育成就労法とは?
育成就労法とは、技能実習制度を廃止して新たに育成就労制度を創設するための法律です。2024年(令和6年)6月14日に成立し、同年6月21日に公布(令和6年法律第60号)されました。施行日は2027年(令和9年)4月1日に正式決定しています。
本法は従来の「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」(技能実習法)を全面改正・改称したものです。技能実習制度の目的であった「国際貢献・人づくり」から、「特定技能1号水準の人材育成」と「分野での人材確保」へと目的を明確化しました。
これに伴い新たな在留資格「育成就労」が創設され、外国人技能実習機構(OTIT)は外国人育成就労機構へと改組されます。
制度の背景
技能実習制度は1993年の創設以来、国際貢献を目的としつつ実質的な労働力受入の側面が強まり、保証金徴収・違約金契約・人権侵害等の問題が国内外から批判されてきました。これを抜本的に見直すため、政府は2022年から有識者会議を開催し、2023年11月に最終報告書を公表。育成就労法案は2024年通常国会に提出され、令和6年6月14日に成立しました。
関係省令は2025年9月30日に公布(令和7年法務省・厚生労働省令第4号)され、許可・認定の具体的基準が明らかになりました。2025年12月には「育成就労制度の概要(令和7年12月改訂)」が公表され、2026年1月23日には分野別運用方針が閣議決定されました。
新たに「物流倉庫」「リネンサプライ」「資源循環」が育成就労の対象分野に追加され、特定技能制度とほぼ同一の対象分野となっています。
2028年度末までの5年間で特定技能と合わせ受入上限約123万人と設定されています。
主な内容と要件
① 新たな在留資格「育成就労」の創設
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 在留期間 | 最長3年(特定技能1号への移行を想定) |
| 主目的 | 特定技能1号水準の人材育成・分野での人材確保 |
| 業務区分 | 特定技能制度と統一 |
| 日本語要件 | 就労開始前にA1相当(JLPT N5等)必須/1年経過時・3年終了時にも段階的要件 |
| 本人転籍 | 同一業務区分内で一定要件下に認める(当分の間は分野により1年要件) |
育成就労は技能実習に代わる新たな在留資格で、特定技能1号への移行を前提とした人材育成型の制度設計となっています。技能実習の最大の問題点であった「原則転籍不可」が改正され、本人意向の転籍が一定要件下で認められます。
② 育成就労計画の認定制
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 認定機関 | 外国人育成就労機構 |
| 認定単位 | 外国人ごと・3年間一括 |
| 記載事項 | 育成期間・主たる技能・日本語目標・業務内容・指導体制・報酬・送出費用明細 |
| 計画変更 | 重要事項は変更認定/軽微な変更は届出制 |
| 事前申請開始 | 2026年9月1日 |
受入機関は外国人ごとに育成就労計画を作成し、外国人育成就労機構の認定を受ける必要があります。3年間一括認定により段階的認定の手間が軽減される一方、計画内容の充実度が問われます。
③ 監理支援機関の許可制(厳格化)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 許可機関 | 外国人育成就労機構 |
| 外部監査人 | 必須(弁護士・行政書士・社会保険労務士、氏名公表) |
| 取引受入機関 | 原則2社以上 |
| 債務超過 | 禁止 |
| 常勤役職員 | 2人以上+規模に応じた人員配置 |
| 許可申請開始 | 2026年4月15日(施行日前申請受付) |
旧監理団体は監理支援機関へ再編され、許可基準が大幅に厳格化されました。既存監理団体も自動移行はなく、改めて許可申請が必要です。新基準を満たさない機関は淘汰される見込みです。
立場別の実務ポイント
受入機関の対応
2027年4月の制度施行に向け、監理支援機関の選定(2026年4月15日〜許可申請開始)、育成就労計画の策定(2026年9月1日〜事前申請開始)、社内体制の整備を計画的に進める必要があります。
技能実習生として既に受け入れている外国人の育成就労への移行手続にも対応が必要です。
監理団体(旧)から監理支援機関への移行
既存監理団体は2026年4月15日から監理支援機関の許可申請を行うことができます。外部監査人の選任、取引受入機関の確保(2社以上)、人員体制の見直し等が必要です。新基準を満たさない場合は活動を終了することになります。
送出機関・送出国の対応
送出費用の上限規制(月給2か月分)への対応、費用算出基準のインターネット公表、保証金徴収・違約金契約の完全排除等が求められます。
日本側の認定送出機関リスト掲載を維持するため、送出国政府との連携も重要となります。
外国人本人の権利保護
育成就労外国人は技能実習生と異なり、本人意向の転籍が一定要件下で認められます。労働環境への不満・人権侵害等があれば、機構の相談窓口・申告制度を活用できます。育成就労外国人本人の主体的な権利行使が制度上保障される点が大きな前進です。
類似制度との比較
| 項目 | 育成就労法 | 技能実習法(廃止予定) | 入管法(特定技能) |
|---|---|---|---|
| 制度創設 | 2024年6月公布/2027年4月施行 | 2016年公布/2017年施行 | 2018年改正/2019年施行 |
| 主目的 | 人材育成・人材確保 | 国際貢献・人づくり | 人材確保 |
| 在留期間 | 最長3年 | 最長5年 | 1号5年/2号無制限 |
| 転籍 | 本人意向で可(要件あり) | 原則不可 | 転職可 |
| 日本語要件 | A1(N5)以上 | 介護以外なし | A2(N4)以上 |
| 監督機関 | 外国人育成就労機構 | OTIT | 出入国在留管理庁 |
| 不法就労罪 | 5年以下拘禁/500万円以下罰金 | 3年以下拘禁/300万円以下罰金 | 3年以下拘禁/300万円以下罰金 |
育成就労制度は技能実習制度を廃止して新設される制度ですが、育成期間中の3年を経て特定技能1号へ移行することが想定されています。技能実習よりも本人の権利保護・転籍の自由・日本語能力向上が重視され、特定技能との接続が制度設計上明確化されています。
不法就労助長罪も拘禁刑5年以下・500万円以下罰金へ厳罰化されました。
よくある質問
Q. 技能実習制度はいつ廃止されますか?
A. 育成就労法の施行日(2027年4月1日)から技能実習制度は順次廃止されます。経過措置期間中は技能実習と育成就労が併存します。
既に在留中の技能実習生は経過措置により制度切替時点まで在留が継続され、その後育成就労または特定技能への移行を検討することになります。完全移行までは数年を要する見込みです。
Q. 育成就労法の施行日は確定しましたか?
A. はい、2027年(令和9年)4月1日が政令で正式に定められました。
当初は「公布日(2024年6月21日)から3年以内」とされていましたが、政令により2027年4月1日が確定しています。受入機関・監理団体は施行日に向けた準備を進めることが重要です。
Q. 既存の技能実習生はどうなりますか?
A. 経過措置により、既存の技能実習生は当初の在留期間中は技能実習として継続できます。
育成就労への移行を希望する場合は、新たに育成就労計画の認定を受ける必要があります。育成就労機構・監理支援機関と相談しながら個別の状況に応じた手続を進めます。
Q. 育成就労外国人は家族を呼び寄せられますか?
A. 育成就労(最長3年)の在留資格では家族帯同は認められません。家族帯同は特定技能2号取得後となります。
育成就労中に特定技能1号へ移行し、さらに2号取得を目指すキャリアパスが想定されています。技能実習よりも長期的な視点での人材育成・定着が制度の特徴です。