「フロントを任せたいのに、Aさんは『技人国(技術・人文知識・国際業務)』、Bさんは『特定技能』で申請すると言われた。同じ仕事なのに、なぜ在留資格(日本で働くための資格)が違うのか」。外国人材の採用を初めて考える担当者から、よく聞かれる疑問です。
結論から言うと、どちらの在留資格にするかは、職種名では決まりません。決め手は「1日の仕事の中身」と「本人が持っているもの(学歴・職歴か、試験の合格か)」の2つです。この2つを先に整理しておけば、申請の段階で迷うことはほとんどなくなります。
この記事では、架空の会社を例に、技人国と特定技能の違いを順を追って見ていきます。
例:温泉旅館が2人を採用したい
ここからは、次の架空の会社を例に話を進めます(運営会社の事例ではなく、説明のための例です)。
地方で温泉旅館を営む、従業員30名ほどの会社です。人手が足りないフロントに、2人の採用を考えています。1人は、日本の大学の経営学部を来春卒業する留学生のAさん。もう1人は、海外に住み、宿泊分野の特定技能の試験に合格したBさんです。
2人とも「フロントで働いてほしい」という点は同じです。ただ、Aさんにはフロントに加えて予約管理や海外向けの情報発信も任せ、将来は企画も担ってほしいと考えています。Bさんには、フロントでの受付に加えて、館内の案内やレストランでの接客もお願いしたいところです。それでも、Aさんは技人国、Bさんは「特定技能」で検討するのが自然です。なぜそうなるのか、まずは選び方を間違えたときに何が起きるかから見ておきましょう。

選び方を間違えると、頼める仕事が限られる
在留資格には、それぞれ「どんな仕事をしてよいか」が決まっています。出入国在留管理庁(入管)の比較表をかみくだくと、技人国は大学などで学んだ専門知識を使う仕事や、外国の文化や語学の感覚を生かす仕事が対象です。特定技能は、人手不足の分野として国が指定した業種(特定産業分野)で、一定の技能を使って現場を支える仕事が対象です。
同じ比較表は、宿泊業で想定される主な活動を、次のように分けています。特定技能1号はフロント、企画・広報、接客、レストランサービス業務。技人国はフロント、企画・広報です。つまり、フロントはどちらにも入っていますが、接客やレストランでの配膳まで任せたいなら、技人国の想定には入っていません。
旅館の現場では、忙しい時間帯にフロントの人が配膳を手伝うこともあるでしょう。「フロント」という職種名だけで技人国を選ぶと、こうした日常の頼みごとが、認められた活動の外に出てしまうおそれがあります。逆に、企画や広報を中心にしたいなら、特定技能より技人国のほうが合います。
では、どこを見て決めればよいのでしょうか。決め手は2つあります。
決め手1:1日の仕事の中身を書き出す
1つ目の決め手は、任せる仕事の中身です。職種名ではなく、「何を、どれくらいの割合でするか」を書き出してみましょう。

例の旅館に当てはめてみます。Aさんの仕事は、外国人客のフロント対応、予約管理、海外向けの情報発信、将来の企画です。大学で学んだ経営の知識や語学を使う仕事が中心なので、技人国の考え方に合います。Bさんの仕事は、受付、館内の案内、レストランでの接客です。現場での接客が中心なので、特定技能の想定する活動に当てはまります。
では、忙しい日にAさんにも配膳を手伝ってほしいときはどうでしょう。比較表の技人国の想定に、レストランサービスは入っていません。配膳がAさんの日常の仕事に組み込まれるなら、その働き方で技人国が認められるかを、申請前に各地の出入国在留管理局へ確認しておくのが安全です。配膳もふくめて現場を任せたい人は、Bさんのように特定技能で採用するほうが無理がありません。
ほかの業種でも、線の引き方は同じです。比較表では、たとえば製造業なら、組立などの作業は特定技能、設計や技術開発は技人国とされています。なお、この比較表は概略を整理したもので、具体的な可否は各地の出入国在留管理局に相談するよう注記されています。仕事の中身を書き出したら、次は本人の側を見ます。
決め手2:本人が持っているのは学歴か、試験の合格か
2つ目の決め手は、採用する人がどんな条件を満たしているかです。ここで、2つの在留資格は入口がまったく違います。
技人国は、大卒程度、または実務経験10年以上が基準です(国際業務に就く場合は3年以上)。日本の大学を卒業するAさんは、この入口に立てます。あわせて、学んだことと任せる仕事がつながっていると説明できることが大切です。
特定技能1号は、学歴ではなく、業種ごとの技能試験の合格と日本語能力で判断します。日本語は日本語能力試験N4以上の合格などが基準で、分野によってはN3以上が必要です。宿泊分野の試験に合格しているBさんは、こちらの入口から入ります。
なお、技能実習(2号)を良好に修了した人は、仕事の内容が実習と関連していれば、特定技能1号の試験が免除されます(特定技能制度に関するQ&A)。
2つの決め手で在留資格が見えてきたら、入社後の働き方にどんな差が出るかも確かめておきましょう。採用面談で本人に伝えるべきことが含まれています。
入社後に差が出る3つのこと
在留資格の違いは、採用したあとの働き方にも表れます。特に、在留期間、家族、転職の3つは、面談の段階で本人と話しておきたい点です。
在留期間:1号には合計5年の上限がある
技人国の在留期間は、5年、3年、1年又は3か月です。特定技能1号は、3年を超えない範囲で1人ずつ決められ、1号でいられるのは合計で原則5年以内です。特定技能2号は、3年、2年、1年又は6か月で、Q&Aでは2号に上限はないと案内されています。Bさんに長く働いてほしいなら、2号への道筋も含めて考える必要があります。5年の数え方は、用語集の通算在留期間5年上限(特定技能1号)で詳しく説明しています。
家族:特定技能1号は原則として呼べない
特定技能1号では、家族の帯同は認められません。2号になれば、「家族滞在」(家族として日本で暮らすための在留資格)での帯同が認められます。Bさんが将来家族と暮らしたいと考えているなら、入社前に伝えておくと、あとでの行き違いを防げます。技人国の人は、扶養する配偶者や子を「家族滞在」で呼ぶことができます。帯同の詳しい取扱いは、家族帯同の用語集で整理しています。
転職:特定技能は業務区分の範囲で
特定技能の業種の中は、さらに「業務区分」という仕事の種類に分かれています。特定技能の人が転職できるのは、同じ業務区分の中か、試験などで必要な技能が共通だと確認されている業務区分の間です。勤め先(受入機関)や業種を変える場合は、在留資格の変更許可申請が必要です。言いかえると、Bさんは宿泊の仕事を続ける前提で採用することになります。
本人側の違いが分かったところで、最後に受入企業が背負う仕事の違いを見ていきます。人事担当者にとっては、ここが一番の分かれ目かもしれません。
会社が引き受ける仕事の違い
受入企業の負担は、特定技能のほうが目に見えて大きくなります。代わりに、技人国では申請書類の準備に気を配る必要があります。
特定技能1号:支援計画をつくり、支援を続ける
特定技能1号の人を雇う受入機関は、「1号特定技能外国人支援計画」を作成し、在留申請のときに提出します。計画には、事前ガイダンス、出入国時の送迎、住居確保の支援、生活オリエンテーション、日本語学習の機会の提供、相談・苦情への対応、3か月に1回以上の定期面談など、10項目の「必ず行う支援」(義務的支援)を盛り込みます。
例の旅館が自社だけでこれを担うのは、簡単ではないかもしれません。支援は、全部または一部を、支援を代わりに行う機関として国に登録された登録支援機関に委託できます。全部を委託すれば、受入機関が満たすべき支援体制の基準を満たしたものとみなされます。なお、委託を受けた登録支援機関が、その支援をさらに別の会社に任せること(再委託)はできません。
技人国:会社の規模に応じた書類と、言語能力の証明
技人国には支援計画の仕組みはありません。そのかわり、申請では会社を4つに分けた「カテゴリー」に応じた書類をそろえます。カテゴリー1は上場企業や国・自治体など、2は前年に給与から源泉徴収した税額が1,000万円以上の会社などです。この2つに当たらない多くの中小企業は、カテゴリー3か4です。
2026年4月15日以降の申請からは、カテゴリー3又は4の場合に追加の書類が必要になりました。翻訳・通訳や、ホテルフロントなどの接客のように、主に言語能力を使って対人業務をする場合は、「CEFR B2相当」の言語能力を示す資料も求められます。CEFRは語学力の国際的なものさしです。日本語能力試験N2以上の合格や、日本の大学の卒業などが、B2相当として扱われます。Aさんは日本の大学を卒業するので、卒業を証する資料で対応できる見込みです。在留期間の更新で、以前から同じ仕事を続けている場合は、提出は不要とされています。
どちらを選んでも必要な届出
ここまで違いを見てきましたが、どちらを選んでも、採用が決まったあとに同じように必要な届出が2つあります。
1つは、会社が出すハローワークへの「外国人雇用状況の届出」です。外国人を雇い入れたときと離職したときは、すべての事業主に義務があります。雇用保険に入る人なら、ふだんの雇用保険の手続き(資格取得届・喪失届)がそのまま届出になり、期限も同じです。雇用保険に入らない人は、専用の様式で翌月末日までに届け出ます。届出を怠ると、30万円以下の罰金の対象になります(厚生労働省)。
もう1つは、本人が出す入管への「所属(契約)機関に関する届出」です。技人国・特定技能のどちらでも、転職や退職で勤め先との契約が終わったときや、新しい勤め先と契約したときは、14日以内に届け出ます。入社のときに、本人にもこの届出を伝えておきましょう。
ここまでの話を、一覧表にまとめておきます。
まとめ:技人国と特定技能の違い
| 項目 | 技術・人文知識・国際業務 | 特定技能1号 | 特定技能2号 |
|---|---|---|---|
| 対象の業務 | 専門知識や語学・外国の文化の感覚を使う業務 | 指定業種で、一定の技能を使う現場の業務 | 指定業種で、熟練した技能を使う業務 |
| 宿泊業での例 | フロント、企画・広報 | フロント、企画・広報、接客、レストランサービス | 複数の従業員を指導しながら行う左記の業務 |
| 本人の条件 | 大卒程度又は実務経験10年以上(国際業務は3年以上) | 業種の技能試験合格、日本語能力試験N4以上合格など | 業種の2号の技能試験合格など |
| 在留期間 | 5年、3年、1年又は3か月 | 3年以内で個々に指定、合計で原則5年まで | 3年、2年、1年又は6か月 |
| 家族の帯同 | 扶養する配偶者・子は「家族滞在」で可 | 原則として認められない | 「家族滞在」で認められる |
| 会社の主な負担 | カテゴリーに応じた書類、言語業務ではB2相当の証明 | 支援計画の作成と10項目の支援(委託可) | 支援計画は不要 |
今日からできる3つのこと
表で全体像をつかんだら、例の旅館と同じように、自社の場合に当てはめてみましょう。始めることは3つです。
まず、任せたい仕事を書き出します。業務の名前と、1日のうちのおおよその割合を並べるだけで十分です。現場の作業が中心か、専門知識を使う仕事が中心かが見えてきます。
次に、候補者が持っているものを確認します。卒業証明書や職歴の資料があるのか、分野の試験や日本語試験の合格証があるのか。これで、どちらの入口から入れるかが決まります。Bさんのように海外から呼ぶ場合は、入国前に在留資格認定証明書(COE)を入管から受ける手続きに進みます。Aさんのような国内の留学生なら、「留学」から働くための在留資格へ切り替える在留資格変更許可申請です。手続きの流れは、それぞれの用語集で確認できます。
最後に、入社後の体制を決めます。特定技能なら、支援を自社で行うか登録支援機関に委託するか。技人国なら、自社のカテゴリーと、言語能力の証明が必要な仕事かどうかです。受入企業として気をつける点の全体は、受入企業が注意すべき点にまとめています。
よくある質問
技人国のほうが、特定技能より「上」の在留資格ですか?
上下の関係ではありません。対象となる仕事と、本人に求められる条件が違うだけです。現場で技能を使う仕事なら特定技能、専門知識を使う仕事なら技人国が合います。
特定技能で採用した人に、あとから企画の仕事を任せてもよいですか?
特定技能で従事できるのは、分野ごとに定められた業務です。比較表では、企画業務などは技人国の活動として整理されている業種もあります。仕事の中身を大きく変えるときは、在留資格に合うかを事前に各地の出入国在留管理局へ確認してください。
特定技能1号の5年が過ぎたあとも、働いてもらう方法はありますか?
業種の2号の技能試験に合格するなど、2号の基準を満たせば、特定技能2号へ移る道があります。2号には、在留期間の合計の上限がありません。宿泊業も2号の想定する活動がある業種です。
参考資料
- 出入国在留管理庁「在留資格『技術・人文知識・国際業務』と『特定技能』の違いについて」(令和8年1月現在)
- 出入国在留管理庁「在留資格『技術・人文知識・国際業務』」
- 出入国在留管理庁「在留資格『特定技能』」
- 出入国在留管理庁「特定技能制度に関するQ&A」
- 出入国在留管理庁「1号特定技能外国人支援・登録支援機関について」
- 出入国在留管理庁「所属(契約)機関に関する届出」
- 出入国在留管理庁「在留資格『家族滞在』」
- 厚生労働省「『外国人雇用状況の届出』について」
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最終更新:2026年10月 / titp360.jp編集部