最終更新:2026年10月 titp360.jp編集部
「来年の春から、育成就労で2人来てもらおう」。社長にそう言われて、何から始めればよいか迷っていませんか。育成就労は、技能実習に代わって2027年4月1日に始まる、外国人を3年かけて育てながら働いてもらう制度です。結論から言うと、4月1日に始めるには、育成就労の計画の申請を2026年11月1日までに出す必要があります。外国人を雇うのが初めての会社には、まず間に合いません。現実的な目標は、2027年の夏に始めることです。たとえば8月1日に始めるなら、申請は1月から3月1日までの間に出します。ただし、来日後に8週間以上の講習があるため、現場に立つのは秋ごろと見ておくのが安全です。
この記事では、架空の会社の例で、進める順番を追っていきます。例の会社は、地方都市でオフィスビルや病院の清掃を請け負う会社です。常勤の社員は35人で、営業所は都道府県知事の「建築物清掃業」の登録を受けています。外国人を雇うのは、技能実習も含めて今回が初めてです。今は2026年10月末。総務の担当者であるあなたが、段取りを任されました。(例は説明のための架空のものです)
申請の時期は、始める日から決まる
まず、なぜ「4月は難しい」のかを確かめましょう。育成就労では、受入企業が外国人1人ごとに「育成就労計画」を作り、認定を受けなければなりません。計画には、3年間で何を身につけてもらうか、誰が指導するか、報酬はいくらかなどを書きます。
この計画の申請は、制度が始まる前から受け付けられています。窓口の外国人技能実習機構(以下、機構)は、2026年9月1日から2027年3月31日までを、制度開始前の申請(施行日前申請)の受付期間としています。申請は、原則として育成就労を始める予定日の7か月前から5か月前までの間に出します。機構の例では、2027年6月1日に始める場合、申請は2026年11月1日から2027年1月1日までです。
同じ数え方をすると、4月1日に始めるなら申請期間は11月1日まで、残りは数日です。11月1日は日曜日なので、実際にはさらに短くなります。その数日で、このあと説明する監理支援機関、協議会、社内の担当者、来日する本人の4つをそろえるのは、すでに準備を進めてきた会社でないと難しいでしょう。なお、審査の結果は、早く出しても2027年4月1日以降に順に郵送で届きます。
ここでいう「始める予定日」は、計画に書く育成就労の開始日です。来日する日や入国後の講習をどこに置くかは、このあと出てくる監理支援機関と相談して決めます。
「もっと早く人がほしい」場合は、技能実習という別の道もあります。その比べ方は、逆算表のあとで説明します。まずは、夏の開始に向けて最初に決める相手から見ていきましょう。
最初に決めるのは監理支援機関
初めての受入企業の多くは、「監理支援機関」の支援を受ける形(監理型)で進めます。監理支援機関は、技能実習でいう監理団体にあたる組織です。会社の指導や監査をし、外国人本人の相談にも乗ります。計画も、監理支援機関の指導を受けながら作ります。
監理支援機関は許可制で、制度が始まる前の今は、まだ許可が出ていません。そのため施行日前申請では、技能実習の監理団体の許可を持ち、さらに監理支援機関の許可の申請を済ませている団体を選ぶ必要があります。許可の申請を済ませた証拠となるのが「受理票」です。計画の申請にはその写しを付けます。許可の申請をしていない団体を通した計画は受理されず、書類一式が返されます。
つまり今探すのは、「監理支援機関になる予定の監理団体」です。候補に会ったら、次の点を聞いてみましょう。
- 監理支援機関の許可の申請を済ませ、受理票があるか
- 許可の申請で、扱う仕事(取扱職種)にビルクリーニングを入れているか
- 計画づくりを指導する担当者を置いているか
- どの国の送出機関と契約しているか
- 監理支援費の内訳と金額
送出機関は、母国で人材を募集し、日本へ送り出す機関です。今は機構の仮のリストに載った機関でも申請できますが、認定の時点では正式なリストに載っている必要があります。

団体の目星がついたら、次は業界の側の準備です。
協議会への加入は、申請より前
育成就労では、受入企業に、分野ごとの協議会への加入が義務づけられています。協議会は、国が分野ごとに設ける、受入企業や業界団体などの集まりです。ビルクリーニング分野では、計画の申請より前に加入し、「構成員資格証明書」を申請書類に付けます。
加入の手続は、厚生労働省の「ビルクリーニング分野育成就労協議会」のページから行います。オンラインで申し込むと必要書類の案内がメールで届き、書類を電子で出すと、確認後に証明書がメールで届きます。加入に費用はかかりません。監理支援機関による代行は認められていないので、会社が自分で申し込みます。届くまでの日数は示されていないため、早めに済ませましょう。
もう1つの条件が、さきほどの知事登録です。外国人が働く営業所が登録を受けている必要があり、協議会の構成員資格証明書にも登録の有効期間が書かれます。登録の期限が近いと、更新後の証明書を出し直すよう求められるため、登録証の日付も確かめておきます。
なお、特定技能のための協議会とは別のものなので、取り違えないようにしましょう。
外の準備が見えてきたら、次は社内です。
社内でそろえる3つの役と人数
計画には、会社の中で育成を担う人の名前を書きます。育成全体のまとめ役になる育成就労責任者、現場で仕事を教える育成就労指導員、暮らしの相談にのる生活相談員の3つの役です。それぞれの要件を満たせば、1人が兼ねることもできます。指導員は、その仕事について5年以上の経験がある人から選びます。例の会社なら、現場をまとめるベテランの班長が指導員、総務のあなたが生活相談員といった分け方が考えられます。
3人とも、決められた講習を受けている必要があります。育成就労の講習が整うまでは、技能実習の責任者講習・指導員講習・生活指導員講習で代わりにできます。施行日前申請では、2024年4月1日以降に修了したものが必要です。日程や受け方は、監理団体に聞くと早いでしょう。
迎えられる人数にも上限があります。監理型の基本の人数枠は常勤の社員の数で決まり、31人から40人の会社なら12人までです。常勤には雇用保険に入り週30時間以上働く人などが含まれ、週30時間に満たないパートは数えません。例の会社が2人を迎えるのは、この枠に収まります。
会社が負担する費用
社長にまず聞かれるのが費用でしょう。監理支援費などの相場は公的には示されていないため、ここでは何にお金がかかり、何を本人に負担させてはいけないかを整理します。
公的な手数料は、計画の認定申請が1人6,100円です。申請の前に払い込み、取り下げても戻りません。監理支援機関に払う「監理支援費」は、職業紹介費、講習費、監査指導費、その他の経費の4種類で、団体があらかじめ用途と金額を示すことになっています。この監理支援費は、本人に直接も間接も負担させてはいけません。
報酬は、同じ仕事をする日本人と同等以上にする必要があります。試験の受験料や監理支援費がかかるからといって、報酬を下げることは認められていません。住まいは、会社か監理支援機関が確保します。寝室は原則として1人4.5㎡(畳3枚弱)以上です。食費や家賃を本人から受け取る場合は、本人が合意した実費相当の額に限られます。
来日直後の講習の間も、本人の生活を支える必要があります。食費や住居費を本人が負担する場合は、それと同じ額以上の「講習手当」を払います。見積もりは2〜3の団体からとり、監理支援費の4種類と、住まい・講習手当の扱いを並べて比べると、社長への説明もしやすくなります。
会社の準備と並行して進めるのが、来日する本人の選考です。
来日する人を選ぶときの確認
面接では、同じ仕事を母国でしていた経験は求められません。そのうえで、確認したいことが3つあります。
1つ目は、国ごとの書類です。インドネシア、カンボジア、キルギス、ベトナム、ラオスの5か国から迎える場合は、その国の公的機関が作る推薦状を、1人ずつ申請時に出す必要があります。推薦状は送出国の側でとるものなので、面接の段階で、監理支援機関と送出機関に段取りを確かめます。
2つ目は、本人が母国で払う費用です。本人が送出機関に払う費用は、名目を問わず合計で月給の2か月分までと決められています。手数料だけでなく、研修費や渡航費なども含みます。申請では、その額を申告書に書きます。
3つ目は、健康診断と日本語です。健康診断は、医師の署名がある個人票を、本人が分かる言語と日本語訳で出します。日本語は「A1相当」が最初の目安です。A1は、国が示す「日本語教育の参照枠」の6段階のうち、最も基礎の段階です。働き始めるまでに、A1の試験に合格するか、決められた日本語講習を100時間以上受ける必要があります。来日前に合格していなくても、来日後の講習で受ければ働き始められます。ただし、1年がたつまでにはA1の試験に合格することが求められます。
人を選ぶ段階で、もう1つ伝えておきたいことがあります。
3年間で目指すことを、面接で伝える
面接では、計画に書く3年間の目標も本人に伝えます。ビルクリーニング分野では、1年がたつまでに技能の初級試験とA1の日本語試験に合格し、3年の終わりには特定技能1号の試験と、A1より上の水準の日本語試験に合格することが目標です。会社には日本語講習の機会を用意する義務もあります。
知っておきたいのが、本人の希望による職場の変更(転籍)です。ビルクリーニング分野では、同じ会社で1年を超えて働き、技能の初級試験と、A1の次の段階にあたる「A2.1相当」の日本語試験に合格しているなどの条件を満たせば、本人の意向で別の会社に移れます。3年後も働き続けてもらえるかは、待遇や職場の雰囲気にかかっています。賃金の上がり方や、特定技能に進んだあとの道筋を、最初の面接から説明できるようにしておきましょう。
ここまでそろえば、いよいよ申請です。
申請から現場に立つまで
申請は、会社の本店所在地を担当する機構の地方事務所・支所に、郵送か持参で出します。申請書に書く社員数や報酬などは、申請した日ではなく、実際に育成就労を始める時点の見込みで書きます。
認定の通知が届いたら、入管に在留資格認定証明書(来日のための事前審査の証明書)を申請し、本人が母国で査証(ビザ)をとって来日します。ここで忘れがちなのが、来日後の講習です。入国後講習は、原則として現場の仕事を始める前に行い、申請の時点でA1の合格を証明できない人は合計320時間以上(証明できれば220時間以上)受けます。講習は1日8時間以内・週5日以内が原則なので、320時間なら最短でも8週間かかります。このことは班長にも伝えておきましょう。
8月1日に始める場合の逆算表
ここまでの流れを、8月1日に始める場合の表にまとめます。
| 時期 | やること | 確認先 |
|---|---|---|
| 2026年11月 | 監理団体を2〜3か所比べ、受理票・取扱職種・送出国・監理支援費を確認して決める | 監理団体 |
| 2026年11〜12月 | 協議会にオンラインで加入する。社内の責任者・指導員・生活相談員を決め、講習を申し込む | 厚生労働省のページ、講習機関 |
| 2026年12月〜2027年1月 | 送出機関を通じて面接し、2人を選ぶ。推薦状・健康診断・費用の申告をそろえる | 監理支援機関、送出機関 |
| 2027年1月〜3月1日 | 計画の認定申請を出す(手数料1人6,100円) | 機構の地方事務所・支所 |
| 2027年4月以降 | 認定の通知を受け、在留資格認定証明書を申請する。ビザをとって来日 | 機構、地方出入国在留管理局 |
| 来日後 | 入国後講習(320時間なら8週間以上)を終えてから現場へ。秋ごろが目安 | 監理支援機関 |
審査の結果は4月以降に順に届き、その後の入管の手続きにも時間がかかります。そのため社長には「始まるのは早くて夏、現場に立つのは秋ごろ」と伝えておくと食い違いが起きません。準備が早く整えば7月1日(申請は12月1日〜2月1日)の開始も選べます。面接や推薦状が遅れたら、開始日を後ろにずらすほうが確実です。
技能実習という別の道
冒頭で触れた「もっと早く人がほしい」場合の選択肢が、技能実習です。ただし、こちらにも期限があります。機構は、1号技能実習計画の認定申請を2027年2月までに行うよう呼びかけています。技能実習1号での上陸が認められるのは、原則として2027年6月30日までだからです。技能実習でも来日後の講習はあるため、「4月から現場に」という希望がかなうわけではありません。
もう1つの注意点として、機構は、2025年4月2日以降に入国した技能実習生は、実習の4〜5年目にあたる技能実習3号に進めない可能性があると注意しています。長く働いてもらうには、3年目以降に特定技能へ切り替える段取りが必要です。詳しくは「技能実習から特定技能への移行手続き」の記事で扱っています。
選ぶときの決め手は、「6月末までに来日してほしいか」と「どちらの準備が自社で間に合うか」です。技能実習なら2月までに計画を申請し、6月末までに来日してもらう段取りになります。育成就労なら、この記事の逆算表のように夏の開始を目指します。両方の段取りを同じ監理団体に聞いて比べましょう。
よくある質問
頼んだ団体が監理支援機関の許可を取れなかったら、どうなりますか
監理支援機関の許可が出なければ、その団体を通した計画も認定されないと機構は案内しています。払った手数料は戻らないため、受理票の有無や許可の見通しは、契約の前に必ず確かめておきましょう。
今週やること
今週やることは3つです。
1つ目は、監理団体への問い合わせです。2〜3か所に、監理支援機関の許可の申請状況、取扱職種、契約している送出国、監理支援費の内訳を聞きます。2つ目は、協議会の入会申請のページと、営業所の知事登録の有効期間の確認です。3つ目は、社内の3つの役の候補選びです。班長や総務の中から候補を決め、講習の受講歴を確かめます。
施行日前申請の一般的な質問は、機構のコールセンター(0570-011-300、平日9時〜17時)でも尋ねられます。言葉の意味は、用語集の育成就労計画、監理支援機関、転籍(育成就労)、育成就労制度施行日で確かめられます。
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