「特定技能」の試験はどこでどのように行われるの?
14職種それぞれの試験実施状況を紹介
投稿日:2019年7月11日1.2019年4月から順次試験が開始
「特定技能1号」合格率は7割強
2019年4月に改正された入出国管理法において、新たな在留資格として「特定技能」がスタートしました。「特定技能」に関する新たな法律の施行と同時に、この在留資格を取得するための特定技能試験も各地で順次、始まりました。
技能実習生を受入れている受入企業にしても、特定技能試験についてはかなり気になったことでしょう。既に、「特定技能」試験の結果が出ていますので、どのような場所で、どれだけの人たちが受験をしたのか、見ていきましょう。
6月末現在、特定技能試験が実施された業種は「外食」・「宿泊」・「介護」の3分野になります。
◆第1回外食技能測定試験
- ・管轄:一般社団法人外国人食品産業技能評価機構(OTAFF)
- ・試験会場:東京、大阪の計2会場(国内のみ)
- ・試験日:4月25日、26日
- ・受験者数:東京会場280人、大阪会場180人の計460人
- ・合格者数:東京会場208人、大阪会場139人の計347人
- ・合格率:東京会場74.3%、大阪会場77.2%の計75.4%
◆第2回外食技能測定試験
- ・管轄:一般社団法人外国人食品産業技能評価機構(OTAFF)
- ・試験会場:札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、岡山、福岡の計7会場(国内のみ)
- ・試験日:6月24日、27日、28日
- ・合格発表:7月上旬
◆第1回宿泊業技能測定試験
- ・管轄:一般社団法人宿泊業技能試験センター
- ・試験会場:札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡の計7会場(国内のみ)
- ・試験日:4月14日(日曜日)
- ・受験者数:計391人
- ・合格者数:計280人
- ・合格率:71.6%
◆第1回介護技能実習評価試験(フィリピン)
- ・管轄:一般社団法人シルバーサービス振興会)
- ・試験会場:フィリピンのみ
- ・試験日:4月13、14日
- ・受験者数:計113人
- ・合格者数:介護技能評価試験94人、介護日本語評価試験97人の計280人
- ・合格率:介護技能評価試験は83.2%、介護日本語評価試験は85.8%
- *なお、両評価試験に合格したのは、84人で、合格率は74.3%
「厚生労働省 介護分野における新たな外国人材の受入れ(在留資格「特定技能」について)」
各特定技能試験の受験日や受験者数、試験概要および試験結果についてなど、公表されている内容は上記のとおりです。全体的にみると、合格率は70%を超えている職種がほとんどで、合格率の高さが目立ちます。
合格基準については、外食業で公表しており、学科試験及び実技試験の合計得点の65%以上と設定しています。
現在(2019年6月30日現在)までのところ、3職種だけの実施ですが、新聞やテレビなどのマスコミ媒体でも報じられたように、申込者数が多数あり、申し込み開始からあっという間に規定数に達した職種もあったようです。急遽、日程を追加して試験を増やし実施予定とする職種も出てくるなど、改めて「特定技能」の在留資格に対するニーズの高さがうかがえました。
「特定技能」の試験は、「技能実習」移行に関する試験や検定試験と同じく、受験する職種の実技試験のほか、日本語の語学力を測定する語学試験に分けて実施しています。実技試験は、各分野の試験を管轄する団体などで実施しますが、語学については、独立行政法人国際交流基金が主催する「国際交流基金日本語基礎テスト」を受験することになります。
すでに、複数回の試験を実施している職種もありますが、今後の試験予定などについては別表の通りとなっています。国外での実施予定は、未だ不確定な状況であり、今年度中に一気に動き出すようなことはなさそうです。
(出典:「外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議(第4回)」資料より)http://www.moj.go.jp/content/001291692.pdf
2.受験資格について
受験資格については、職種によって若干違いはありますが、すでに実施された外食業、宿泊業、介護を例にとると、次のようになります。
- ○ 試験日に満18歳以上であること。
- ○ 退去強制令書の円滑な執行に協力するとして法務大臣が告示で定める外国政府または地域の権限ある機関の発行した旅券を所持していること(※外食業および宿泊業においては、イラン・イスラム共和国(外食業においてはトルコ共和国も含む)の発行した旅券を所持している者は除外)
- ○ 以下のいずれにも該当しないこと。
- ・ 退学・除籍処分となった留学生
- ・ 失踪した技能実習生
- ・ 在留資格「特定活動(難民申請)」により在留する者
- ・ 技能実習を含め、当該活動を実施するに当たっての計画(以下「活動計画」という)の作成が求められる在留資格で現に活動中の者(その計画の性格上、他の在留資格への変更が予定されていない者、またはその計画により、当該活動終了後に特定の在留資格への変更または在留期間の更新が予定されている者)。
これについては、具体的に以下の在留資格に係る活動計画に基づき活動中の者は除外とされます。- -「技能実習」
- -「研修」
- -「特定活動(日本料理海外普及人材育成事業)」
- -「特定活動(特定伝統料理海外普及事業)」
- -「特定活動(製造業外国従業員受入促進事業)」
- -「特定活動(インターンシップ)」
- -「特定活動(外国人起業活動促進事業)」
- -「経営・管理(外国人創業人材受入促進事業)」
この他、外食業においては、『中長期在留者(出入国管理および難民認定法第19条の3に規定する者をいい、「3月」以下の在留期間が決定された者、「短期滞在」、「外交」、「公用」のいずれかの在留資格が決定された者、特別永住者および在留資格を有しない者等を除く)であること、または過去に本邦に中長期在留者として在留した経験を有する者であること』といった要件や、宿泊業では、『国籍と年齢を確認するため、宿泊業技能試験センターが指定する公的身分証明書の提示』が必要になったりもします。
外食業:「外食業特定技能1号技能測定試験実施要領 」
宿泊業:「一般社団法人 宿泊業技能検定センター 新規登録画面」
介護:「厚生労働省 介護分野における新たな外国人材の受入れ(在留資格「特定技能」について)」
3.受験申し込みについて
受験登録手続き
受験の登録手続きについては、外食業、宿泊業、介護に関していうと、3職種に共通しているのは、インターネットを利用して申し込む方法が取られています。
ご参考まで、詳しい手続きの方法などについては、下記の各業種のサイトで確認してみてください。
外食業:「外食業特定技能1号技能測定試験実施要領 」
宿泊業:「一般社団法人 宿泊業技能検定センター 新規登録画面」
介護は、上記2職種同様、ネットからの申し込みですが、外食・宿泊とは少し異なり、期間中に介護技能評価試験および日本語評価試験それぞれのバウチャー券(予約証明書のようなもの)を申し込み、その後、専用のウェブサイトで抽選が行われます。バウチャー券の購入が決定し、介護技能評価試験および介護日本語評価試験の申し込みが終了してから、国際交流基金日本語基礎テストの申し込みを行います(日本語能力試験がN4以上を取得している者は除く)。なお、国際交流基金日本語基礎テストの申し込み方法は、Eメールによって通知されます。詳しくは、下記URLを参照ください。
「厚生労働省 介護分野における新たな外国人材の受入れ(在留資格「特定技能」について)」
今後、他の職種の受験案内がサイトなどを通じて掲載されますので、各職種の管轄している団体もしくは監督官庁のサイトで動向を確認するとよいでしょう。
4.試験科目について
1-1.試験水準
各職種には、「特定技能1号」に関する試験水準が設けられています。
外食業をみると、「日本国の外食業における実務経験年数の合計が平均2年程度(1~3年程度)の者が、本試験に特化した学習用テキスト等を用いた準備を行わずに受験したとき、5割程度が合格する水準」としています。
また、介護では、「介護職種・介護作業の第2号技能実習修了相当の水準である介護技能実習評価試験と同等の水準(介護業務の基礎となる考え方等に基づき、利用者の心身の状況に応じた介護を自ら一定程度実践できるレベル)」とうたっています。
「技能実習2号」を良好なかたちで修了したとする在留資格を有する技能実習生は、無試験で「特定技能1号」に移行できることから、技能実習2号修了者以外の方が受験する場合には、「技能実習2号」レベル同等もしくはそれ以上の技能と日本語能力が必要になります。
1-2.試験科目
試験科目は、各職種の「技能実習2号」の水準に合わせて、実技試験と日本語語学試験が課せられています。「技能実習2号」は、技能実習で3年間実習を行ったレベルとなりますので、決して低くはありませんが、日本語についてはある程度の理解力がついていて、技能レベルも中程度という基準といわれています。
試験科目については、どの職種も技能(学科試験、実技試験)と、日本語能力試験の2つに取り組むことになります。
一例として、外食業では受験の申請時に、3つの異なる配点タイプから試験を選ぶことができます。標準的なAタイプのほか、「飲食物調理」の配点が高く「接客全般」の配点が低いBタイプ、「接客全般」の配点が高く「飲食物調理」の配点が低いCタイプです。問題用紙は同じで、問題数も変わりませんが、得意不得意のある人にとっては、有利になる場合もあります。
1-3. 試験実施方法
試験の実施方法は、ペーパーテスト方式や、コンピュータ・ベースド・テスティング(CBT)方式などを採用しています。
出題の形式ですが、国内においては基本的に日本語による出題になります。
国外においても日本語による出題が基本ですが、介護においては試験実施国の現地語で出題されています。詳細は各団体および監督官庁などのサイトで確認できます。
5.特定技能2号試験について
今回の新在留資格「特定技能」は、「特定技能1号」のほか、「特定技能2号」も設定されていますが、14業種すべてではなく、建設と造船・舶用工業の2業種のみとなります。
「特定技能2号」は、「特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する」というレベルをはかるために、日本語能力はもちろんのこと、専門的な技能・知識も要求されることになります。
一例として、建設の業種において、「特定技能2号」試験の概要をみると、次のように定められています。
「建設分野特定技能2号評価試験(仮称)」または「技能検定1級」
○ 技能水準および評価方法
(技能水準)
当該試験への合格および建設現場において複数の建設技能者を指導しながら作業に従事し、工程を管理する者(以下「班長」という)としての実務経験(必要な年数については、試験区分ごとに国土交通省が別途定める)を要件とする。
当該試験は、上級の技能労働者が通常有すべき技能を有する者であることを認定するものである。また、班長としての実務経験を確認することで、その者が建設現場において複数の技能者を指導しながら作業に従事し、工程を管理する能力も有すると認められる。
(試験概要)
(1)「建設分野特定技能2号評価試験(仮称)」試験言語:日本語
実施主体:国土交通省が試験機関として定める建設業者団体
実施方法:学科試験および実技試験
実施回数:年1回から2回程度(国内)
開始時期:平成33年度(令和3年度)予定
(2)「技能検定1級」
試験言語:日本語
実施主体:都道府県(一部事務は都道府県職業能力開発協会)
実施方法:学科試験および実技試験
実施回数:各都道府県職業能力開発協会における試験の実施回数(国内)
「国土交通省 建設分野における新たな外国人材の受入れ(在留資格「特定技能」」
「特定技能1号」試験は今年4月から随時実施していますが、「特定技能2号」については2年後を予定しています。「特定技能2号」による在留期間は、規定では3年で、1年または6ヵ月ごとに更新となっていますが、実質的に制限はなくなります。さらに、要件を満たせば家族の帯同も許可されることから、今後も日本で就労を考える人にとっては、「特定技能1号」で実績を積んだのち、2年後の「特定技能2号」に移行することもひとつの方法といえます。