渡航費用分担とは?
2027年4月1日施行予定の育成就労制度において、外国人材の来日・帰国時の渡航費用(航空券・関連費用)の負担ルールを定めた制度です。
技能実習時代に問題視された「外国人本人が高額な渡航費用を借金で賄い、債務労働状態になる」事例を構造的に解消するため、原則として企業側が負担する仕組みに統一されました。
具体的には、単独型育成就労では受入機関(育成就労実施者)が、監理型育成就労では監理支援機関が渡航費用を負担します。一時帰国(年次有給休暇行使、公的手続き等)の旅費も同様に、企業側が負担します。
送出費用の上限規制(月給2か月分)と組み合わせ、外国人本人が過度な債務を負わずに来日できる仕組みです。
具体的な意味・内容
単独型での渡航費用負担
単独型育成就労(受入機関が直接外国人と雇用契約を結ぶ形式)では、受入機関(育成就労実施者)が渡航費用を負担します。航空券代・空港使用料・関連事務費用等が含まれます。
送出機関を経由しない直接受入のため、受入機関の責任範囲が明確です。
監理型での渡航費用負担
監理型育成就労(監理支援機関を介して受入機関と雇用契約を結ぶ形式)では、監理支援機関が渡航費用を負担します。育成就労外国人の大多数は監理型受入となるため、本ルールの適用対象が広範です。受入機関と監理支援機関の費用分担は監理委託契約で定めることが一般的です。
一時帰国の旅費
年次有給休暇の行使、本国での公的手続き等のための一時帰国の旅費も、単独型では受入機関、監理型では監理支援機関が負担します。
農業・漁業など季節性のある分野では、閑散期に最長6か月の一時帰国が認められており、その旅費も企業側負担です。
送出費用上限との関係
送出機関が外国人から徴収できる費用は日本で受け取る月給(基本給)の2か月分が上限と規制されています。上限を超える費用が必要となる場合は、超過分を受入機関または監理支援機関が負担する仕組みです。外国人本人の過度な金銭負担が構造的に防止されます。
関連する制度・費用ルール
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠法令 | 育成就労法(令和6年法律第60号)/運用要領Q20・Q63 |
| 所管省庁 | 法務省(出入国在留管理庁)・厚生労働省 共管 |
| 単独型の負担者 | 受入機関(育成就労実施者) |
| 監理型の負担者 | 監理支援機関 |
| 一時帰国の旅費 | 同上ルールで企業側負担 |
| 送出費用上限 | 日本で受け取る月給(基本給)の2か月分 |
| 上限超過時 | 受入機関または監理支援機関が負担 |
| 農業・漁業の一時帰国 | 閑散期に最長6か月可(旅費は企業側負担) |
| 違反時の処分 | 送出機関は受入対象から除外/受入機関は計画認定取消等 |
| 送出費用相場(参考) | ベトナム約68.8万円/フィリピン約9.5万円 |
| 渡航費(航空券)相場 | 4万〜10万円程度 |
実務上の注意点
企業側の追加コスト発生
渡航費用・送出費用上限超過分・一時帰国旅費等を企業側が負担するため、技能実習時代と比較して1人あたり50万円規模の追加コストが発生する可能性が指摘されています。受入予算計画への反映が不可欠です。
送出機関との費用明細の確認
送出費用が月給2か月分上限を超えるケースでは、超過分を企業側が負担します。事前に送出機関から費用明細を取得し、上限規制の遵守状況を確認することが重要です。送出機関は徴収費用の算出基準をインターネット公表することが義務付けられています。
本人意向の転籍時の費用
本人意向の転籍時に新たな渡航費用が発生する可能性は限定的ですが、転籍先の受入機関・監理支援機関での費用負担が発生する場合があります。転籍プロセスでの追加コストの想定が必要です。
違反時のリスク
外国人本人や親族から不適切な費用徴収が判明した場合、送出機関は受入対象から除外されます。受入機関側でも、改善命令・計画認定取消・許可取消等の処分対象となります。送出機関選定時のコンプライアンス確認が重要です。
関連用語との違い
| 項目 | 渡航費用分担(育成就労) | 渡航費用(技能実習) | 渡航費用(特定技能) |
|---|---|---|---|
| 負担ルール | 企業側が原則負担(明確化) | 明確な規定なし(実態は本人負担多) | 当事者間合意(柔軟運用) |
| 送出費用上限 | 月給2か月分(明示) | 明確な上限なし | -(送出機関介在の場合のみ) |
| 一時帰国旅費 | 企業側負担 | 規定なし(実態本人負担多) | 当事者間合意 |
| 違反時の処分 | 送出機関の受入除外・計画認定取消 | 限定的 | 限定的 |
| 送出機関認定 | 必須(MOC作成国のみ) | 送出国認定(実態でMOC国) | 不要 |
技能実習時代の不透明な費用負担構造から、育成就労では企業側負担を明確化することで外国人本人の権利保護を強化する方向に転換しました。
受入機関にとってはコスト増の側面がありますが、人権配慮による持続可能な人材確保の基盤が整えられたといえます。
よくある質問
Q. 帰国費用も企業側が負担するのですか?
A. はい、育成就労の終了時の帰国費用も渡航費用分担の対象として企業側(単独型は受入機関、監理型は監理支援機関)が負担する運用です。
特定技能1号への移行時の在留資格変更で日本に継続して在留する場合は帰国費用は発生しませんが、3年経過時の移行不可・退職等で帰国する場合は企業側負担となります。
Q. 受入機関と監理支援機関で費用負担を取り決めできますか?
A. 監理型育成就労では監理支援機関が一次的に負担しますが、監理委託契約で受入機関への請求形態は柔軟に定めることができます。
実務上は監理支援機関が立替払いし、後に受入機関へ請求する運用が一般的です。ただし最終的に外国人本人に転嫁することは認められていません。
Q. 送出国によって渡航費用の相場は違いますか?
A. はい、送出国により大きく異なります。ベトナムの労働者支払い平均は約68.8万円、フィリピンは約9.5万円です。
フィリピンは国内法で出国費用徴収が禁止されているため低めです。ベトナムは送出費用が高額化しやすい構造があり、上限規制(月給2か月分)の意義が大きい送出国です。
Q. 違反した場合のペナルティは?
A. 月給2か月分上限を逸脱した送出機関は受入対象から除外されます。受入機関・監理支援機関側も改善命令・計画認定取消・許可取消の対象となります。
違反は外国人本人・親族からの相談、外国人育成就労機構の調査等で判明する可能性があります。コンプライアンス体制の整備が必須です。