高度人材

高度人材(技術・人文知識・国際業務)受入前後の申請・準備

在留資格「技術・人文知識・国際業務」について

初めて技術・人文知識・国際業務の在留資格を持つ外国人材の受入れを担当される中小企業の人事ご担当者様や経営者の皆様にとって、受入れ前後に必要となる申請や手続きは、複雑で分かりにくいものに感じられるかもしれません。

このページでは、高度人材外国人材の受入れ前後に焦点を当て、具体的にどのような申請や手続きが必要になるのかを解説します。

必要な手続きを事前に把握し、計画的に進めることで、スムーズに高度人材を受入れることができます。

手続きの全体像

高度人材の受入れ手続きは大きく「受入れ前」と「受入れ後」に分かれます。

受入れ前

1.雇用契約の締結(T-3ヶ月~)

外国人材と雇用条件について合意。契約書を作成・締結。

2.在留資格認定証明書申請(T-2〜1ヶ月)

企業または行政書士が入国管理局へ申請。(COE交付まで1~3ヶ月程度が目安)

3.ビザ申請(T-1ヶ月~)

高度人材 → 現地の日本大使館または領事館で申請。(COE交付後、速やかに申請)

受入れ後(来日・就業開始後)

1.各種届出(住民登録/年金/保険)

来日後2週間以内に居住地の市区町村役場へ。会社内の人事部門が同行・支援することが多い。

2.勤務先に関する届出

外国人雇用状況届出書をハローワークへ提出。勤務先・雇用条件に変更があった場合は届出。

3.在留期間更新・高度専門職への変更申請

在留期間満了の3ヶ月前から申請可能。高度専門職への変更はポイント制で70点以上が必要。

2025年改正ポイント

高度人材に関わる制度は2025年に一部改正されました。主な変更点として、高度人材ポイント制度のポイント加算項目が見直され、日本語能力やイノベーション創出能力への評価が強化されました。また、テレワークによる勤務形態の柔軟化など、企業と高度人材双方の利便性向上が図られています。

受入前の申請書類について

1. 雇用契約の締結

高度人材の受け入れには、職務内容や待遇条件などを明確に定めた雇用契約の締結が必須です。

時期就業開始予定日の3ヶ月前までに
作成者受入企業(人事部門)
内容業務内容、給与、勤務条件等を明記

雇用契約書

業務内容、報酬、勤務時間、休日などを明確に定めます。特に、専門性を要する業務内容の具体的記載や、学歴・職歴に見合った適切な報酬設定が重要です。

外国人材が内容を正確に理解できるよう、日本語と母語の併記が推奨されています。

一般的な労働契約と同様に、労働基準法に則った内容である必要があります。

注意点
  • 在留資格と業務内容の整合性が重要(例:エンジニア職なら「技術」、マーケティング職なら「人文知識」など)
  • 専門的・技術的分野での業務内容を具体的に記載
  • 大卒相当以上の学歴や実務経験に見合った報酬設定
  • 日本人と同等以上の報酬水準の確保

2. 在留資格認定証明書(COE)申請

高度人材が日本に入国するためには、地方出入国在留管理局から在留資格認定証明書の交付を受ける必要があります。

在留資格認定証明書(COE)申請

時期就業開始予定日の2~3ヶ月前まで
申請者受入企業または委託を受けた行政書士
提出先地方出入国在留管理局
提出方法窓口申請または代理人による郵送
主な必要書類
  • 在留資格認定証明書交付申請書
  • 申請人の証明写真(縦4cm×横3cm)
  • 返信用封筒(切手貼付)
  • 雇用契約書の写し
  • 申請人の旅券(パスポート)の写し
  • 申請人の学歴・職歴を証明する書類(卒業証明書、職務経歴証明書など)
  • 会社の登記簿謄本、会社の概要資料(パンフレットなど)
  • 受入企業の財務状況を示す資料(決算書など)
  • 申請人の職務内容を具体的に説明する資料
  • その他、在留資格に応じた疎明資料

申請時期と期間

就業開始予定日の2~3ヶ月前までに行うのが一般的ですが、交付までには平均1~3ヶ月程度かかります。この交付予定日に合わせて、外国人材の航空券や社宅の手配を逆算すると、無駄なくスムーズに進められます。

3. ビザ申請・交付

COEが無事に交付されたら、それを高度人材本人に送付します。
外国人材はCOE原本、旅券(パスポート)、査証申請書などを持って、現地の日本大使館または領事館でビザ(査証)を申請します。

ビザ(査証)申請・交付

時期COE交付後、速やかに
申請者高度人材本人
提出先現地の日本大使館または領事館
主な必要書類旅券、査証申請書、COE原本

申請書類

旅券、査証申請書、COE原本が主な必要書類です。必要書類は国によって異なる場合があるため、申請先の在外日本公館のウェブサイトで確認してください。

交付期間

ビザは申請後、比較的短期間で交付されることが多いですが、念のため早めに手続きを進めましょう。ビザが交付されれば、いよいよ来日が可能となります。

受入後に発生する「必ずやるべき」手続きと対応

高度人材の来日・就業開始後も、企業としての重要な手続きと継続的な対応が求められます。

1. 住民登録・社会保険(来日後14日以内)

来日したら、高度人材はまず居住地の市区町村役場で住民登録(転入届)を行います。
また、日本の社会保険(健康保険・厚生年金)への加入も義務付けられています。

住民登録・社会保険加入

時期来日後14日以内
手続者高度人材(企業担当者が同行支援)
提出先居住地の市区町村役場
主な手続き住民登録、マイナンバー申請、保険加入

これらの手続きは、多くの場合、企業の人事担当者が外国人材に同行してサポートします。円滑な手続きのため、必要な書類などを事前に準備しておきましょう。

来日後14日以内の主な手続き

  • 市区町村役場での住民登録(転入届)
  • マイナンバーカード交付申請
  • 健康保険・厚生年金保険加入手続き
  • 雇用保険加入手続き
  • 銀行口座開設
  • 携帯電話契約

2. 勤務先に関する届出

受入企業は、外国人を雇用した際や雇用状況に変更があった際に届出が必要です。

勤務先に関する届出

時期雇入れ・離職時、雇用条件の変更時
報告者受入企業
提出先ハローワーク、地方出入国在留管理局
記録内容雇用状況、勤務条件の変更など

外国人雇用状況の届出

雇入れ・離職の日から1ヶ月以内に、外国人雇用状況届出書をハローワークに提出する必要があります。

雇用条件の変更

勤務場所や職務内容、給与などの雇用条件に大きな変更があった場合は、地方出入国在留管理局への届出が必要になることがあります。特に、在留資格に関わる職務内容の変更は重要です。

3. 在留期間更新・高度専門職への変更申請

技術・人文知識・国際業務の在留資格は通常1年、3年、5年の期間があり、期間満了前に更新申請が必要です。また、条件を満たせば高度専門職への変更も可能です。

在留期間更新・高度専門職への変更申請

時期期間満了の3ヶ月前から
申請者高度人材(企業担当者や行政書士が支援)
提出先地方出入国在留管理局
更新条件適正な就労・活動状況、法令遵守など

在留期間更新

在留期間が満了する3ヶ月前になったら、出入国在留管理庁へ在留期間更新許可申請書を提出します。就労状況や報酬額、税金納付状況などが審査されます。

高度専門職への変更

高度人材ポイント制度で70点以上を獲得すると、高度専門職へ変更申請が可能になります。高度専門職は在留期間が最長5年(1号)または無期限(2号)となり、複合的な在留活動が認められるなど、様々な優遇措置があります。

ポイント計算の主な項目

  • 学歴(学士/修士/博士)
  • 職歴(年数)
  • 年収(額)
  • 年齢(30代前半が最も優遇)
  • 日本語能力(N1/N2)
  • 研究実績・特許

まとめ

高度人材制度は、専門的・技術的な知識や技術を持つ外国人材を受け入れる重要な在留資格制度です。複雑に感じるかもしれませんが、「制度理解」「適切な準備」「タイムリーな対応」の3つの柱を押さえれば、決して難しいものではありません。

高度人材受入れ成功の3つの柱

制度理解

  • 資格要件の把握
  • 専門性と業務の整合性確保
  • ポイント制度の活用

適切な準備

  • 申請書類の正確な作成
  • 疎明資料の充実
  • 学歴・職歴証明の準備

タイムリーな対応

  • 期限管理の徹底
  • 変更時の速やかな届出
  • 円滑なコミュニケーション

高度人材の受入れに関わる申請や届出は多岐にわたりますが、これらは全て適正な就労環境を確保し、優秀な外国人材の能力を最大限に活かすために必要な手続きです。

特に複雑な手続きについては、行政書士や社会保険労務士などの専門家のサポートを活用し、書類の準備から申請まで正確に行うことをお勧めします。

高度人材制度を活用して企業の国際競争力を高め、イノベーションを促進するためにも、適切な手続きを通じて円滑な受入れ環境を整えましょう。

お問い合わせ 03-5772-7338平日(10:00~19:00)
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