法第1条の目的規定

技能実習法第1条は「技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護を図り、もって人材育成を通じた開発途上地域等への技能、技術又は知識の移転による国際協力の推進を図ることを目的とする」と規定しています。技能移転は単なる手段ではなく、法律の唯一の目的として法定された中核概念です。

対象職種の限定

技能実習の対象職種は「技能移転の観点から一定の技能水準を要する作業」に限定されており、清掃のみ・包装のみ等の補助的作業(単純労働)は対象外と整理されてきました。これは「人づくり」を目的とする技能移転の趣旨を反映した制度設計です。

「労働力需給調整に用いない」原則

技能実習法第3条第2項は「労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」と明記しています。技能移転による国際協力という建前を支える歯止め原則ですが、現場実態では建前と実態の乖離が長年指摘されてきました。

ODA(政府開発援助)との関連

技能実習制度の建前は「ODAの精神に通ずる国際協力」と位置づけられてきました。実態としてはJICAが直接実施する技術協力(ODA本体)とは別ルートですが、「人材育成を通じた国際貢献」という政策的位置づけにおいてODAと思想的に連続する制度として説明されてきました。

関連する制度・技能習得の段階

項目内容
技能実習1号(1年)技能等の修得/基礎級または初級評価試験合格
技能実習2号(2〜3年目)技能等の習熟/3級相当の実技合格
技能実習3号(4〜5年目)技能等の熟達/2級相当の実技合格目標
2号→3号移行時1ヶ月以上の一時帰国が義務(技能移転の確認機会)
修了後原則として母国に帰国し修得技能を活用
OTIT帰国後フォローアップ調査毎年度実施/対象6か国(ベトナム・中国・インドネシア・フィリピン・タイ・カンボジア)
主要送出国(2024年)ベトナム約40.6%・インドネシア約26.1%・フィリピン約9.3%・中国約5.6%
関連機関JITCO(公益財団法人国際人材協力機構)/OTIT(外国人技能実習機構)
育成就労施行2027年4月1日(技能実習制度は廃止)
育成就労の目的人材育成と人材確保(技能移転概念は法律上廃止)

実務上の注意点

建前と実態の乖離問題

「人材育成を通じた国際貢献」という建前と、現場で機能していた「安価な労働力確保の抜け道」という実態の乖離が長年指摘されてきました。米国国務省「人身取引報告書」での指摘、国連各種機関による「債務奴隷型の状況」との批判、賃金未払い・長時間労働・暴行・パスポート取上げ・移動の自由制限等の人権侵害事例の常態化が問題化していました。

2024年6月の法改正

2024年6月14日成立・21日公布の法改正により、技能実習制度は廃止され、新たな在留資格「育成就労」が創設されました。技能実習法は「育成就労法」に改題・抜本改正され、施行日は2025年9月26日の閣議決定で2027年4月1日に決定しました。OTITは外国人育成就労機構に改組されます。

育成就労制度への目的転換

育成就労制度の法目的は「人材育成と人材確保」へと根本的に転換され、「技能移転による国際協力」という制度目的は法律上廃止されます。これにより「人手不足分野の労働力確保」が正面から目的として位置づけられることになります。在留期間は原則3年(特定技能1号への移行前提)、転籍が1〜2年経過後に本人意向で可能となる等、運用も大きく変わります。

経過措置と移行

2027年3月31日までに開始された技能実習は、修了まで現行制度で実施可能(経過措置)です。2号→3号移行も施行後可能で、技能実習3号は最長5年のため概ね2030年頃まで両制度が併存します。受入機関は経過措置期間中の運用と新制度への移行準備を計画的に進める必要があります。

関連用語との違い

項目技能移転(技能実習)人材育成と人材確保(育成就労)人材確保(特定技能)
制度目的人材育成を通じた国際協力人材育成+人材確保人手不足分野の人材確保
根拠法令技能実習法1条育成就労法入管法
労働力需給調整禁止(建前)容認容認
在留期間最長5年原則3年1号5年/2号無制限
転籍原則不可1〜2年経過後可能転職可
修了後原則帰国・本国で活用特定技能1号への移行前提長期就労可

技能移転は技能実習制度の根幹概念ですが、2027年4月の育成就労制度施行により法律上の制度目的としての位置づけを終えます。育成就労・特定技能では「人材確保」が正面から目的として位置づけられ、制度趣旨が根本的に変化します。

よくある質問

Q. 技能移転の概念は2027年以降どうなりますか?

A. 育成就労制度では「技能移転による国際協力」という制度目的は法律上廃止されます。法目的は「人材育成と人材確保」に転換されます。

育成就労制度でも特定技能への移行のための技能習得評価は継続するため、技能習得自体は引き継がれますが、「国際協力としての技能移転」という思想は法目的から外れることになります。

Q. 「労働力需給調整に用いない」原則とは何ですか?

A. 技能実習法第3条第2項に基づき、技能実習を「安価な労働力の確保」に流用することを禁止する原則です。

技能移転による国際協力という建前を支える歯止めですが、現場実態との乖離が長年指摘されてきました。育成就労制度では労働力確保が正面から目的化されるため、この原則は廃止されます。

Q. 帰国後の技能活用はどう確認されますか?

A. 外国人技能実習機構(OTIT)が毎年度「帰国後フォローアップ調査」を実施しています。

ベトナム・中国・インドネシア・フィリピン・タイ・カンボジアの6か国の帰国予定者を対象に、帰国後の就業状況・修得技能の活用状況・帰国後支援実態等を調査しています。技能活用率の低さが制度の問題点の一つとして指摘されています。

Q. ODAとの関係はどうなっていましたか?

A. 技能実習制度の建前は「ODAの精神に通ずる国際協力」とされてきましたが、JICAが直接実施する技術協力(ODA本体)とは別ルートでした。

「人材育成を通じた国際貢献」という政策的位置づけにおいてODAと思想的に連続する制度として説明されていました。育成就労制度移行後は、国際協力の文脈での「人づくり」要素はODA・JICAの技術協力本体に戻る形となります。

参考資料

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