逆境を乗り越えたフィリピン日本語学校

コラム
COLUMN
「外国人技能実習リアルタイム24時」 ー東南アジア各国からの現地報告ー ビル新聞2024年6月24日号掲載「逆境を乗り越えたフィリピン日本語学校」の話題。

1.閉校の危機から驚異的な復活!フィリピン日本語学校「ワンワールド」

コロナ禍後の外国人入国再開から約2年が経過し、技能実習生の来日は回復傾向にある。

一方、送り出し各国では、コロナ禍を引きずる送出機関や日本語学校が厳しい経営状況を余儀なくされ、淘汰が進んでいる。

フィリピンでも多くの日本語学校が閉鎖に追い込まれ、その数は1/3程度に減少した。

そんな中、驚異的なV字回復を遂げた日本語学校がある。

中津晃一さん【写真前列右から3人目】が運営する「ワンワールド日本語学校」だ。

新校舎開校直後の2020年にコロナ禍に見舞われ、一時は閉校の危機に直面したが、その逆境をバネに新たな需要を掘り起こし、事業を拡大させている。

 

2.高い要求に応え続ける!ワンランク上の日本語教育でN3、N2合格も達成

もともとワンワールドは、2017年に介護職に特化して立ち上げられ、質の高い日本語教育に定評があった。

コロナ禍で多くの日本語学校が衰退してゆく中で存在感を増し、その教育力が評判となり、2022年には大手建設会社の監理団体から声がかかった。

ややもすれば建設職種では日本語能力の高さはさほど求められず、安く早く教育を済ませる傾向があるが、この案件では入国後の日本語検定N4合格を見据えた教育を要請され、年間150名もの建設職種の実習生の教育を受託した。そこで通常の倍の640時間の日本語教育プログラムを開発し、元来の粘り強さを発揮して見事期待に応えた。

そして翌年、同じ建設会社から新たなオーダーが舞い込んだ。N3レベルの日本語能力を必要とする人材の教育だ(技術・人文・国際ビザ)。

同校にとっては新しいチャレンジだったが、対象者11名全員が12ヶ月でN3に合格するという快挙を達成した。(内3人がN2合格という嬉しいおまけ付き)。

3.ピンチをチャンスに!新校舎増設でフィリピン人材育成を加速

ワンワールドの躍進を支えるのは、中津さんが唱える「ピンチをチャンスに変える」という不屈の精神と、フィリピン人材への深い理解だ。

「フィリピン人は明るく、ホスピタリティが高い。彼らの可能性を最大限に引き出したい」と中津さんは語る。

そしてワンワールドは、さらなる成長を見据えている。

マニラから車で1時間ほどのカローカン市に、200人収容可能な大規模な新校舎を建設し、年間400人以上の人材を輩出できる体制を整える計画だ。寮も完備し、生徒が安心して学習に集中できる環境を提供する。

ワンワールドの挑戦は、コロナ禍で疲弊したフィリピン経済に活力を与え、日本企業の人材不足解消にも貢献するだろう。

彼らの成功は、「ピンチをチャンスに」という言葉を体現しており、周囲の人々に勇気と希望を与えてくれる。

日本語学校業界は、コロナ禍や技能実習制度の変更など、大きな変化の中にいる。しかし、困難な状況下においても、正しい戦略とたゆまぬ努力によって未来を切り拓くことができることを、ワンワールドは証明してくれた。

 

(※このコラムは、ビル新聞2024年6月24日号掲載「逆境を乗り越えたフィリピン日本語学校」Vol.54を加筆転載したものです。)