用語集 在留手続き・入管関連

上陸拒否事由じょうりくきょひじゆう

上陸拒否事由とは?

上陸拒否事由とは、出入国管理及び難民認定法(入管法)第5条に列挙される、外国人の日本への上陸を拒否する理由となる事項の総称です。公衆衛生・公の秩序・治安の維持を目的として、入国を認めない類型が明記されており、有効なビザを所持していてもこれらに該当すると空港等の上陸審査で入国を認められません。

上陸拒否事由は大きく5つの類型に分けられ、感染症患者・犯罪歴・退去強制歴・公安を害するおそれがある者などが対象となります。ただし、日本人配偶者との婚姻や人道上の事情がある場合は、上陸特別許可(入管法第12条)により例外的に入国が認められることもあります。

通常の退去強制歴で5年、複数回の違反で10年、重大犯罪を伴う場合は無期限の上陸拒否となります。

具体的な意味・内容

入管法第5条は、5つの観点から上陸拒否事由を定めています。それぞれの事由に該当すると日本への上陸が認められず、空港等で上陸拒否となります。

保健・衛生上の問題がある者

感染症法に定める一類感染症・二類感染症・新型インフルエンザ等感染症・指定感染症の患者や新感染症の所見がある者が対象です。エボラ出血熱、結核、新型コロナウイルス(過去指定時)などが具体例です。精神上の障害により判断能力等を欠く状態の者も一定条件で該当する場合があります。

反社会性が強いと認められる者

日本国または外国の法令に違反して1年以上の懲役・禁錮(またはこれに相当する刑)に処せられたことのある者(政治犯罪を除く)、麻薬・大麻・覚醒剤・あへんなどの薬物関連法違反者、売春や人身取引に関連する業務従事者、銃砲刀剣類の不法所持者などが該当します。重大犯罪履歴は無期限の上陸拒否事由となります。

過去に退去強制を受けた者

日本から退去強制を受けた者や、自主出国した者は一定期間日本への上陸が拒否されます。初めての退去強制で5年2回目以降は10年の上陸拒否期間が設定されます。自主的な出国命令による出国の場合は1年に短縮される特例もあります。

日本国の利益・公安を害するおそれがある者

テロリスト・国際テロ組織のメンバー、日本国を暴力で破壊することを企てる者・支援する者、暴力団関係者、日本の公安を害するおそれがあると法務大臣が認める者などが対象です。国家の安全保障に関わる事由で、裁量の範囲が広い規定となっています。

相互主義に基づき上陸を認めない者

日本国民の上陸を拒否する国の国民で、その拒否が日本人に対する差別であると認められる場合、相互主義の原則に基づいて日本側も当該国民の上陸を拒否できる規定です。実務的に適用されるケースは限定的ですが、国際関係上の重要な枠組みとして残されています。

関連する法律・上陸拒否期間

上陸拒否事由ごとに拒否される期間が異なります。違反の重大性に応じた期間設定となっており、通常は5〜10年、重大犯罪では無期限となる場合もあります。

上陸拒否1年自主的に出国命令により出国した者(オーバーステイのみで他の違反なし)
上陸拒否5年通常の退去強制(初回)、過去に刑の執行を受けた軽微な違反歴など
上陸拒否10年2回目以降の退去強制、複数回のオーバーステイ歴がある者
上陸拒否無期限1年以上の懲役・禁錮を受けた者、薬物関連法違反者、売春・人身取引関連違反者、銃砲刀剣不法所持者など

無期限の上陸拒否は事実上一生涯日本に入国できないことを意味します。ただし、上陸特別許可(入管法第12条)の適用により、法務大臣の裁量で例外的に入国が認められる場合があります。

日本人との婚姻、子の養育、人道的事情などが考慮される要素となります。

実務上の注意点

上陸拒否事由への該当は、ビザ取得や入国審査で大きな影響を与えます。該当者本人・受入企業・配偶者などそれぞれの立場で知っておくべきポイントがあります。

ビザ申請時の自己申告

ビザ(査証)申請書には過去の犯罪歴・退去強制歴・渡航歴などを記入する欄があり、正直な申告が求められます。虚偽申告が発覚すると、仮にビザが発給されても将来的に在留資格取消や上陸拒否につながる可能性があります。

上陸特別許可の活用

過去に退去強制歴や犯罪歴がある場合でも、上陸特別許可により入国できる可能性があります。日本人配偶者との婚姻、日本に子がいる、医療上の特別な理由など、人道的事情がある場合は申請を検討する価値があります。理由書で事情を詳しく説明することが重要です。

雇用主の確認義務

外国人を雇用する企業は、採用候補者の過去の入管法違反歴をヒアリングで確認することが推奨されます。本人が事実を隠していた場合、採用後に在留資格が下りない・取り消されるなどのトラブルが発生する可能性があります。

空港での上陸拒否対応

空港で上陸拒否となった場合、口頭審理を請求することで理由の確認と反論の機会が与えられます。その後の法務大臣への異議申出で上陸特別許可が認められる可能性もあるため、即座に弁護士・行政書士への相談が推奨されます。

関連用語との違い

上陸拒否は退去強制や在留資格取消と関連しますが、適用タイミングや性質が異なります。それぞれの違いを整理することが重要です。

比較項目上陸拒否退去強制在留資格取消
タイミング入国時(空港等)日本在留中日本在留中
対象入管法5条該当者入管法24条該当者入管法22条の4該当者
処分内容入国拒否強制退去・送還在留資格の取消
救済措置上陸特別許可在留特別許可意見聴取・異議申立
根拠法入管法第5条入管法第24条入管法第22条の4

上陸拒否は入国前の水際対策、退去強制は日本在留中の違反者に対する強制退去、在留資格取消は在留資格そのものの無効化という異なる段階での処分です。

それぞれに対応する救済措置(上陸特別許可・在留特別許可・意見聴取)が設けられており、適正手続きが保障されています。

よくある質問

Q. 軽微な交通違反でも上陸拒否になりますか?

A. 原則として1年以上の懲役・禁錮に処せられた刑罰が対象となります。罰金刑や軽微な違反の場合は上陸拒否事由には該当しません。スピード違反などの軽微な交通違反だけで上陸を拒否されることはありません。

ただし、薬物関連法違反は刑の長さに関わらず上陸拒否事由となります。大麻所持などは本国で合法でも、日本の入管法上は問題となるため注意が必要です。申請時には軽微でも含めて正直に申告することが推奨されます。

Q. 上陸拒否期間が経過すれば自動的に入国できますか?

A. 期間経過により上陸拒否事由に該当しなくなれば、通常のビザ申請を行って審査を受けることができます。ただし自動的に入国できるわけではなく、通常の審査を通過する必要があります。

過去の違反歴は審査で不利に働くため、理由書で反省の意と現在の事情を丁寧に説明することが重要です。上陸拒否期間が経過しても入国が保証されるわけではない点に注意が必要です。

Q. 上陸特別許可はどのような場合に認められますか?

A. 日本人や永住者と婚姻している日本に子がいる医療上の必要がある長期間日本で生活していたなど、人道的配慮が必要な場合に認められる可能性があります。法務大臣の裁量判断です。

申請には婚姻証明書・子の出生証明書・医療記録・過去の在留歴など、事情を裏付ける詳細な書類が必要です。行政書士や弁護士の専門的支援を受けて申請することが推奨されます。

Q. 上陸拒否は空港で即確定しますか?

A. 空港で上陸審査官が拒否と判断した場合、本人は口頭審理を特別審理官に請求できます。さらに口頭審理でも拒否となった場合、法務大臣への異議申出が可能で、3段階の救済手続きが設けられています。

空港で即日出国となるケースもありますが、人道的事情がある場合は各段階で上陸特別許可の可能性が検討されます。手続き中は空港内の収容施設に留め置かれる場合があるため、事前の準備と弁護士との連絡体制が重要です。

参考資料

用語集
お問い合わせ 03-5772-7338平日(10:00~19:00)
LINE