マイホームは遠隔で建設中~インドネシア特定技能人材

コラム
COLUMN
「外国人技能実習リアルタイム24時」 ー東南アジア各国からの現地報告ー ビル新聞2021年9月27日号掲載「マイホームは遠隔で建設中~インドネシア特定技能人材」の話題。

1.特定技能人材の動向

今年6月末時点での特定技能人材の速報値が、2万9千人と発表された。1年前の約6千人から着々と数を伸ばしている。新規の入国に制限がある中での増加は、国内在留外国人の特定技能への移行によるものと考えられる。

転職に際して、外国人が何を基準に選んでいるか、今回はインドネシア特定技能人材ストヨさん(30)の経緯を紹介する。

就労先として、都市部を希望する外国人は多い。しかし、ストヨさんはあえて地方への転職を果たした。

2.安定したライフスタイルを求めて

 

とび職の技能実習生として来日し、千葉市で3年間を過ごしたが、特定技能へ移行するのを機に、今年7月から新潟へやってきた。

来日のきっかけは、インドネシアで開催された“日本祭り”だという。その後日本語学校で教わった日本文化や美しい風景に惹かれ、本物を体感したいと思ったそうだ。

しかし、憧れの日本での生活は想像と違っていた。「首都圏の現場が多く、朝晩の移動はジャカルタ名物の渋滞と変わりませんでした。毎日残業があって稼げましたが、帰って寝るだけの生活で、ストレスが溜まっていました」とストヨさん。

日本に居たい想いと現状とのはざまで葛藤していたが、つかの間の長期休みに、新潟を訪れたことが転機となった。自然にかこまれ、のどかな雰囲気の新潟を気に入り、すぐさま転職を決意したそうだ。

「現場は遠いので朝早いのは同じですが、休憩はしっかり取れるし、落ち着いたペースで仕事ができる分、ストレスがないです。

自然が好きなので、山での仕事や海を見ることで癒されます」と語る。海沿いに位置する寮での生活にも不便はなく、快適だそうだ。

仕事面では工具の呼び名の違いに戸惑ったが、すでにマスターしていたとび作業は、一緒に働くミャンマー実習生に指導するほどで、日本人従業員とはお互い教え合いながら切磋琢磨しているという。

3.実習中に隠れた才能が開花

 

特定技能の建設は、5年経過後、試験に合格すると半永久的に日本に滞在出来る。これを目指す実習生もいるが、ストアさんの目標は違っていた。

「お金を貯めてインドネシアで自分の家を建てます。今建設中で、完成したら帰ります」と胸を張る。しかも建売を購入するのではなく、休日や平日の空き時間に自分で図面を引き(写真)、材料を計算してインドネシアの現場作業員へ指示を出しているという。

さらに、これを独学で行っているというから驚きだ。

建築関係の学校を卒業した訳でもなく、「実習中に現場で基礎部分や家作りの工程を見ていて、自分でも出来そうと思いました。(笑)インドネシアでは、まとまったお金を用意しなくても、少しずつ払いながら家を建てることが出来ます、今半分ほど出来上がりました」と3D模型を見せてくれた。

自分に合った環境で技術を磨くストヨさんが、インドネシアの立派な自宅でくつろぐ日もそう遠くない。

 

 

 

(※このコラムは、ビル新聞2021年9月27日号掲載「リアルタイム外国人技能実習24時」Vol.32を加筆転載したものです。)