最終更新:2026年10月 titp360.jp編集部
「他の会社で働いている特定技能の人から応募があった。来月から来てもらえるのだろうか」。初めて外国人を雇う会社の担当者が、まずつまずくのがこの場面です。答えから言うと、本人が入管に「在留資格変更許可申請」を出し、許可が出るまでは御社では働けません。しかも御社は、申請の前に「協議会」という、分野ごとに国が設けた受入企業の会に入っておく必要があります。初めて特定技能の人を雇う会社なら、動き始めてから入社まで半年ほどを見ておくのが現実的です。
この記事では、架空の会社の例を使って、転職者を迎えるまでの順番を追っていきます。例の会社は、地方で惣菜や弁当を作る従業員40名ほどの製造会社です。外国人の雇用はこれが初めてです。そこへ、隣県の食品工場で特定技能1号として3年働いているEさんが、自分で求人に応募してきました。Eさんは今の工場でも、惣菜の盛り付けや加熱、衛生管理を担当しています。会社は「来年2月から製造ラインに入ってほしい」と考えています。(例は説明のための架空のものです)
内定を出したら、すぐ働いてもらえるのか
日本人の中途採用なら、前の会社を辞めてもらえば翌月から働いてもらえます。特定技能では、ここが大きく違います。
特定技能1号は、法務大臣が指定した会社との雇用契約にもとづいて働くための在留資格です。Eさんが今「指定」されているのは、隣県の食品工場です。御社で働くには、本人が勤め先を変えるための在留資格変更許可申請を出し、御社を新しい勤め先として認めてもらう必要があります。同じ分野・同じ仕事の転職でも、この申請は省けません。
入管が示す標準的な審査期間は、1か月から2か月です。許可が出るまで、Eさんは御社では働けません。では、順番を間違えると何が起きるのでしょうか。
順番を間違えると起きること
よくある失敗は3つあります。どれも日本人の中途採用と同じ感覚で進めたときに起きます。
1つ目は、内定を出してすぐ、試しに働いてもらうことです。許可が出る前の御社は、Eさんにとって「指定された会社」ではありません。その状態で働かせると、在留資格で認められた範囲の外で働かせたことになります。研修や体験入社、週末だけのアルバイトという形でも同じです。
2つ目は、先に今の会社を辞めてもらうことです。申請中に前の会社を辞めると、許可が出るまでEさんはどこでも働けず、収入が途絶えます。入管は、在留資格にもとづく活動をしていない場合、在留資格が取り消されることがあるとしています。Eさんには、許可が出るまで今の工場で働き続けてもらうのが基本です。
3つ目は、協議会に入らないまま申請しようとすることです。御社が協議会の構成員(会員)であることの証明書は、申請に必要な書類の1つです。これがないと、申請の準備がそろいません。そして実は、この協議会への加入が、スケジュールを一番大きく左右します。
採用できるかを決める2つのこと
失敗を避けるために、内定の前に確かめておきたいことは2つです。Eさんが御社の仕事に就ける条件を持っているか。そして、御社が受入企業として申請できる状態にあるか、です。
Eさんの側:同じ仕事の区分か、残りの期間はどれくらいか
特定技能の転職が認められるのは、同じ「業務区分」の中か、試験などで技能の共通性が確認されている区分の間です。業務区分は、分野の中をさらに仕事の種類で分けたものです。飲食料品製造業分野は、今は「飲食料品製造業全般」という1つの区分です。Eさんは今も惣菜の製造に就いていて、御社でも同じ製造ラインに入ります。同じ区分なので、新しく試験を受け直す必要はありません。
今の仕事と区分が違う人を迎えるときは、御社の仕事の区分の試験に合格していることが条件です。たとえば、外食業の飲食店で働いている人を工場に迎える場合がこれに当たります。なお、この区分は2027年4月1日に「飲食料品製造業」と「水産加工業」に分かれるため、水産加工が関わる仕事なら申請前に入管に確かめましょう。
どの会社・どの分野で働くことを認められているかは、パスポートに付いた「指定書」という紙に書かれています。会社名と分野の欄を見れば、今の勤め先と分野が分かります。在留カードとあわせて本人に見せてもらい、合格した試験の合格証も確かめましょう。
もう1つ見ておきたいのが、特定技能1号で日本にいられる期間の残りです。1号は、通算で原則5年までと決まっています。前の会社で働いた期間も、仕事をしていなかった期間も、この5年に数えられます。Eさんはすでに3年働いているので、残りはおよそ2年です。残りの期間で何を任せたいかを、面接で本人と話しておきましょう。
会社の側:協議会に入っているか、初めての受入か
協議会は、分野を受け持つ省庁が分野ごとに設けている会です。特定技能の人を雇う会社は、その構成員になる必要があります。入管のQ&Aでは、在留の申請の前に必ず構成員になるとされています。飲食料品製造業の場合は、農林水産省が設けている「食品産業特定技能協議会」です。外食業と共通の協議会になっています。食品以外の分野の会社は、入管の各分野のページから、受け持つ省庁の協議会の案内をたどれます。
加入の申請は、農林水産省のページにある加入申請ガイドを読み、ウェブの申請フォームから行います。注意したいのは、かかる時間です。同じページでは、書類を送ってから加入証が出るまで2〜3か月程度かかると案内されています(2026年10月19日確認)。一度入れば2人目以降は入り直す必要がないため、初めての会社ほど、この待ち時間がそのまま入社の遅れになります。
初めての受入では、会社について出す書類も多くなります。その年度にすでに特定技能の人を雇っている会社なら省ける登記事項証明書や納税証明書などを、すべて出すことになるからです。協議会の加入や登録支援機関への委託に費用がかかるかどうかも、それぞれの窓口で早めに確かめ、社内の予算に入れておきましょう。では、Eさんの例に当てはめて、いつ何をすればよいかを見ていきましょう。
2月入社は難しい。4月を目標に逆算する
内定は、前の節の2つを確かめた時点で出してかまいません。ただし入社日は「在留資格の許可が出てから確定する」と内定通知に書き、Eさんにもそう伝えておきます。そのうえで、10月の今、協議会の加入申請を出したとします。加入証が出るのは、早くて12月、遅ければ1月です。そこから書類をそろえて申請し、審査に1〜2か月かかると、許可は2月から3月ごろになります。会社が望んだ2月入社は難しく、4月1日の入社を目標にするのが現実的です。
加入を待つ間に、契約と支援の形を決める
加入証を待つ間に、Eさんとの雇用契約の中身を固めます。特定技能の雇用契約では、報酬が同じ仕事をする日本人と同等以上であることが求められます。雇用契約書と雇用条件書には、Eさんが十分に理解できる言語での記載と、本人の署名が必要です。
同時に決めたいのが、「支援」を誰が行うかです。特定技能1号の人を雇う会社は、仕事や生活を支える支援計画を作り、それに沿って支援する義務があります。支援には、雇用契約の内容の説明、住まい探しの手伝い、日本人との交流の後押しなどが含まれます。自社で担当者を決めて行うか、国に登録した「登録支援機関」に全部を任せるかを選びます。全部を任せる場合は、委託先も協議会の構成員である必要があります。支援にかかる費用を、Eさんに負担させることはできません。
書類は3者で分けてそろえる
申請の書類は、Eさん本人、御社、そして前の会社の3者がそれぞれ用意します。入管の提出書類一覧(2026年10月9日改定)をもとに、主なものと取る場所をまとめます。
- Eさん:申請書と写真、住民税の納税証明書・課税証明書(市区町村)、健康診断個人票(医療機関)、技能試験と日本語試験の合格証(前回の申請で出していて内容に変わりがなければ省略できる)
- 御社:雇用契約書・雇用条件書・支援計画書(自社で作成、Eさんが署名)、登記事項証明書(法務局)、労働保険料等の納付証明書(労働局)、社会保険料の納入状況が分かる書類(年金事務所)、国税の納税証明書(税務署)、法人住民税の納税証明書(市区町村)、協議会の構成員であることの証明書
- 前の会社:源泉徴収票(Eさんに渡してもらい、写しを出す)
手間がかかるのは、窓口がばらばらな御社の納税や保険料の証明です。加入証を待つ間に取りそろえましょう。支援計画書や雇用条件書には入管の参考様式(ひな形)があり、入管のページからダウンロードできます。一覧表は改定がよくあるので、申請の直前に最新版を確かめてください。
Eさんは今の工場で働きながら申請する
書類がそろったら、Eさんが住まいの地域を受け持つ入管に申請します。申請するのは本人ですが、本人の代わりに書類を窓口へ出す「取次ぎ」もできます。取次ぎができるのは、事前に入管の承認を受けた御社などの職員や、届出をした行政書士などです。書類の量に不安があれば、行政書士や登録支援機関に相談するのも一つの方法です。申請中も、Eさんは今の工場で働き続けます。
許可が出ると入管から知らせが届き、Eさんが入管で新しい在留カードを受け取ります。新しいカードを受け取ると、指定先は御社に変わり、前の工場では働けなくなります。そこで、前の工場の最終勤務日を決め、その翌日以降にカードを受け取り、すぐ御社に入社する、という順にそろえると空白が生まれません。許可が4月より早く出たら、入社日を前に動かして合わせるのが基本です。
退職の申し出の時期は、Eさんと前の会社の話し合いで決まります。許可の見込みが立った段階で、Eさんと退職日の目安を話し合っておきましょう。ただし、万一許可が出なかったときに備えて、許可が出るまでは退職を確定させないよう伝えておくと安心です。

この最終勤務日の調整には、前の会社の協力が欠かせません。そこで次は、前の会社との関係を見ておきます。
前の会社とどう向き合うか
転職では、前の会社にも入管への届出の義務があります。前の会社は、Eさんとの雇用契約が終わった日から14日以内に、契約の終了を入管に届け出ます。契約が満了ではなく途中で終わる場合は、「雇い続けるのが難しくなった」ことを知らせる届出もあわせて必要です。これは前の会社の手続きなので、御社が代わりに出すことはありません。ただ、源泉徴収票のように、前の会社から受け取る書類もあります。
引き抜きの扱いも知っておきましょう。特定技能の人が自分の意思で転職することは、制度で認められています。気をつけたいのは、会社の側から、他社で働いている人に声をかけて引き抜くことです。協議会によっては、引き抜きをしないことを会員が守る事項にしています。宿泊分野の協議会のように、守らない会社を退会させることができると定めている例もあります。Eさんは自分で応募してきたので、会社から声をかけた形ではありません。それでも、食品産業特定技能協議会の取り決めも、加入申請ガイドなどで確かめておきましょう。
Eさんが入社したら、今度は御社の届出が始まります。
入社後の届出は2か所に出す
入管には、新しい雇用契約を結んだことを14日以内に届け出ます。入管庁の電子届出システムを使うなら、利用者登録を入社前に済ませておきます。
ハローワークには、外国人を雇ったことを届け出ます。Eさんが雇用保険に入るなら、資格取得届を出せばこの届出をしたことになります。期限は、雇い入れた日の翌月10日までです。届け出なかったり、うその届出をしたりすると、30万円以下の罰金の対象になります。ここまでの流れを、時期ごとに一覧にしておきます。
4月入社までの一覧
| 時期(例) | 御社 | Eさん | 前の会社 |
|---|---|---|---|
| 10月 | 指定書・在留カード・合格証で区分と残り期間を確認、内定(入社日は許可後に確定)、協議会に加入申請 | 指定書などを見せる | - |
| 11〜12月 | 雇用契約・条件書を作る、支援を自社で行うか委託かを決めて支援計画を作る、会社の証明書を取りそろえる | 契約内容を理解できる言語で確かめて署名、納税証明書などを取得、健康診断 | - |
| 12〜1月 | 加入証を受け取る | 源泉徴収票の写しを用意 | 源泉徴収票を渡す |
| 1月 | 申請書類を確認 | 今の工場で働きながら申請 | - |
| 2〜3月 | 許可後、入社日を確定、電子届出の利用者登録 | 許可、前の工場の最終勤務日の後に新しい在留カードを受け取る | 契約終了の届出(14日以内) |
| 4月1日 | 入社。入管へ契約の届出(14日以内)、ハローワークへ届出(翌月10日まで) | 入社 | - |
よくある質問
Q. 応募者の在留期限が近く、書類が間に合いそうにないときは?
A. 在留期限までに特定技能1号への変更の書類がそろわないときは、「特定活動(6か月・就労可)」への変更を申請する道があります。御社で働きながら、変更の準備を続けられる在留資格です。御社の仕事に必要な技能試験と日本語試験に合格していることが条件で、この期間も通算5年に数えられます。特定技能1号での通算が4年6か月を超えている人は対象になりません。
Q. 前の会社から源泉徴収票などをもらえない場合はどうなりますか?
A. 受け取れない書類がある場合は、外国人在留総合インフォメーションセンター(電話 0570-013904)か申請先の入管に、代わりに出せる書類を相談しましょう。前の会社の入管への届出は前の会社の義務で、Eさんの申請とは別の手続きです。
今日からできること
時間はかかりますが、最初の一歩は今日から踏み出せます。まず、応募者に指定書と在留カード、試験の合格証を見せてもらいます。今の分野と区分、特定技能1号での残りの期間を確かめましょう。問題がなければ、入社日は許可後に確定すると添えて内定を出します。次に、御社の分野の協議会のページで加入申請ガイドを読み、申請を出します。加入証を待つ間に、支援を自社で行うか、登録支援機関に任せるかを決めましょう。会社の証明書を取りそろえておけば、加入証が届いてすぐに申請へ進めます。
- 転職の手続きの全体:特定技能外国人の転職手続き
- 協議会:飲食料品製造業・外食業分野特定技能協議会(食品産業特定技能協議会)
- ハローワークへの届出:外国人雇用状況届出制度
- 分野の全体像:特定技能「飲食料品製造」
自社の場合はどの順番で進めればよいか、支援をどう整えるか迷ったときは、外国人採用ツナガル24で無料で相談できます。