コロナ禍のカンボジア人材ビジネス事情

コラム
COLUMN
「外国人技能実習リアルタイム24時」 ー東南アジア各国からの現地報告ー ビル新聞2022年2月21日号掲載「コロナ禍のカンボジア人材ビジネス事情」の話題。

1.新たな変異株により新規入国が再ストップ

昨年11月8日、外国人に対する入国制限が一時的に緩和され、外国人ビジネス関係者や留学生、技能実習生の新規入国が解禁された。

約10ヶ月ぶりの入国再開に、各国の送出機関や実習生は歓喜に沸いたが、新たな変異株「オミクロン株」の世界的な感染拡大を受け、三週間後の30日には再び入国が禁止されてしまった。

このわずかな期間に来日できた実習生は、タイからの十数名程度とされており、各国で待機中の11万人を超える大勢の実習生たちを落胆させてしまう結果となった。

たえずコロナ情勢に翻弄され続けたこの二年。ベトナム、フィリピン、インドネシア等の実習生輩出主力国はもちろん、それに続く各国にも様々な影響を及ぼしている。

2.多くの送出機関が事業継続困難に…

先日、カンボジア送出機関IIS COMPANY LTDのディレクター中井和彦さん(写真中央)に話を聞く機会を得た。

カンボジア送出機関も他国同様、実習生の出国が足止めされたままであるため、経済的に厳しい状況が続いている。

中井さんは、認定送出機関約100社の中で現在機能しているのは1割程度とみており、その理由としてキャッシュフローの課題が大きいという。送出機関の主な収益は、実習生からの受講料である。

従来は、受入企業の面接に合格した実習生から一定額を前払いで徴収し、それを日本語教育の原資に充てていた。その資金は、実習生自らが銀行から調達するのが一般的なのだが、コロナ禍になってからは融資が下りにくくなっている。

そのため資金力のない送出機関は日本語教師の雇用維持さえままならず、授業を行うことができない状態に陥っているところも少なくないようだ。

そこで今こそ磨くべきは、withコロナにおける日本語教育への対応力だと中井さんは言う。

3.教育~出国までのスキームを改新

IISにおいては、この二年でオンラインと対面授業併用の教育カリキュラムを確立した。

まず入学直後は全寮制の対面授業で、ひらがな、カタカナの読み書きからスタート。日本語能力N5相当のレベルに到達した段階で一時退寮してオンライン授業に切り替える。

この段階では授業以外に課題提出の頻度も上げて、継続的な日本語力向上とモチベーション維持を図る。そして、在留許可が出た段階で再び入寮し、対面授業で集中的に仕上げていくといった具合だ。

教師やスタッフの創意と実践力により、以前に比べて習熟度は格段に上がっているそうだ。「苦労もありましたが、コロナがあったからこその新しい気づきもありました」と中井さん。

ここ最近はカンボジア人実習生へのニーズの高まりを感じているという。これまでベトナムから受入れをしていた監理団体からの問い合わせが増えているそうだ。コロナ禍は革新を促し、ビジネスの風景を変えている。

カンボジアに注目が集まる日が遠からずおとずれることを願う。

 

 

 

(※このコラムは、ビル新聞2022年2月21日号掲載「コロナ禍のカンボジア人材ビジネス事情」Vol.36を加筆転載したものです。)