新潟県津南町「恵福園」のグローバル採用事例

コラム
COLUMN
「外国人技能実習リアルタイム24時」 ー東南アジア各国からの現地報告ー ビル新聞2022年4月25日号掲載「新潟県津南町「恵福園」のグローバル採用事例」の話題。

1.積極的なグローバル人材起用

先日、新潟県津南町で特別養護老人ホーム「恵福園」を運営する社会福祉法人つなん福祉会の統括施設長 涌井巧さん(写真右)に話を聞く機会を得た。

津南町といえば、日本一の豪雪地帯として有名で、冬場のピーク時には積雪3m超に及ぶほどだ。町全域が特別豪雪地帯に指定されており、今年2月に積雪419cmと観測史上1位を更新したことは記憶に新しい。

そのような場所で、温暖な東南アジアから来日した20名もの若者が、日々献身的にお年寄りの介護にあたっている。出身国はフィリピン、ミャンマー、ネパール、タイ、中国と多国籍だ。就業ビザも技能実習、特定技能、永住者と多岐に渡る。

地元では、「様々な国籍の人材が集う老人ホーム」として評判の施設だ。

2.技能実習生の活用が転機に

昨年40周年を迎えた同法人の、外国人採用は15年ほど前のフィリピン人永住者にはじまり、その後、実習生、特定技能人材と制度整備にあわせて展開されてきた。

中でも三年前の初めての実習生採用は、ひとつの転機となったようだ。

当時はまだ情報が少なく、新潟県内で介護職種の受入れができる監理団体もなかった。手探りの状態で検討を進める中、涌井さん自らが何度も東京へ足を運び、情報収集と協力者探しに奔走した。

ようやく意中のミャンマー送出機関を見つけてからも、採用計画、現地面接、受入れ準備と、実習生の受入れを主導した。苦労の甲斐あって4人の優秀なミャンマー人実習生が入社し、現在も期待以上の活躍をしてくれているそうだ。

涌井さんは、経営資源が潤沢ではない小規模の介護事業者こそ、手間暇惜しまず出来ることを自力で行うことが重要だという。

単純にコスト削減の面だけでなく、各制度の仕組みや実務ベースでの細々としたことを理解する機会にもなり、それがまた次の採用活動に活かされることになるからだそうだ。

実際に恵福園が様々な国や就業ビザに応じた受入れを実現出来ているのも、独自のハウツー蓄積の証といえるだろう。

3.涌井さんが想う、外国人採用への見解

その一方で、日本人従業員に対する、外国人への理解を深める教育が重要だという。

「介護の仕事は人を相手にし、人に寄り添う仕事。外国人の文化や価値観の違いを理解することに努めれば、何も問題なんて起こらないんですよ」と涌井さん。

この考え方を現場で実践することで、国が異なるスタッフ間の人間関係が円滑になり、結果として利用者への質の高いサービスが実現できているそうだ。

「一人ひとりをみて、その子たちの個性に合わせた教育をしていく。それは日本人と同じこと」と涌井さんは続ける。

つなん福祉会では、職場に外国人が居ることはもはや当たり前であり、必要不可欠な存在となっている。

2025年には32万人不足するともいわれる日本の深刻な介護問題。この雪国の事例に、それを解消に導く光明を見る思いがした。

 

(※このコラムは、ビル新聞2022年4月25日号掲載「新潟県津南町「恵福園」のグローバル採用事例」Vol.38を加筆転載したものです。)