不法就労とは?
不法就労とは、外国人が出入国管理及び難民認定法(入管法)に違反して日本国内で就労する行為の総称です。
日本で働くには在留資格に応じた就労許可が必要で、在留資格がない・資格に認められた業務の範囲を超える・そもそも就労が認められない資格で働くといった場合に不法就労となります。
違反すると外国人本人は刑事罰と退去強制の対象となり、雇用した側も不法就労助長罪で処罰されます。
令和6年(2024年)には入管法違反により退去強制手続等を執られた外国人18,908人のうち、実に14,453人(76.4%)が不法就労を認められました。地域別では関東が全体の76.7%を占め、国籍別ではベトナムが37.0%と最多です。
2024年6月の入管法改正で不法就労助長罪の罰則が5年以下の懲役または500万円以下の罰金に厳罰化され、企業の管理責任がより強く問われる時代となっています。
具体的な意味・内容
不法就労は大きく3つの類型に分類されます。それぞれ該当する状況が異なり、外国人本人・雇用主ともに注意すべきポイントが異なるため、類型ごとの理解が重要です。
① 不法滞在者による就労
在留資格を持たない不法滞在者や在留期限が切れたオーバーステイの外国人による就労です。不法入国者・不法上陸者・不法残留者が含まれ、就労の事実が判明した時点で退去強制の対象となります。最も悪質性が高い類型とされ、厳しい処罰の対象です。
② 就労が認められない在留資格での就労
短期滞在・留学・家族滞在・文化活動など、就労が原則禁止されている在留資格で働くケースです。留学生や家族滞在者が資格外活動許可を得ずにアルバイトした場合もこの類型に該当し、入管法違反となります。資格外活動許可があれば週28時間以内の就労が可能ですが、それを超える就労も違法です。
③ 資格の範囲を超える就労(資格外活動)
技人国ビザでコンビニ店員として働く、技能ビザの料理人がIT業務を行うなど、在留資格で認められた業務範囲を超えた就労です。就労系の在留資格は職種ごとに認められた業務範囲が限定されているため、資格外活動許可なく別業種で働くと違反となります。最も件数が多いとされる類型です。
関連する法律・罰則
不法就労は外国人本人と雇用主の双方が処罰の対象となります。特に2024年6月の入管法改正で雇用主への罰則が大幅に強化されたため、企業は外国人雇用管理の徹底が不可欠です。
| 外国人本人(不法入国) | 3年以下の懲役または300万円以下の罰金(併科あり)+退去強制 |
|---|---|
| 外国人本人(資格外活動) | 1年以下の懲役または200万円以下の罰金(併科あり)+退去強制事由 |
| 雇用主(不法就労助長罪) | 5年以下の懲役または500万円以下の罰金(併科あり)※2024年改正で厳罰化 |
| 両罰規定 | 違反した従業員本人だけでなく法人にも罰金刑が科される(入管法第76条の2) |
| 退去強制後の上陸拒否 | 初めての退去強制で5年間の上陸拒否。複数回の場合は10年 |
雇用主側の「不法就労助長罪」は入管法第73条の2に規定されており、2024年6月14日施行の改正で罰則が大幅に引き上げられました。重要な特徴として、知らなかったとしても過失(注意義務違反)がある限り処罰を免れません。
在留カードの確認を怠ったり、偽造書類を見抜けなかった場合でも、通常払うべき注意を怠ったと判断されれば有罪となります。
実務上の注意点
不法就労を防止するために、外国人本人・雇用主の双方が実務上留意すべき点があります。特に雇用主は採用時と雇用中の継続的なチェックが必要です。
在留カードの確認徹底
雇用主は採用時に在留カードの原本を確認し、在留資格・在留期間・就労制限の有無を必ずチェックします。出入国在留管理庁の「在留カード等番号失効情報照会」サービスを活用して、カードが有効かを確認することも推奨されます。コピーやスキャンだけでの確認は不十分です。
在留期限の管理
在留期限が切れた外国人を働かせ続けると、オーバーステイによる不法就労の幇助となります。入社時の在留期限を管理し、期限の1〜2ヶ月前から更新状況を確認するシステムが必要です。在留資格の変更許可申請中の特例期間中は就労可能ですが、許可が出ない場合は即時就労停止の判断が求められます。
業務内容と在留資格のマッチング
在留資格で認められた業務範囲を超える仕事をさせると資格外活動違反となります。採用時だけでなく、配置転換や業務変更の際にも資格適合性を再確認することが重要です。技人国ビザの外国人をレジ係に配置換えするなどのケースは典型的な違反例です。
外国人雇用状況届出
外国人を雇用または離職させた場合は、ハローワークへの「外国人雇用状況届出」が義務付けられています。届出を怠ると30万円以下の罰金の対象となります。届出により不法就労の早期発見と外国人雇用管理の適正化が図られています。
関連用語との違い
不法就労と類似する用語として「資格外活動違反」「不法滞在」「不法就労助長」があります。それぞれ意味や法的位置づけが異なるため、違いを整理して理解することが重要です。
| 比較項目 | 不法就労 | 資格外活動違反 | 不法滞在 | 不法就労助長 |
|---|---|---|---|---|
| 主体 | 外国人本人 | 外国人本人 | 外国人本人 | 雇用主・仲介者 |
| 内容 | 就労行為全般 | 認められた業務範囲を超える就労 | 在留資格なしの滞在 | 不法就労をさせた行為 |
| 処罰 | 1〜3年以下の懲役等 | 1年以下の懲役・200万円以下の罰金 | 3年以下の懲役等 | 5年以下の懲役・500万円以下の罰金 |
「不法就労」は外国人の就労行為全般を指す広い概念で、資格外活動違反はその一類型、不法滞在は在留資格自体がない状態を意味します。「不法就労助長」は外国人を雇う側の行為で、不法就労と対になる雇用主向けの刑罰です。
企業はこれらすべての用語と関連するリスクを理解した上で、適正な外国人雇用管理を行う必要があります。
よくある質問
Q. 留学生のアルバイトは不法就労になりますか?
A. 資格外活動許可を取得していれば、週28時間以内のアルバイトが可能です。許可を受けずに働いた場合や、週28時間を超えて働いた場合は不法就労となります。
また、風俗営業等の業種でのアルバイトは資格外活動許可があっても禁止されており、違反すると即退去強制の対象となります。留学生を雇用する際は、資格外活動許可の有無・勤務時間の管理・業種の適合性を厳格にチェックすることが不可欠です。
Q. 知らずに不法就労者を雇ってしまった場合も罰せられますか?
A. 知らなかったとしても、過失(注意義務違反)がある限り処罰を免れません。入管法第73条の2第2項には「過失がないとき」は処罰されないとの免責規定がありますが、実務上「過失がない」と認められるケースは限定的です。
在留カードの確認を怠った、偽造書類を見抜けなかったなどは通常は過失ありと判断されます。免責を受けるには、通常払うべき注意をすべて尽くしたことを立証する必要があり、在留カードの原本確認・番号の失効照会などが最低限の対策です。
Q. 不法就労で退去強制された外国人は再来日できますか?
A. 初めて退去強制された場合は5年間日本への上陸が拒否されます。2回目以降の退去強制の場合は10年間となります。一定の重大犯罪に関与した場合は永久的な上陸拒否になることもあります。
上陸拒否期間の経過後、通常の査証申請を行うことで再来日は可能となりますが、過去の退去強制歴は審査に大きく影響します。日本人配偶者・子の扶養などの人道的理由があれば上陸特別許可が認められる場合もあります。
Q. 不法就労助長罪の厳罰化はいつから適用されますか?
A. 2024年6月14日の入管法改正で厳罰化が規定され、施行後の違反行為から新しい罰則(5年以下の懲役・500万円以下の罰金)が適用されます。施行前の違反については旧罰則(3年以下の懲役・300万円以下の罰金)が適用されます。
厳罰化により企業の外国人雇用管理の重要性が一段と高まっており、行政書士・社会保険労務士への相談や、採用フローの見直しを行う企業が増えています。罰則強化は雇用主責任の明確化を示すものであり、雇用開始前の徹底確認が必須となっています。