技能実習生はどんな仕事をしているの?

コラム
COLUMN

技能実習制度で認められている対象職種と作業について

2012年から2017年までの5年間で、1.8倍と増え続ける外国人技能実習生。技能実習制度においては、対象となる職種・作業が明確に規定されており、審査基準が設けられている。農業、漁業、建設、食品製造、繊維・衣類、機械・金属等さまざまな産業において不足する日本の労働力を補っているのが現状である。しかし、日本の産業構造や労働事情の変化により、受け入れ職種のトレンドにも変化が起きている。

技能実習の対象職種は?

技能実習の対象職種・作業一覧

1.農業関係(2職種6作業)
職種名作業名
耕種農業●施設園芸
畑作・野菜
果樹
畜産農業●養豚
養鶏
酪農
2.漁業関係(2職種9作業)
職種名作業名
漁船漁業●かつお一本釣り漁業
延縄漁業
いか釣り漁業
まき網漁業
ひき網漁業
刺し網漁業
定置網漁業
かに・えびかご漁業
養殖業●ほたてがい・まがき養殖
3.建設関係(22職種33作業)
職種名作業名
さく井パーカッション式さく井工事
ロータリー式さく井工事
建築板金ダクト板金
内外装板金△
冷凍空気調和機器施工冷凍空気調和機器施工
建具製作木製建具手加工
建築大工大工工事
型枠施工型枠工事
鉄筋施工鉄筋組立て
とびとび
石材施工石材加工
石張り
タイル張りタイル張り
かわらぶきかわらぶき
左官左官
配管建築配管
プラント配管
熱絶縁施工保温保冷工事
内装仕上げ施工プラスチック系床仕上げ工事
カーペット系床仕上げ工事
鋼製下地工事
ボード仕上げ工事
カーテン工事
サッシ施工ビル用サッシ施工
防水施工シーリング防水工事
コンクリート圧送施工コンクリート圧送工事
ウェルポイント施工ウェルポイント工事
表装壁装
建設機械施工●押土・整地
積込み
掘削
締固め
築炉△築炉
4.食品製造関係(11職種16作業)
職種名作業名
缶詰巻締●缶詰巻締
食鳥処理加工業●食鳥処理加工
加熱性水産加工食品製造業●節類製造
加熱乾製品製造
調味加工品製造
くん製品製造
非加熱性水産加工食品製造業●塩蔵品製造
乾製品製造
発酵食品製造
水産練り製品製造かまぼこ製品製造
牛豚食肉処理加工業●牛豚部分肉製造
ハム・ソーセージ・ベーコン製造ハム・ソーセージ・ベーコン製造
パン製造パン製造
そう菜製造業●△そう菜加工
農産物漬物製造業●△農産物漬物製造
医療・福祉施設給食製造●△医療・福祉施設給食製造
5.繊維・衣服関係(13職種22作業)
職種名作業名
紡績運転●△前紡工程
精紡工程
巻糸工程
合ねん糸工程
織布運転●△準備工程
製織工程
仕上工程
染色糸浸染
織物・ニット浸染
ニット製品製造靴下製造
丸編みニット製造
たて編ニット生地製造●たて編ニット生地製造
婦人子供服製造婦人子供既製服縫製
紳士服製造紳士既製服製造
下着類製造●下着類製造
寝具製作寝具製作
カーペット製造●△織じゅうたん製造
タフテッドカーペット製造
ニードルパンチカーペット製造
帆布製品製造帆布製品製造
布はく縫製ワイシャツ製造
座席シート縫製●自動車シート縫製
6.機械・⾦属関係(15職種29作業)
職種名作業名
鋳造鋳鉄鋳物鋳造
非鉄金属鋳物鋳造
鍛造ハンマ型鍛造
プレス型鍛造
ダイカストホットチャンバダイカスト
コールドチャンバダイカスト
機械加工普通旋盤
フライス盤
数値制御旋盤
マシニングセンタ
金属プレス加工金属プレス
鉄工構造物鉄工
工場板金機械板金
めっき電気めっき
溶融亜鉛めっき
アルミニウム陽極酸化処理陽極酸化処理
仕上げ治工具仕上げ
金型仕上げ
機械組立仕上げ
機械検査機械検査
機械保全機械系保全
電子機器組立て電子機器組立て
電気機器組立て回転電機組立て
変圧器組立て
配電盤・制御盤組立て
開閉制御器具組立て
回転電機巻線製作
プリント配線板製造プリント配線板設計
プリント配線板製造
7.その他(14職種26作業)
職種名作業名
家具製作家具手加工
印刷オフセット印刷
製本製本
プラスチック成形圧縮成形
射出成形
インフレーション成形
ブロー成形
強化プラスチック成形手積み積層成形
塗装建築塗装
金属塗装
鋼橋塗装
噴霧塗装
溶接●手溶接
半自動溶接
工業包装工業包装
紙器・段ボール箱製造印刷箱打抜き
印刷箱製箱
貼箱製造
段ボール箱製造
陶磁器工業製品製造●機械ろくろ成形
圧力鋳込み成形
パッド印刷
自動車整備●自動車整備
ビルクリーニング△ビルクリーニング
介護●介護
リネンサプライ●△リネンサプライ仕上げ
○社内検定型の職種・作業(1職種3作業)
職種名作業名
空港グランドハンドリング●航空機地上支援
航空貨物取扱
客室清掃△

(注1)●の職種︓「技能実習評価試験の整備等に関する専⾨家会議」による確認の上、⼈材開発統括官が認定した職種
(注2)△の職種・作業は2号まで実習可能。

(引用:厚生労働省資料より)https://www.mhlw.go.jp/content/000465403.pdf

外国人技能実習制度で認められている対象職種は、80職種(144作業)です(2018年12月28日時点)。1993年のスタート時点では、製造業中心の17職種でしたが、その後、人手不足にあえぐ各業界団体からの要請により、段階的に職種が拡大されてきました。近年では2016年に「ビルクリーニング」、「自動車整備」、2017年には初の対人サービス職種として「介護」が追加され、業界では大きな期待が寄せられています。 日本では就業者が集まりにくく、人手不足が深刻な職種において、それを埋める労働の担い手として2019年4月施行の特定技能も含めて、職種拡大の方向へ動いています。 最近では、コンビニ大手ローソン社長が、「コンビニ運営業務」として実習制度への職種追加を求めるコメントを出すなど話題を呼びました。

実習生の多い職種は?

職種別「技能実習2号」への移行者数(1997年~2017年)

※ 平成21年以前は「特定活動(技能実習)」への移行者数
※ その他の職種については省略

(出典:法務省データより)

実習生受け入れ職種の上位は、(1)食品製造関係 (2)建設関係 (3)機械・金属関係の順です。中でも、建設関係の伸びが目覚ましく、2014年から2017年までの3年間で約2.6倍と大きく増加しました。建設業界においては、他産業と比較して、特に若者の担い手不足が深刻であり、就業者の高齢化も加速しています。併せて2020年の東京オリンピックへ向けての建設ラッシュなども、実習生需要増を後押ししています。22職種33作業ともっとも多く分類されており、最近では2017年7月に「築炉」(耐火レンガ・耐火キャスタブル等を使って炉をつくる職業)というあまり聞きなれない職種も追加されました。「とび」、「鉄筋施工」、「型枠施工」をはじめ建設関係の職種には、最大の技能実習生送り出し国ベトナムをはじめ、インドネシア、カンボジア、ミャンマー等から多くの若く体力ある実習生が従事しています。

食品製造関係は、缶詰巻締、食鳥処理加工、加熱水産加工食品製造、非加熱水産加工食品製造、水産練り製品製造、ハム・ソーセージ・ベーコン製造、パン製造、惣菜製造業 など11職種16作業に分類されています。「農産物漬物製造業」など外国人にあまり馴染みのなさそうな変わり種もあります。また、大手の食品メーカーも含めて、多くの女性実習生を受け入れているという特徴もあります。世界でも高いレベルにある日本の食品安全衛生管理や食品製造技術の継承は、今後増えるであろう開発途上国現地の食品製造工場にも活かしていくことが期待できます。
国内の食品加工・惣菜業界では、少子高齢化や単身世帯の増加により、家庭外で調理された食品を買って自宅で食べる中食市場の成長に伴い、年々人材需要が増えてきました。そこで、2015年に惣菜製造業等が新たに対象職種(技能実習2号移行)に追加され、その数は大きく増大しました。今後もますます増えていくと予想されます。

機械・金属関係については、鋳造、鍛造、ダイカスト、機械加工、金属プレス加工、 鉄工、工場板金、めっき、アルミニウム陽極酸化処理、仕上げ、機械検査、機械保全、 電子機器組立て、電気機器組立て、プリント配線板製造など、13職種22作業に分類されています。
過去の受け入れ人数には増減があるものの、直近の2015年~2017年は大きく伸びています。
機械・金属関連の製造業界では、アベノミクス効果による円安等の影響による受注増に対応が追い付かず、技術者の高齢化も進んでおり、そのような状況のなか、技能実習生への関心が高まっているという見方がされています。 他方で、中国、ベトナム、インドネシア等の海外子会社からの技術研修目的の利用もあり、発展途上国には特に日本の高度な製造技術の習得を求める傾向が強く、勤労意欲の高い人材が期待できます。

今後注目の職種はこれだ!

今、注目の職種は、2017年11月から新たに加わった「介護」です。
団塊の世代が75歳を超える2025年には約34万人不足するといわれる介護職には、これまでもEPA(経済連携協定)などでインドネシア、フィリピン、ベトナム等から外国人労働者を受け入れてきましたが、外国人技能実習制度に加わったことで、業界から強く期待されています。
ただし、介護固有要件として、入国時に日本語能力検定N4水準で、2年目にN3以上の能力を有するという高いハードルが設けられており、期待とは裏腹になかなか受け入れには至っておりません。今後は、要件の緩和も想定され、2019年4月からの特定技能での入国も可能になることから、これからの動きに注目です。

もうひとつは、「ベッドメイク作業(客室整備作業)」です。
ビルクリーニング職種は、2016年に技能実習2号移行職種として認定を受けましたが、ベッドメイク作業(客室整備作業)は、技能審査基準で除外作業とされていました。客室清掃は実習できるが、ベッドメイクやアメニティ交換作業等の客室整備は対象外とされていたのです。これが2017年5月から認められるようになりました。
それまでホテルのベットメイキングといえば、ネパール等の留学生のアルバイトとして定番でしたが、実習制度のビルクリーニング職種で認められたことで、フルタイムでの雇用が可能になりました。外国人旅行客増により、ホテルや宿泊施設での人材不足の声が上がるなか、正式な労働者の人材源として有望です。

このように、多種多様な職種において技能実習生の就業が大きな支えとなっていますが、社会状況の変化は需要の集中をもたらします。受け入れを検討する企業においては、自社で求める人材が技能実習の対象職種に入っているのか、どの作業に該当するのか、また、どのような研修を行えば技能審査基準をクリアできるのか等について、送出機関や監理組合に相談をしながら、速やかに進めていくことが成功のカギと言えるでしょう。