技能実習生入国再開の現在地
1.各国待望の入国状況
日本政府は新型コロナウイルスの水際対策について、ビジネス目的の外国人に対する入国制限を、11月8日から大幅に緩和した。
これまで原則停止していた外国人新規入国が、10ヶ月ぶりに再開したことに各方面から大きな期待が寄せられ、その対象者や条件に注目が集まった。
そして、技能実習生もそれに含まれることになったことから、各国の送出機関や実習生は、歓喜に湧いた。SNS上に様々な情報が錯綜し、筆者にも送出機関数社から、期待の言葉とともに実務レベルでの情報を求められた。
現時点で、在留資格の事前認定を受けながらも足止め中の実習生は、11万人を超えると言われており、送出機関の立場からすれば、ここで一気に出国させたいという意向は理解できる。
一方、日本側の現在地としては、まだいくつかの障壁があり、入国のためにはそれらを乗り越える必要がある。
2.レジデンストラックに要件追加
まずは、入国後の待機期間の課題である。
従来の10日間から3日間に短縮されるという報道により、当初一部で誤解が生じたようだが、これは短期出張者に対するものであり、実習生については14日間が設定されている。
いわゆる「レジデンストラック」の継続で、ビジネスホテルやワンルームマンションを用意し、外出が禁止されていることから、三度三度の食事や日用品の供給も必要だ。
さらにこれまでの運用に加えて、受入企業には、活動計画書、誓約書等の提出も義務付けられた。違反行為をすると、企業名の公表、以後の受入れ不可など、ペナルティが課される可能性もある。
外国人材採用に詳しいMTG国際株式会社 代表の佐久間雄介氏によれば、費用面、運用面において様々な負担を求められることから、現段階での受入れに消極的な姿勢をみせる受入企業も散見されるという。
3.監理団体・ワクチン種類の制限も追加
次に監理団体の種別による線引きである。
監理団体は、一定の要件を満たし優良と認定された「一般監理団体」と、それ以外の「特定監理団体」に分けられるのだが、今回の対象は、「一般監理団体」が実習監理を行う場合のみとされた。日本側の事情が実習生の明暗を分ける形となってしまった。
3つ目は、ワクチンの問題である。入国には、日本が承認する欧米系三種類のうちいずれかの接種証明が必須である。
カンボジアやフィリピン等、中国・インド製ワクチンへの依存度が高い国々の実習生は、入国することができない。ベトナムにおいても、約半数は中国製ワクチンを使用していることから、対象者は半減する状態なのだ。
このように、今回の入国緩和は限定的なものであり、実習生に広く門戸が開かれる日は越年することとなった。
来年こそは、入国を待ち望んでくれている沢山の実習生をしっかりと迎え入れられる、本当の「再開」の年になることを強く願う。
(※このコラムは、ビル新聞2021年12月27日号掲載「技能実習生入国再開の知られざる実態」Vol.34を加筆転載したものです。)