withコロナのカンボジア人材展望
1.待望の鎖国状態が解禁
3月1日、「外国人入国停止措置」がようやく緩和され、技能実習生や特定技能人材の入国も再開された。
昨年11月にわずか3週間の解禁があったものの、ほぼ1年以上に及んだこの鎖国状態が、各国の送出機関や日本語学校へ与えたインパクトは大きい。
送り出し側の情勢回復までには一定の時間がかかるのでは、と懸念の声も囁かれる。
その一方で、withコロナにおける人材養成の再構築に向けて、一部では新しい動きも出てきている。
2.政府支援による積極的な送出体制
先日、駐日カンボジア王国大使館のサーメン・ソッカさん(写真)に話を聞く機会を得た。
ソッカさんは、カンボジア王国労働省からの出向で在任しており、在留中のカンボジア人に対する労働面でのサポートと、日本における労働市場開拓の2つをミションとしている。
カンボジア実習生、特定技能人材の事情にも明るい人物である。
「現在1万人以上のカンボジア人が日本で働いている。先進的で労働環境のよい日本の人気はコロナ禍の今も根強いです」とソッカさん。
さらに、「技能実習や特定技能で日本を希望する若者たちは増えている」という。
カンボジア政府としてもこの2つの制度を有効活用し、日本で新しい知識や技術を身に付けてカンボジアのために活かして欲しいと、大いに期待しているとのことだ。
昨年12月にはカンボジア政府支援のもと、JITCO主催による新しい試みとして、カンボジア送出機関86社と日本企業100社あまりがオンライン・セミナーにおいて交流した。
既に50社以上で採用選考が進んでおり、反応は上々だ。
コロナ禍においても積極姿勢を見せる送出機関の体制は盤石であり、オーダーさえあれば優秀な人材を提供することができると太鼓判を押す。
3.大規模トレーニングセンターの発足
なかでもソッカさんが今最も注目しているのは、2020年12月に発足した日本語教育センター「アンコール・フジ人材開発機構(通称:AFD)」の展開だ。
AFDは、送出機関9社が中心となり共同設立された合同会社である。これまでお互いにライバル視してきた送出機関の精鋭が相互協力することにより、ベトナム、フィリピン、インドネシア等他の送出し国に負けない優秀な人材を輩出しようという目論見で誕生した。
各社のハウツーをひとつに凝縮することで、日本語教育プログラムが格段にレベルアップし、これまで一社では困難であった技能実習対象14業種すべてに対応できる教育体制が整ったという。
プノンペン市内に建設されたトレーニング・センターは約500名収容可能で、快適な食堂や寮も備えている。充実した環境と教育体制の下でトレーニングに励むことができる。
カンボジア政府はこれを、人材育成改革の起爆剤のひとつとみているようだ。今後外国人材の有望国としてカンボジア旋風が巻き起こる予兆を感じる。
(※このコラムは、ビル新聞2022年3月28日号掲載「withコロナのカンボジア人材展望」Vol.37を加筆転載したものです。)