自動車運送業におけるベトナム人材への期待値

コラム
COLUMN
「外国人技能実習リアルタイム24時」 ー東南アジア各国からの現地報告ー ビル新聞2024年10月28日号掲載「自動車運送業におけるベトナム人材への期待値」の話題。

1.運送業界の救世主!?特定技能「外国人材ドライバー」

2024年3月に閣議決定された特定技能「自動車運送業」は年内にも導入される予定だ。
この新制度はトラック運転手、タクシー運転手、バス運転手を対象としており、運送業界の深刻な人手不足の解消を目指している。

対象者は、自動車運送業分野特定技能1号評価試験に合格し、必要な運転免許(トラックは第一種、タクシー・バスは第二種)を取得する必要がある。

また、職種に応じた日本語能力が求められ、トラック運転手はN4以上、タクシー・バス運転手はN3以上が要件とされている。

政府は2029年度末までに最大24,500人の受け入れを目標としており、この動きは業界全体から大きな期待が寄せられている。

しかし、日本の運転免許取得は外国人にとって容易ではない。

複雑な交通ルール、外免切り替えの難しさなど、ハードルを越えるためには徹底した準備が必要となるからだ。この新たな制度導入により、注目を集めているのがベトナム人労働者だ。

2.ベトナム人離れを覆す!ドライバー育成のカリスマ「リーさん」

近年、外国人技能実習生の分野では「ベトナム人離れ」の傾向が見られたが、日本の運転免許取得には高い技術と安全意識が求められるため、ベトナム人の優秀さが改めて評価されているのだ。

こうした中、ベトナム人の間でちょっとした有名人が名古屋にいる。運転免許取得トレーナーのボー・タン・リーさんだ。

リーさんは過去5年間で約500人のベトナム人に日本の運転免許を取得させた実績を持ち、彼の指導を受けた多くのベトナム人が日本国内で活躍している。

東海地区を中心に、全国の主要な運転免許試験場の試験コースを熟知しているリーさんの指導法は非常に実践的だ。日本の交通事情に慣れないベトナム人に対して丁寧な個別指導を行い、単に運転技術を教えるだけでなく、交通マナーや試験に臨む心構えまで詳細に指導する。

そしてリーさんのトレーニングは試験直前まで続く。運転免許試験場を借り、実際の試験コースで走行のポイントを理解できるようにするのだ。

この経験が自信となり、試験当日のパフォーマンスに繋がる。

このような指導の結果、リーさんの教え子たちは高い合格率を誇り、その実績からリーさんに指導を求めるベトナム人が後を絶たない状況だ。

3.外国人ドライバー育成成功の鍵は・・・

今後、特定技能「自動車運送業」の枠組みが拡大する上で、リーさんのようなトレーナーの存在は貴重だ。

確かな運転技術を実践的に指導し、法令順守の精神やマナーといった、日本社会では当然とされている内面性をも教えられる人材、そして仕組み作りが重要になるだろう。

これらを体系的に整備し、持続的に支援していくことが、日本の運送業界での外国人労働者の活躍を促進する鍵となるはずだ。

人手不足という難局の中、安全性を確保しつつ効率性を高める取り組みは急務だ。必要なリソースを見極めるためのヒントはリーさんの指導法にある。

(※このコラムは、ビル新聞2024年10月28日号掲載「自動車運送業におけるベトナム人材への期待値」Vol.58を加筆転載したものです。)