1. 受入れ可能な業務区分
特定技能「飲食料品製造業」分野では、以下の業務に従事する外国人材を受け入れることができます。
区分 | 特定技能1号 | 特定技能2号 |
---|---|---|
業務内容 | 飲食料品(酒類を除く)の製造・加工、およびこれに伴う安全衛生管理 | 特定技能1号の業務に加え、現場管理業務 |
主な作業例 | 原料の取扱い:受入れ・検品・計量・調合 製造ライン作業:機械操作・監視、加熱・冷却 充填・包装作業:容器充填、包装・ラベル貼付 製品検査:外観検査、品質検査、選別 衛生管理:作業場の清掃・消毒、機械・器具の洗浄 その他:異物混入防止対策、作業員の衛生管理など | 作業管理:複数の作業員を指導しながらの製造作業 工程管理:製造工程の管理・改善 品質管理:品質の確認、改善指導 トラブル対応:製造過程での問題解決 新製品開発補助:試作品製造、データ収集 その他:作業効率化の提案、衛生管理の指導など |
ポイント
製造する食品の種類は問わず、パン・菓子・麺類・調味料・飲料・乳製品・冷凍食品・惣菜など、幅広い飲食料品の製造現場で活躍できます。ただし、酒類製造は対象外です。
2. 就業可能な場所
特定技能「飲食料品製造業」では、様々な食品を製造する場所で働くことができます。
働ける場所
業種例 | 働ける場所 |
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食料品製造業 | 食肉加工、水産加工、野菜加工、豆腐・納豆製造、パン・菓子製造、飲料製造(酒類を除く)、乳製品製造、調味料製造、冷凍食品製造、乾麺・漬物・缶詰製造など |
清涼飲料製造業 | ジュース、お茶、コーヒーなどを製造する工場 |
茶・コーヒー製造業(清涼飲料製造業は除く) | お茶、コーヒーなどを製造する工場 |
製氷業 | 氷を製造する工場 |
総合スーパーマーケット(食料品製造を行っている場合)※ | 青果物加工、鮮魚加工、食肉加工、ベーカリー製造、そう菜製造などを行うスーパーマーケット |
食料品スーパーマーケット(食料品製造を行っている場合)※ | 青果物加工、鮮魚加工、食肉加工、ベーカリー製造、そう菜製造などを行う食料品スーパーマーケット |
菓子小売業(製造小売) | 和菓子、洋菓子などを製造・販売する店 |
パン小売業(製造小売) | パンを製造・販売する店 |
豆腐・かまぼこ等加工食品小売業(製造小売に限る) | 豆腐、かまぼこなどを製造・販売する店 |
※総合スーパーマーケットと食料品スーパーマーケットの場合は、青果物加工、鮮魚加工、食肉加工、ベーカリー製造、そう菜製造等の食料品製造部門のバックヤードが対象となります。
働けない場所
業種例 | 働けない場所 |
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酒類製造業 | ビール、日本酒、ワインなどを製造する工場 |
飲食料品小売業 | スーパーマーケット、コンビニエンスストアなど |
飲食料品卸売業 | 食品卸売業者 |
塩製造業 | 塩を製造する工場 |
医薬品製造業 | 医薬品を製造する工場 |
香料製造業 | 香料を製造する工場 |
ペットフードの製造 | ペットフードなどを製造する工場 |
3. 受入事業者に求められる条件
外国人材を特定技能として受け入れる事業者には、様々な条件や義務が課せられます。しっかり準備を進めましょう。
基礎的な条件
チェック項目 | 審査ポイント |
---|---|
食品衛生法等の関連法規の遵守 | 食品衛生法に基づく営業許可を取得し、HACCPに沿った衛生管理を実施していること |
経営・財務の安定 | 債務超過・滞納なし |
賃金支払能力 | 日本人同等以上の賃金テーブル提示 |
社会保険加入 | 厚生年金・雇用保険など完備 |
法令違反歴 | 過去5年に重大違反がない/是正済証明あり |
担当者体制 | 特定技能専任責任者を配置 |
外国人材への支援体制(法律で定められた10項目の義務)
外国人材が日本で安定して働き、生活できるように、以下の10項目の支援を行う義務があります。 これらの支援は、自社で行うか、国に登録された「登録支援機関」に委託することができます。
主な支援内容
事前ガイダンス、出入国時の送迎、住居確保の支援(保証人になる等)、生活オリエンテーション、公的手続きへの同行、日本語学習機会の提供、相談・苦情への対応、日本人との交流促進、転職支援(事業者都合離職の場合)、定期的な面談。
面談
支援責任者は、外国人材と3ヶ月に1回以上の頻度で面談し、その記録を5年間保管する必要があります。
労務・安全衛生体制
賃金水準
日本人と同等以上の処遇が必須です。 飲食料品製造業分野の特定技能外国人の平均賃金(目安)は地域によって異なりますが、賞与や各種手当も日本人と同等の基準で支給する必要があります。
労働時間
時間外労働が月80時間を超えるような状況が常態化していると、在留資格の更新時に労働基準監督署などから是正指導が入る可能性があります。製造現場では早朝勤務や交代制勤務も多いため、適切な労働時間管理が重要です。適切な労務管理が求められます。
安全衛生教育
厚生労働省や農林水産省が提供する多言語対応の安全衛生教材を活用し、外国人材が理解できる言語で製造機械の安全な操作方法、化学物質の取扱い、食品衛生の基本などの安全教育を徹底することが極めて重要です。
飲食料品製造業・外食業特定技能協議会への加入と各種届出
協議会への加入
- 時期:外国人材の在留資格を申請する前に、加入申請を完了させる必要があります。
- 主催:農林水産省が設置
年次報告
事業年度終了後3ヶ月以内に、特定技能外国人の受入れ状況や支援状況について、協議会へ報告が必要です。
各種届出
雇用契約内容の変更、離職、支援計画の変更などがあった場合は、14日以内に出入国在留管理庁へ届け出る必要があります。
リスク管理
製造現場では、機械による挟まれ・巻き込まれ、食品添加物や洗浄剤などの化学物質による危険、高温・低温環境での作業など、様々な危険が潜んでいます。これらのリスクを適切に管理し、外国人材にも安全作業手順を十分に理解させることが重要です。
また、適切な労務管理や支援計画の実施状況についても、厳しい監督・指導が行われることが想定されます。賃金台帳や支援記録などを定期的に(例えば四半期ごとに)自己点検し、法令遵守の状況を確認することが重要です。
4. 外国人材の要件
技能試験
試験実施機関
一般社団法人外国人食品産業技能評価機構(OTAFF)
特定技能1号の場合
「飲食料品製造業特定技能技能測定試験(1号)」に合格していること。
試験内容
飲食料品製造業全般に関する基礎的な知識(食品衛生、HACCP、労働安全衛生など)を問う学科試験と、基本的な作業技能を評価する実技試験
※飲食料品製造業分野の技能実習2号・3号を良好に修了した方は、技能試験が免除されます。
職種名 | 作業名 |
---|---|
缶詰巻締 | 缶詰巻締 |
食鳥処理加工業 | 食鳥処理加工 |
加熱性水産加工食品製造業 | 節類製造、加熱乾製品製造、調味加工品製造、くん製品製造 |
非加熱性水産加工食品製造業 | 塩蔵品製造、乾製品製造、発酵食品製造 |
水産練り製品製造 | かまぼこ製品製造 |
牛豚食肉処理加工業 | 牛豚部分肉製造 |
ハム・ソーセージ・ベーコン製造 | ハム・ソーセージ・ベーコン製造 |
パン製造 | パン製造 |
そう菜製造業 | そう菜加工 |
農産物漬物製造業 | 農産物漬物製造 |
特定技能2号の場合
「飲食料品製造業特定技能技能測定試験(2号)」に合格していること。
試験内容
より高度な専門知識(品質管理、工程管理、労務管理など)を問う学科試験と、指導・監督能力や問題解決能力などを評価する実技試験
日本語要件
特定技能1号の場合
「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)」または「日本語能力試験(JLPT) N4」以上の合格が必要です。ただし、飲食料品製造業分野の技能実習2号または3号を良好に修了した者は、日本語試験が免除されます。
特定技能2号の場合
特定技能2号評価試験の中で、必要な日本語能力が確認されます。
キャリアパス
飲食料品製造業分野では、特定技能1号から2号へのステップアップが可能です。
特定技能1号で製造技術の基礎を習得し、2号評価試験に合格することで、現場のリーダーとしてのキャリアアップが期待できます。また、食品製造関連の資格(食品衛生責任者など)の取得を通じて、より専門的な知識の習得も可能です。
特定技能2号では在留期間の更新に上限がなく、家族帯同も可能となるため、長期的なキャリア形成が可能になります。
5. 外国人材の主な採用ルート
ルート | 概要 | 標準所要期間※ | 主なメリット |
---|---|---|---|
① 人材紹介会社の活用 | 食品製造業に特化した紹介会社などが、候補者探しから入管手続きのサポートまで代行します。 | 3~6か月 | 採用ノウハウがなくても迅速に進められる |
② 登録支援機関の活用 | 本来の支援業務(10項目)に加え、人材紹介機能を持つRSOも多く存在します。 | 4~8か月 | 法令遵守(コンプライアンス)を担保しやすい/支援業務を委託できる |
③ マッチングイベントへの参加 | 農林水産省や業界団体が主催するマッチングイベントに参加し、直接面接を行います。 | 3~6か月 | 複数の候補者と直接会える/業界団体のサポートを受けられる |
④ 技能実習生からの移行 | 自社または他社で飲食料品製造業関連職種の技能実習2号を「良好に」修了した人材は、技能試験・日本語試験が免除されます。 | 1~3か月 | 即戦力として期待できる/日本の文化や職場に慣れている |
⑤ 留学生からの採用(在留資格変更) | 日本国内の留学生(アルバイト等)が、特定技能に必要な技能試験・日本語試験に合格した場合に採用します。 | 2~4か月 | 日本語能力が高い場合が多い/国内で面接可能 |
※必要書類が全て揃い、候補者が試験に合格している場合の、手続き開始から就労開始までの標準的な目安期間です。
<ルート選定のポイント>
- スピードを重視するなら
→ ① 人材紹介会社 または ④ 技能実習からの移行 - 社内の採用・支援リソースが不足しているなら
→ ② 登録支援機関 - コストを抑えたい、独自の採用要件があるなら
→ ③ マッチングイベントへの参加 - 日本語でのコミュニケーション能力を特に重視するなら
→ ⑤ 留学生からの採用 - 実務経験がある人材を採用したいなら
→ ④ 技能実習からの移行
6. 採用から就労開始までの流れ
1. 人員計画・業務区分の確定
どの業務区分で、何名の特定技能人材が必要かを明確にします。
2. 採用ルート選定・求人開始
上記の「5つの主な採用ルート」を参考に、自社に合った方法を選び、候補者探しを開始します。
3. 候補者の面接・能力確認
面接を実施し、業務に必要な技能レベルや日本語能力(特に製造指示や安全指示の理解度)を確認します。オンライン面接も活用できます。
4. 雇用契約締結・協議会への入会
採用が内定したら、労働条件を明示した雇用契約を締結します。 重要: 在留資格の申請前に、「飲食料品製造業・外食業特定技能協議会」への加入手続きを完了させておく必要があります。
5. 在留資格(特定技能1号または2号)の申請
必要な書類を準備し、出入国在留管理庁へ申請します。(海外から呼ぶ場合は「在留資格認定証明書交付申請」、国内在住者を採用する場合は「在留資格変更許可申請」) 注意: 書類に不備があると、追加の問い合わせ(照会)などで1~2ヶ月程度手続きが遅延する可能性があります。入念なチェックが必要です。
6. 受入れ準備・支援計画の開始
在留資格が許可される見込みが立ったら、住居の確保、銀行口座開設補助、生活オリエンテーションの準備など、事前に定めた支援計画に基づき、受け入れ準備を進めます。
7. 入国・就労開始 (海外からの場合)
来日時の空港への出迎えを行います。 就労開始前に、製造現場での安全教育や食品衛生に関する基本教育などをしっかり実施しましょう。
7. 飲食料品製造業特有の留意点とコンプライアンス
特定技能制度の適正な運用のため、以下の点に特に注意が必要です。
食品衛生管理の徹底
飲食料品製造業では、HACCPに基づく衛生管理が特に重要です。手洗い・消毒の手順、作業服の着用方法、異物混入防止対策など、基本的な衛生管理ルールを外国人材にもしっかり理解してもらうため、多言語での教育資料や、視覚的なマニュアルの作成などを工夫しましょう。
機械設備の安全教育
製造ラインには様々な機械があり、誤った操作による事故のリスクがあります。外国人材には、各機械の安全な操作方法、緊急停止手順、禁止事項などを、実機を使った実習も交えながら丁寧に教育することが重要です。言語の壁を考慮し、絵や写真を活用した説明も効果的です。
アレルギー物質への対応
食物アレルギーは命に関わる問題です。特にアレルギー物質を含む原材料の取扱い、製造ライン切替え時の洗浄・消毒手順、製品表示の確認などについて、外国人材にも重要性を理解してもらい、確実に実行できるよう訓練することが重要です。
夜間・早朝勤務への配慮
食品製造現場では、早朝からの製造開始や、夜間勤務が一般的な場合があります。外国人材の生活リズムや健康管理に配慮したシフト作成を心がけ、通勤手段(特に公共交通機関が利用できない時間帯)の確保なども検討しましょう。
繁忙期対応への理解促進
季節商品や年末年始などの繁忙期には、残業や休日出勤が増える場合があります。こうした業界特有の繁閑差について、採用時点でしっかり説明し、理解を得ておくことが、後のトラブル防止につながります。ただし、適正な労働時間管理は常に徹底する必要があります。
まとめ
特定技能「飲食料品製造業」分野は、人手不足に悩む製造事業者にとって、重要な人材確保の選択肢となり得ます。
日本の安全・安心な食を支えるため、外国人材の専門技能や意欲は大きな戦力となります。特に特定技能2号の導入により、経験を積んだ外国人材が現場のリーダーとして活躍し、より長期間にわたり日本の製造現場を支える道が開かれました。
しかし、初めて外国人を受け入れる事業者向けに制度を正しく活用するには、制度の正確な理解、周到な準備、そして受入れ後の継続的なサポートが不可欠です。
本ガイドで示した情報を参考に、自社の状況に合わせた採用計画を立て、コンプライアンスを遵守しながら、特定技能人材が持つ能力を最大限に引き出し、共に成長できる体制を構築してください。
言語や文化の違いを乗り越え、日本人従業員と外国人材が互いに尊重し合い、協力して「安全・安心でおいしい日本の食」を作り上げていくことが、飲食料品製造業の持続的な発展と国際競争力の強化に繋がるでしょう。
また、わからないことがあれば、農林水産省が設置している無料相談窓口(株式会社JTBに委託)も活用できます。特定技能制度に関する様々な疑問に対応していますので、積極的に利用しましょう。