【漁業×特定技能】人材不足の荒波を乗り越える!!外国人材の力で日本の漁業を活性化しよう!
~特定技能制度で持続可能な漁業経営を目指す~
投稿日:2024年11月21日日本の漁業は、私たちの食卓に新鮮な魚介類を届けてくれるだけでなく、地域経済を支え日本の伝統文化を育んできた、なくてはならない存在です。
しかし、近年、漁師さんの高齢化や後継者不足が進み、深刻な人手不足に陥っています。
このままでは、日本の漁業の未来が危うい状況です。
<海面漁業経営体数、漁業就業者数>
令和4年(2022年)の概数値によると、漁業就業者数は12.3万人まで減少しています。平成25年(2013年)の18.1万人と比較すると、約10年間で32%もの減少を示しています。特に注目すべきは、この減少傾向が一貫して続いていることです。
さらに、高齢化の問題も顕著です。
65歳以上の就業者数は令和4年時点で4.6万人となっており、全体の約37%を占めています。この割合は平成25年から大きな変化はありませんが、全体の就業者数が減少する中で高齢者の割合が維持されているということは、若い世代の新規参入が十分でないことを示唆しています。
海面漁業経営体数も同様に減少傾向にあり、平成25年の9.5万経営体から令和4年には6.1万経営体まで減少しています。これは約36%の減少率であり、漁業経営の継続が困難になっている状況を反映しています。
これらの状況から、多くの漁業関係者が将来への不安を抱えています。
「このままでは、漁業を続けられないかもしれない…」
「後継者がいないため、廃業も考えている…」
「人手が足りず、漁に出られない日もある…」
など、多くの漁業者が共通の悩みを抱えているのではないでしょうか?
この深刻な人手不足を解消する切り札として、近年注目されているのが外国人材の活用です。
2019年4月に始まった特定技能制度により、漁業でも外国人材の採用が可能になりました。
この制度を活用することで、人材不足を解消し、漁業の活性化を図る動きが広がっています。
例えば、北海道のある漁業協同組合では、特定技能制度を利用してベトナム人材を採用し、人手不足を解消しただけでなく、外国人材の真面目な仕事ぶりが、既存従業員のモチベーション向上にも繋がっています。また、長崎県のある養殖業者では、インドネシア人材を採用し、多様な文化背景を持つ人材との交流を通して、新しい養殖技術の導入に成功したそうです。
このように、外国人材の活用は、単なる人手不足の解消だけでなく、漁業の成長や新たな価値創造にも繋がる可能性を秘めているのです。
この記事では、特定技能「漁業」の詳細要件や、外国人材の雇用プロセスをわかりやすく解説します。
ぜひ、最後まで読んで、特定技能の外国人材採用について理解を深めてください。
特定技能「漁業」は、どのような業務内容?
特定技能外国人は、日本人と同じように漁業や養殖業の仕事ができます。
すでにご存じの方も多いと思いますが、具体的には、以下のような業務内容です。
「漁業」の場合
<関連する業務>
作業項目 | 説明 |
---|---|
船の掃除や修理 | 漁船の甲板や船底を清掃したり、簡単な修理を行う |
漁具の手入れ | 網や釣り糸の補修、漁具の洗浄などを行い、漁具の状態を良好に保つ |
餌の準備 | 釣りの餌となる小魚やイカなどを準備する |
氷の積み込み | 漁獲物を鮮度を保つために、漁船に氷を積み込む |
食事の準備 | 漁に出る際の食事や飲み物を準備する |
捕れた魚をいけすで生かしておく | 捕れた魚をいけすに移し、生きたままの状態を保つ |
魚市場での魚の仕分け | 水揚げされた魚を種類やサイズごとに仕分ける |
漁業体験に来たお客さんの手伝い | 漁業体験に来たお客さんのサポートを行う |
研修への参加 | 漁業に関する知識や技術を深めるための研修に参加する |
「養殖業」の場合
<関連する業務>
作業項目 | 説明 |
---|---|
船の掃除や修理 | 養殖場への移動や作業に使用する船の清掃や簡単な修理を行う |
養殖場の掃除 | 養殖場の網やいけすの清掃、周辺の環境整備を行う |
餌となる魚や稚魚の捕獲 | 養殖する魚のエサとなる魚や稚魚を捕獲する |
いけすの掃除 | 養殖魚を飼育するいけすの清掃を行う |
鳥や獣から養殖場を守るための対策 | 鳥や獣による食害を防ぐための対策を行う(ネットの設置など) |
収穫した物の運搬や販売 | 収穫した魚介類を市場や販売店に運搬する |
魚市場での仕分け | 収穫した魚介類を種類やサイズごとに仕分ける |
漁業体験に来たお客さんの手伝い | 漁業体験に来たお客さんのサポートを行う |
研修への参加 | 養殖に関する知識や技術を深めるための研修に参加する |
特定技能ビザで認められているのは、あくまで漁業や養殖業の仕事が中心です。
船の掃除や漁具の手入れなどは、漁業や養殖業を行う上で必要な作業だから認められているのであって、それらの作業だけを行うことはできません。
例えば、漁師さんが漁に出るために船を掃除したり、漁具を修理したりするのは問題ありませんが、漁には全く出ないで、船の掃除や修理だけをするのは認められていません。同じように、養殖業で働く人がいけすを掃除したり、餌を準備したりするのは問題ありませんが、養殖場の掃除や餌やりだけをするのは認められていません。
あくまでも、漁業や養殖業が中心で、その他の仕事はそれに付随して行う必要があることを忘れないでください。
どのような場所で働ける?
特定技能「漁業」の資格があれば、 どんな漁業や養殖業でも働くことができます 。
例えば、遠洋漁業でマグロを捕ったり、沿岸漁業でアジを捕ったり、養殖場で牡蠣や海苔を育てたりすることができます。
ただし、 働くことができるのは、漁業協同組合などに加入している漁業や養殖業の会社だけです 。
水産加工会社のように、魚を加工して販売する会社で働くには、「特定技能 飲食料品製造業」の資格が必要になります。
外国人材を採用すると、どんなメリットがある?
外国人材を採用することで、人手不足を解消できるだけでなく、漁業に新たな風を吹き込み、成長を加速させる可能性も秘めています。
1.人材不足を解消して、仕事がもっと楽になる!
漁業は、重労働や長時間労働が多く、天候に左右される大変な仕事です。
そのため、若い人がなかなか集まらないのが現状です。
外国人材を採用すれば、この人手不足を解消できるだけでなく、ベテランの漁師さんの負担を減らし、より効率的に仕事を進めることができるようになります。
特定技能制度では、直接雇用だけでなく派遣雇用も認められています。必要な時に必要な人数だけ確保できるので、人材管理の負担を軽減できます。
2.新しい技術や今までにないアイデアが生まれる!
外国人材は、母国で培ってきた独自の漁業技術や知識を持っている場合があります。
彼らから新しい技術やアイデアを学ぶことで、日本の漁業をより効率化したり、品質を向上させたりすることができるかもしれません。
また、外国人材の視点を取り入れることで、今までにない新しい商品やサービスが生まれる可能性もあります。
3.外国人材が漁業の未来を担う!
特定技能2号の取得が可能になったことで、外国人材を長期的に雇用し、人材育成を行うことができるようになりました。外国人材を育成することで、将来を担う人材を確保し、安定した漁業経営を築くことができます。
また、外国人材に日本の漁業技術を継承することで、伝統を守りながら、未来の漁業を創造していくことができます。
このように、外国人材を採用することは、人手不足の解消だけでなく漁業全体の活性化に繋がる可能性があります。外国人材の力を借りて、漁業をもっと盛り上げていきましょう!
そもそも特定技能制度とは、どんな制度?
特定技能制度は、2019年に始まった制度で、人材不足を解消し、日本の経済を活性化させることを目的としています。一定の技能と日本語能力を持つ外国人材を受け入れ、即戦力として活用することができます。
技能レベルに応じて、「特定技能1号」と「特定技能2号」の2つの在留資格が設けられています。
項目 | 特定技能1号 | 特定技能2号 |
---|---|---|
対象分野 | 16分野全て | 介護分野を除く11分野 |
在留期間 | 最長5年 | 期限なし |
技能レベル | 各分野の技能試験に合格 | より高い技能・知識を持ち、1号の要件を満たす |
家族の帯同 | 不可 | 可能 |
- 転職の自由
同じ職種内であれば、自由に転職することができます。
誰でも特定技能人材になれる?
日本で漁師として働くためには、特定技能「漁業」の資格が必要です。この資格を得るには、漁業の知識や技術、そして、日常生活で困らない程度の日本語力を持っていることを証明する必要があります。
具体的には、以下のいずれかの要件を満たしている必要があります。
・漁業技能測定試験(漁業または養殖業)に合格する
漁具の使い方や魚の捕り方、安全に関する知識など、漁師として働くために必要な知識や技術を問う試験です。
「漁業」と「養殖業」の2つの種類があります。
漁業
漁船の操縦方法、漁具の使い方、魚の捕り方、安全に関する知識などを測ります。
※かつお一本釣り漁業、延縄漁業、いか釣り漁業、まき網漁業、ひき網漁業、刺し網漁業、定置網漁業、かに・えびかご漁業、棒受網漁業のいずれかの技能実習2号(3号)を良好に修了した人は、「漁業」の技能試験が免除されます。
養殖業
養殖場の管理方法、魚介類の育て方、水質管理、病気の予防などを測ります。
※ほたてがい・まがき養殖の技能実習2号(3号)を良好に修了した人は、「養殖業」の技能試験が免除されます。
・日本語能力
国際交流基金日本語基礎テストまたは日本語能力試験(N4以上)に合格する。
日本で生活するために必要な日本語力を測る試験です。
※技能実習2号・3号を良好に修了している場合は、日本語能力試験は免除されます。
外国人材を採用する際は、これらの内容をすべてクリアできているか必ず確認しましょう。
特定技能人材の採用はどうするの?
外国人材を採用する方法は、いくつかあります。
1.人材紹介会社を活用する
特定技能に特化した人材紹介会社を利用することで、適切な人材のマッチングからビザ申請手続き、入国時の対応までサポートを受けることができます。
初めて特定技能外国人を採用する場合に効果的です。
2.登録支援機関を利用する
登録支援機関は、特定技能外国人の生活支援や就労支援を行う専門機関です。 人材紹介会社が登録支援機関を担っているケースもあります。
人材紹介から支援計画の作成、在留手続きのサポートまで幅広いサービスを提供しています。
3.直接外国人材を採用する
海外に住んでいる外国人を直接採用する方法です。 企業が自ら海外の人材と連絡を取り合い、オンライン面接などを通して採用候補者を選考します。
ビザの申請など、必要な手続きもすべて企業自身で行う必要があります。
4.技能実習生から移行する
技能実習生として雇用している外国人を特定技能に変更することができます。
ただし、すべての技能実習生が特定技能「漁業」に移行できるわけではありません。
「漁業職種」の技能実習2号を良好に修了した方、または技能実習3号の実習計画を満了した方が対象となります。
5.留学生を採用する
現在アルバイトとして雇用している留学生がいる場合、特定技能の試験に合格すれば、特定技能に変更することができます。
外国人材を受け入れるための準備内容
すぐにでも外国人材を採用したい!と思っても、どんな会社でも採用できるわけではありません。
外国人材を受け入れるためには、いくつかの条件をクリアする必要があります。
・ 漁業権を持っている
漁業権とは、特定の海域で魚を捕る権利のことです。
そもそも、この権利がないと漁業を行うことはできません。
・漁業特定技能協議会の会員になっていること
漁業特定技能協議会とは、外国人材の受け入れや支援を行うための組織です。
外国人材を雇用するためには、この協議会の会員になり、協議会が定めたルールを守る必要があります。
・外国人材が安心して働けるようにサポートすること
外国人材が安心して働けるよう、生活や仕事のサポート体制を整える必要があります。例えば、住居の提供、日本語教育の支援、生活に必要な情報の提供などを行うことが大切です。
これらの条件を満たすことで、企業は外国人材を受け入れる準備が整ったとみなされます。
外国人材の採用を検討している企業は、事前にこれらの要件をしっかりと確認しておきましょう。
派遣会社を利用する場合
派遣会社を通して外国人材を雇用する場合、その派遣会社は以下の条件を満たしている必要があります。
・漁業や養殖業に関係する会社(団体)である
漁業会社、養殖会社、漁協、漁業協同組合、漁業協同組合連合会など。
・地方公共団体(都道府県や市町村)が半分以上のお金を出している会社である
信頼できる経営基盤を持つ会社でなければいけません。
・地方公共団体の職員が、その会社で重要な役割を担っている
公正な運営が行われているかどうかのチェック体制が求められます。
これらの条件を満たしていない派遣会社を通して外国人材を雇用することはできませんので、ご注意してください。
外国人材を採用する流れ
外国人材の採用は、日本人採用とは異なる点があります。
スムーズに外国人材を採用するために、事前準備からの流れを紹介します。
ステップ | 内容 |
---|---|
事前準備 | 就業規則、賃金システム、住居、生活環境の整備 |
人材募集 | 人材紹介会社や現地機関の活用、求人サイト、ハローワークなど |
面接 | 書類選考、面接(日本語能力、技能、コミュニケーション能力などを評価) |
雇用契約 | 雇用契約書締結(労働条件を明確にし、外国人材にも理解できるように説明) |
ビザ申請 | 特定技能ビザ申請(必要な書類を揃えて申請) |
入社前準備 | 住居確保、生活環境整備 |
入社オリエンテーション | 会社規則、業務内容、安全衛生教育など |
業務開始 | 実際の業務開始、日本人スタッフとのコミュニケーション促進 |
定期的な面談 | 業務や生活面での課題を早期に発見するための面談 |
外国人材を雇用する上での3つのポイント
外国人材の雇用は、人手不足解消の有効な手段となります。しかし、採用する際には注意すべき点もあります。
1.安全衛生教育の徹底
漁業は、危険を伴う作業が多く、安全衛生教育が非常に重要です。外国人材にも、安全衛生に関する知識をしっかりと理解させ、安全に作業できるよう指導する必要があります。
具体的には、以下の点を徹底しましょう。
・安全衛生に関する研修の実施
漁業特有の危険性、安全対策、保護具の使用方法などを、外国人材にも理解できるよう多言語での研修資料を用意したり、通訳を付けるなどの配慮が必要です。
・作業手順の明確化
作業手順を図解や動画などを用いてわかりやすく説明し、外国人材が安全に作業を行えるよう指導する必要があります。
・緊急時の対応訓練
緊急時の連絡体制や避難経路などを外国人材に周知し定期的な訓練を実施することで、いざというときに適切な行動が取れるように備えるようにしましょう。
2.適切な就労状況の管理
外国人材の就労状況を適切に管理することは、企業の責任です。
在留管理局への届出や不正就労の防止など、外国人材が安心して働けるよう就労状況を適切に管理し、必要なサポートを提供しましょう。
具体的には、以下の点に注意する必要があります。
・就労可能な業務範囲の遵守
漁業や養殖業の主要業務に加えて、関連する業務(漁具の点検、船体清掃など)を行うことができますが、関連業務のみをメインにさせたり、許可されていない業務をさせてしまうと、法律違反となりますので、ご注意ください。
・雇用形態の選択
直接雇用と派遣雇用の両方が可能ですが、それぞれの要件を満たす必要があります。派遣の場合は、適切な資格を持つ派遣事業者を選びましょう。
・配乗人数の管理
漁船1隻あたりの外国人(技能実習生と特定技能外国人の合計)の数が、日本人乗組員の数を超えないようにしましょう
3.日本語レベルの確認
外国人材を採用する際は、日本語レベルをよく確認しましょう。日本語能力試験に合格しているからといって、必ずしも仕事を問題なくできる日本語レベルに達しているとは限りません。
業務に必要な日本語レベルを習得しているか、面接の際に、実際に日本語で会話をして確認することが大切です。
必要に応じて、以下のサポートを提供することで、外国人材の日本語能力向上を支援しましょう。
まとめ
この記事では、人手不足に悩む漁業関係者の皆様に向けて、特定技能制度を利用した外国人材の雇用がいかに有効な解決策となるかをご紹介しました。
外国人材の採用は、単なる人手不足の解消だけでなく、漁業の活性化、地域経済への貢献、さらには多文化共生社会の実現など、様々なメリットをもたらす可能性があります。
ぜひ、この記事を参考にして、外国人材の受け入れを検討してみてはいかがでしょうか?
新たな視点や発想を取り入れることで、今までにない漁業技術の導入や新たな漁場の開拓など、新たなビジネスチャンスが生まれるかもしれません。
外国人材の活躍が、漁業の未来を明るく照らしてくれることを願っています。