1. 3〜5年間 “計画的に” 人材を確保できる
技能実習制度では、受入れた実習生は原則として途中で転職することがありません。最長5年間(1年目の1号、続く2・3年目の2号、さらに続く4・5年目の3号へステップアップした場合)という、比較的長期にわたって会社に定着してもらえる可能性が高いということです。
そのため、数年単位での人員計画が立てやすくなり、特に慢性的な人手不足に悩む製造業や建設業などでは、工期の安定化や生産計画の精度向上に大きく貢献してくれます。
新しい「育成就労制度」になっても、制度の基本的な考え方として、育成を前提とした3年間の就労期間があり、特定技能への移行も可能です。
実習期間 | 実習内容 (条件) | 習得技能 |
---|---|---|
1号 (1年以内) | 学科研修+現場OJT | 基礎習得 |
2号 (最大2年) | 技能実習計画に基づき実務に従事 (技能検定3級合格が条件) | 応用技能 |
3号 (最大2年) | 技能実習計画に基づき実務に従事 (技能検定2級合格が条件) | 熟練技能 |
最長5年間在留が可能(1号:1年 + 2号:最大2年 + 3号:最大2年)

2. 採用・教育コストを最適化できる
国内での一般的な採用活動では、求人広告費や説明会、面接など、一人を採用するまでに様々な費用がかかります。
技能実習制度の場合、多くの中小企業が利用する「団体監理型」では、現地の送出機関や日本の監理団体が候補者の選定や入国前の研修を行ってくれます。そのため、自社での募集・選考にかかる手間や広告費を大幅に削減できる可能性があります。
また、入国後の研修も、監理団体がある程度サポートしてくれるため、自社の教育担当者の負担を軽減できます。
フェーズ | 一般採用(国内求人) | 技能実習(団体監理型) |
---|---|---|
募集・選考 | 求人広告・面接で毎回費用発生 | 送出機関が人選(履歴書+技能テスト) 広告費ゼロ、面接は現地orオンラインで実施 |
入国前研修 | なし | 160時間以上の技術・日本語研修を送出国で実施 |
入国後研修 | 社内負担 | 1か月講習(法定) 社内講師工数を最小化 |
事例
技能実習生を受入れたことで、結果として「1人あたり年間100万円以上の総コストを削減できた」という製造業の事例も(当社ヒアリング)。コストの可視化と分割払い(監理費)により、中小企業でも資金繰りを組みやすい点が魅力です。
B食品加工会社では、アルバイト・パートの採用に年間数百万円以上の広告費を費やしていましたが、技能実習生6名の受入れに切り替えたことで、採用コストが減少し、さらに離職率も低下したので教育コストの削減にもつながったという事例もあります。
【参考】アルバイト・派遣と技能実習生の月額総コスト比較(一例)
派遣社員 |
---|
時給1,500円×8h×22日=264,000円/月 +派遣手数料(約20%)=317,000円/月 |
技能実習生 |
---|
固定給170,000円 +監理費30,000円 +寮費補助20,000円=220,000円/月 |
※上記は一例です。地域や職種、実習生の経験等により異なります。

3. 社内の活性化と多様性の促進
外国人技能実習生を受け入れることは、社内に新しい風を吹き込みます。
言語や文化の違う実習生に仕事を教える過程で、「どうすれば分かりやすく伝えられるか」を考えるようになり、日本人社員同士のコミュニケーションも活発になることがあります。指導役を若手社員が担うことで、リーダーシップや問題解決能力が養われる機会にもなります。
多様なバックグラウンドを持つ人材がいる職場は、様々な価値観やアイデアが生まれやすく、組織全体の活性化に繋がることが、調査でも明らかになっています。
異文化理解が進み、社員一人ひとりの視野が広がることも大きなメリットです。
多様性がもたらす効果
- コミュニケーション力の向上
- 異文化への理解促進
- 若手社員の指導力・リーダーシップ開発
- 職場の活性化と新しい視点の獲得

4. 作業工程の見直しによる業務改善
技能実習生に分かりやすく教えるために、業務の「見える化」やマニュアル作成が進みます。この過程で、「この作業、本当に必要なの?」「もっと効率的なやり方があるかも」といった業務の無駄や改善点が見えてくることがあります。
言葉の壁を乗り越えるために、作業手順を標準化することも多く、これが結果として5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)や改善活動の定着に繋がります。
定期的に監理団体が行う訪問指導や監査も、外部の視点からのアドバイスとして、品質管理や業務効率化のヒントになることがあります。
業務改善サイクルのイメージ
- マニュアル作成・翻訳
- 実習生が作業実施
- 課題点の可視化
- 工程の改善・効率化
5. 国際貢献と企業イメージ向上
技能実習制度は、もともと開発途上国の「人づくり」を支援する国際協力の制度です。外国人技能実習生を受け入れることは、まさにこの国際貢献に直結する取り組みであり、企業のCSR(企業の社会的責任)活動としても位置づけられます。
外国人材を大切に受け入れ、共に働く姿勢は、企業のイメージアップに繋がり、地域のメディアや業界紙で取り上げられることもあります。これにより、採用活動において「国際的な取り組みを行っている魅力的な会社」としてアピールでき、国内からの応募者にとっても魅力的な企業として映るでしょう。
国際貢献・イメージ向上のポイント
- 技能実習制度は「人づくり」を通じた国際協力であり、SDGs(目標8:働きがいも経済成長も など)にも貢献。
- 外国人材を大切にする姿勢は企業の社会的責任(CSR)活動として評価され、企業イメージ向上に繋がる。
- 地域メディアや業界誌で好事例として取り上げられる可能性があり、広報活動や採用ブランディングに活用可能。
- 実習生との良好な関係は、将来的な海外進出やビジネス展開の足がかりになる可能性も。
まとめ
技能実習生の受入れは、単なる「人手不足の解消策」にとどまらず、計画的な人材確保、コスト最適化、組織活性化、業務改善、そして国際貢献といった多岐にわたるメリットをもたらし、企業の持続的な成長と組織変革を促す投資と捉えることができます。
成功の鍵①:信頼できるパートナー選び
技能実習生の受入れには、現地の送出機関と日本の監理団体が関わります。実績やサポート体制、費用の透明性などをしっかり確認し、信頼できるパートナーを選ぶことが最も重要です。
成功の鍵②:丁寧な育成計画と生活サポート
実習生が安心して技能習得に励めるよう、計画的なOJTだけでなく、住居の手配、日本語学習支援、地域との交流機会など、生活面でのきめ細やかなサポート体制を整えることが定着率向上に繋がります。監理団体との連携を密にしましょう。
成功の鍵③:「労働力」ではなく「人材育成」の視点
単に不足する労働力を補うという考え方ではなく、「将来、母国や日本で活躍できる人材を育てる」という視点を持つことが、実習生との良好な関係を築き、制度を成功させるための鍵となります。これは育成就労制度においても同様に重要視される考え方です。
育成就労制度への移行期にある今、新しい制度の情報を収集し、自社への影響を理解しておくことが、スムーズな移行と継続的な外国人材活用に繋がります。
制度移行タイムライン
2025年 | 2027年 | 2030年 |
---|---|---|
現行制度 | 新制度開始 | 完全移行 |
活用期 | 並行期間 | 育成就労制度へ |
今が、現行制度のメリットを活かしながら、将来の育成就労制度への準備を進める絶好のタイミングです。