用語集 在留手続き・入管関連

入管法違反にゅうかんほういはん

入管法違反とは?

入管法違反とは、出入国管理及び難民認定法(入管法)に定められた義務・禁止事項に反する行為の総称です。

外国人本人の不法入国・不法残留・資格外活動などの違反と、受入企業側の不法就労助長罪・届出義務違反などの違反に大別されます。違反内容に応じて退去強制手続の対象となるほか、拘禁刑や罰金などの刑事罰が科されることもあります。

出入国在留管理庁の統計によれば、令和6年(2024年)中に入管法違反等により退去強制手続または出国命令手続の対象となった外国人は18,908人で、うち不法就労が認定された者は14,453人に上ります。

違反者の摘発は外国人本人だけでなく、雇用した事業主や仲介者にも及び、企業にとって重大な経営リスクとなる点が特徴です。

具体的な意味・内容

入管法違反には多様な類型がありますが、実務上しばしば問題となる代表的な違反は以下のとおりです。

いずれも退去強制事由(入管法24条)または刑事罰の対象となり、両方同時に適用されるケースも少なくありません。

不法入国・不法上陸

有効な旅券・査証を持たずに日本に入国する、偽造旅券を使用して入国する、上陸審査で虚偽申告する、上陸許可を受けずに本邦へ上陸するなどの行為です。密航や、上陸拒否期間中の再入国試行もこの類型に含まれます。

不法残留(オーバーステイ)

在留期間の更新・変更を受けずに期間を過ぎて日本に在留する、または在留資格を取り消されたにもかかわらず出国せず在留する行為です。入管法違反の中で最も件数が多く、退去強制の典型例です。時効がなく、何年経過しても摘発・処罰の対象となります。

資格外活動違反

在留資格で認められた活動の範囲を超える収益活動を行う行為です。留学生が資格外活動許可(原則週28時間)の上限を超えて就労するケース、家族滞在の外国人が許可なくフルタイムで働くケースなどが該当します。違反が専従的と評価されると重い罰則が科されます。

不法就労助長罪

不法就労と知りながら、または不注意により外国人を就労させた事業主・仲介者が問われる犯罪です。入管法73条の2に基づき、在留カードを確認せず雇用した場合など「過失」による違反も処罰対象となります。

届出義務違反

住居地の変更、所属機関(勤務先・学校)の変更、氏名・国籍・生年月日の変更などを14日以内または3ヶ月以内に届け出ない行為です。20万円以下の罰金のほか、在留資格取消事由にも該当します。

虚偽申請

在留資格認定証明書交付申請・変更申請・更新申請・永住許可申請等で、虚偽の職歴・学歴・婚姻関係などを記載したり、偽造書類を提出したりする行為です。発覚すると過去に遡って許可が取消される可能性があります。

関連する法律・罰則

入管法違反に対する罰則は、2025年6月1日施行の改正刑法により、従来の「懲役」「禁錮」が「拘禁刑」に一本化されています。

また、2024年成立の改正入管法により、不法就労助長罪は2026年6月14日施行予定で大幅に厳罰化される見通しです。両罰規定(76条の2)により、個人だけでなく法人も処罰対象となります。

違反類型根拠条文罰則(現行)
不法入国・不法上陸入管法70条1項1号・2号3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金(併科あり)
不法残留(オーバーステイ)入管法70条1項5号3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金(併科あり)、時効なし
資格外活動(専従的)入管法70条1項4号3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金(併科あり)
資格外活動(単純)入管法73条1年以下の拘禁刑又は200万円以下の罰金
不法就労助長罪(現行)入管法73条の23年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金(併科あり)
不法就労助長罪(2026年6月14日施行予定)入管法73条の2(改正後)5年以下の拘禁刑又は500万円以下の罰金(併科あり)
届出義務違反入管法71条の3等20万円以下の罰金
虚偽申請入管法74条の61年以下の拘禁刑又は200万円以下の罰金

刑事罰に加えて、違反者は退去強制手続の対象となります。退去強制された場合は原則5年間(再犯は10年、薬物関連等は無期限)の上陸拒否期間が設定されます。

不法就労助長罪は、個人の代表者・従業員が処罰されるだけでなく、両罰規定により法人にも同額の罰金が科される可能性があるため、企業ガバナンスの観点からも重大です。

実務上の注意点

受入企業は「知らなかった」では責任を免れられません。雇用前・在留期間更新時の確認を徹底することが必須です。

また、外国人本人は違反状態に気付いた時点で早期に自主出頭することで、退去強制ではなく出国命令制度の利用が可能となり、上陸拒否期間を1年に短縮できる場合があります。

在留カード確認の徹底

外国人を雇用する前に在留カードの表裏を確認し、在留資格・在留期間・就労制限の有無を記録します。出入国在留管理庁の「在留カード等番号失効情報照会」を使えば、偽造・失効カードのチェックも可能です。確認を怠ると過失責任を問われます。

届出義務の代行サポート

所属機関変更届や住居地変更届は本人の義務ですが、実務上は受入企業が案内・代行支援を行うのが一般的です。届出漏れは企業の管理責任不十分と評価される場合があります。

違反発覚時の自主出頭

外国人本人に不法残留等の違反がある場合、違反調査開始前または認定通知書受領前に自ら出入国在留管理官署へ出頭すれば、出国命令制度の対象となり得ます。この場合、収容されずに出国でき、上陸拒否期間も1年に短縮されます。

法人両罰規定のリスク

入管法76条の2により、代表者・従業員が違反行為を行った場合、法人にも同額の罰金が科されます。コンプライアンス体制(雇用時チェックリスト、定期的な在留状況確認、研修の実施)の整備が求められます。

行政処分の併発

入管法違反は刑事罰に加え、雇用主には労働基準法違反・不法就労助長への追加指導、許認可事業者には許可取消、登録支援機関には登録取消など行政処分が併科されることがあります。違反発覚時は弁護士・行政書士等の専門家への早期相談が重要です。

関連用語との違い

入管法違反という概念はやや広範囲を指す用語で、個別の違反行為や退去手続との関係を整理しておくと混乱が避けられます。

以下の用語はいずれも入管法違反と関連しますが、意味が異なります。

用語意味法的性質
入管法違反入管法に違反する行為の総称違反行為自体を指す概念
退去強制違反外国人を国外に強制送還する行政処分行政処分(入管法24条)
出国命令制度自主出頭した不法残留者を簡易手続で出国させる制度行政処分(退去強制の簡易版)
不法滞在不法入国・不法上陸・不法残留の総称違反類型を指す用語
不法就労在留資格に反する形で就労する行為違反類型の一つ
在留資格取消虚偽申請・活動不履行等により在留資格を取消す処分行政処分(入管法22条の4)

「入管法違反」は違反行為そのものを指す概念であり、これに対して退去強制・出国命令・在留資格取消はいずれも違反に対する法的対応を指します。

刑事罰(拘禁刑・罰金)と行政処分(退去強制・在留資格取消)は別個のもので、同時並行で進むケースが多い点にも注意が必要です。

よくある質問

Q. 「知らずに」外国人を雇用してしまった場合も処罰されますか?

A. 入管法73条の2は「過失により不法就労させた者」も処罰対象としており、「知らなかった」だけでは免責されません。

在留カードを確認しなかった、偽造カードを見抜けなかったなど、通常の注意義務を果たしていない場合は過失認定される可能性が高くなります。雇用時・更新時の在留カード確認と記録保存が、過失否定のための基本的な防御策です。

Q. 不法残留に時効はありますか?

A. 入管法上の不法残留は継続犯として扱われ、不法残留の状態が続いている限り時効が進行しません。つまり、何年経過しても出国・摘発まで責任を問われる状態が継続します。

特例として、在留特別許可が認められれば正規の在留資格が付与されますが、これは法務大臣の裁量によるものであり、一定の期間経過をもって自動的に違反状態が解消されるものではありません。

Q. 退去強制された後、日本に戻ることはできますか?

A. 退去強制された者は原則として退去強制日から5年間、日本への上陸が拒否されます。過去に退去強制・出国命令の前歴がある者は10年、薬物犯罪等では無期限となります。日本人配偶者や実子との関係など特別な事情があれば「上陸特別許可」の申請が可能ですが、入国は厳しく制限されます。

自主出頭による出国命令制度を利用した場合は上陸拒否期間が1年に短縮されるため、違反に気付いた時点で早期対応することが重要です。

Q. 受入企業が違反に関与した場合、会社全体が処罰されますか?

A. 入管法76条の2の両罰規定により、違反行為者(代表者・従業員等)が処罰されるだけでなく、法人にも同額の罰金が科される可能性があります。

2026年6月14日施行予定の改正後は、法人に対しても5年以下の拘禁刑相当の重さとなる500万円以下の罰金が科され得ます。取引停止・信用毀損・許認可取消など派生的リスクも大きく、コンプライアンス体制の整備が不可欠です。

Q. 違反に気付いたとき、外国人本人はどのように対応すべきですか?

A. 不法残留など違反状態に気付いたら、速やかに出入国在留管理官署へ自主出頭することを推奨します。

違反調査開始前または認定通知書受領前の自主出頭であれば、出国命令制度(収容されず、上陸拒否期間1年)の対象となり得ます。日本人配偶者や実子がいる等の事情があれば、在留特別許可の可能性もあるため、出頭前に弁護士・行政書士に相談することが望ましいです。

参考資料

用語集
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