話題の「特定技能」。どんな職種ならOKなの?

コラム
COLUMN

「特定技能」として認可された14分野の職種と制度のあらまし

日本における労働者人口の減少などにもより、人手不足が解消されない分野(職種)があるなか、2019年4月より、出入国管理及び難民認定法(いわゆる「入管法」)の改正に伴い、これまで認められてきた外国人の在留資格に加え、14分野の「特定技能」について新たな在留資格が付与されることになった。今回、新規で創設された「特定技能」にスポットを当てて、在留資格の条件や、どのような職種が該当するのかなど、その注目ポイントをみていくことにする。

1.新設された在留資格「特定技能」とは?

1-1.なぜ「特定技能」という在留資格が生まれたのか?

外国人が日本で働くための在留資格には、日本に永住している、あるいは日本人の配偶者であるなど身分や地位に基づくもののほか、外交官や芸術関係、医療、教育、介護など「技術・人文知識・国際業務」の分野で就労している、高度専門職(1号・2号)や技能実習生(1号、2号)として認可を受けているなど、様々あります。

そんななか、今回、新たな在留資格となる「特定技能」は、2019年4月1日から始まりました。
では、この「特定技能」が新たに設けられた理由はなんなのでしょうか。
その最も大きな理由のひとつに、中小・小規模事業者などを中心に深刻な人手不足が続いているといった実情があります。

また昨今は、いわゆる「きつい、きたない、危険」という3Kや「きつい、厳しい、帰れない」という新3Kなどと揶揄される職場を敬遠する傾向が強く、こうしたイメージが定着している職種はブラック企業とみられることもあってか、どうしても人材不足に陥ってしまう傾向もみられます。

ちなみに、厚生労働省が毎月公表している公共職業安定所における有効求人倍率をみると、平成31年2月現在、1.63倍となっています。単純に、求人1人に対して、1.63社の会社が求人募集している計算になります。

(参考:厚生労働省 報道発表資料「一般職業紹介状況(平成31年2月分)について」より)https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000212893_00016.html

そして、新規求人倍率は、2.50倍となっています。これを産業別にみると、教育・学習支援業(前年同月比10.7%増)、建設業(同5.8%増)、医療・福祉(同4.2%増)、卸売業・小売業(同2.9%増)、学術研究および専門・技術サービス業(同2.8%増)などで増加しており、製造業(同3.4%減)や生活関連サービス業・娯楽業(同0.2%減)などでは減少しています。
とりわけ、建設業や医療・福祉関係は、恒常的に人手不足状態に陥っているのが実情です。

一方で、人手不足となっている職種では、単純作業をする労働力の不足と同時に、ある一定の専門性と技能を持つ人を望む傾向も強く、即戦力となる人材を登用する必要もあります。その背景は、人手不足によって生産性を向上させないと企業の収益が確保できないという問題が眼前にあるからです。

こうした企業が抱える多くの諸問題があるなか、これまでの在留資格に加え、人手不足の解消と、即戦力の強化を図る必要が出てきたことから創設されたのが、今回の「特定技能」なのです。

1-2.特定技能の職種について

では、「特定技能」にはどのような職種があって、どんな制度なのか、以下にみていきましょう。

今回、「特定技能」として認可されたのは、以下の14分野(職種)になります。

厚労省管轄
特定産業分野従事する業務
1.介護・身体介護等(利用者の心身の状況に応じた入浴,食事,排せつの介助等)のほか,これに付随する支援業務(レクリエーションの実施,機能訓練の補助等) [ 1 試験区分 ]
2.ビルクリーニング・建築物内部の清掃 [ 1 試験区分 ]
経産省管轄
特定産業分野従事する業務
3.素形材産業・鋳造・鍛造・ダイカスト・機械加工・金属プレス加工・工場板金・めっき・アルミニウム陽極酸化処理・仕上げ・機械検査・機械保全・塗装・溶接 [ 13 試験区分 ]
4.産業機械製造業・鋳造・鍛造・ダイカスト・機械加工・塗装・鉄工・電子機器組立て・電気機器組立て・プリント配線板製造・プラスチック成形・金属プレス加工・溶接・工場板金・めっき・仕上げ・機械検査・機械保全・工業包装 [ 18 試験区分 ]
5.電気・電子情報関連産業・機械加工・金属プレス加工・工場板金・めっき・仕上げ・機械保全・電子機器組立て・電気機器組立て・プリント配線板製造・プラスチック成形・塗装・溶接・工業包装 [ 13 試験区分 ]
国交省管轄
特定産業分野従事する業務
6.建設業・型枠施工・左官・コンクリート圧送・トンネル推進工・建設機械施工・土工・屋根ふき・電気通信・鉄筋施工・鉄筋継手・内装仕上げ/表装 [ 11 試験区分 ]
7.造船・舶用工業・溶接・塗装・鉄工・仕上げ・機械加工・電気機器組立て [ 6 試験区分 ]
8.自動車整備業・自動車の日常点検整備,定期点検整備,分解整備 [ 1 試験区分 ]
9.航空業・空港グランドハンドリング(地上走行支援業務,手荷物・貨物取扱業務等)・航空機整備(機体,装備品等の整備業務等) [ 2 試験区分 ]
10.宿泊業・フロント,企画・広報,接客,レストランサービス等の宿泊サービスの提供 [ 1 試験区分 ]
農水省管轄
特定産業分野従事する業務
11.農業・耕種農業全般(栽培管理,農産物の集出荷・選別等)・畜産農業全般(飼養管理,畜産物の集出荷・選別等) [ 2 試験区分 ]
12.漁業・漁業(漁具の製作・補修,水産動植物の探索,漁具・漁労機械の操作,水産動植物の採捕,漁獲物の処理・保蔵,安全衛生の確保等)・養殖業(養殖資材の製作・補修・管理,養殖水産動植物の育成管理・収獲(穫)・処理,安全衛生の確保等) [ 1 試験区分 ]
13.飲食料品製造業・飲食料品製造業全般(飲食料品(酒類を除く)の製造・加工,安全衛生 [ 1 試験区分 ]
14.外食業・外食業全般(飲食物調理,接客,店舗管理) [ 1 試験区分 ]

(参考:平成31年4月 出入国在留管理庁資料「新たな外国人材の受入れについて」より)http://www.moj.go.jp/content/001291692.pdf

これを見るとわかる通り、特定技能の位置づけとしては、一般的に業務内容は単純労働で対応できる作業もありますが、ある一定の専門的な技術や、コミュニケーションを図るうえでの一定の日本語能力も必要になります。

今回の特定技能には、「特定技能1号」と「特定技能2号」が設けられました。
技術水準でみると、「特定技能1号」は、「特定産業分野に属する相当程度の知識または経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人」が認可要件となっています。一方、「特定技能2号」は、「特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人」という条件が付けられています。

2019年4月1日現在、「特定技能2号」については、建設業と、造船・舶用工業の2分野のみの受け入れとなっています。それ以外は「特定技能1号」のみになります。

「特定技能1号」と「特定技能2号」の違い
 特定技能1号のポイント特定技能2号のポイント
在留期間1年、6か月又は4か月ごとの更新、通算で上限5年まで3年、1年又は6か月ごとの更新
技能水準試験等で確認(技能実習2号を終了した外国人は試験等免除)試験等で確認
日本語能力水準生活や業務に必要な日本語能力を試験等で確認(技能実習2号を終了した外国人は試験等免除)試験等での確認は不要
家族の帯同基本的に認めない要件を満たせば可能(配偶者、子)
受入れ機関又は登録支援機関による支援支援の対象支援の対象外

(参考:法務省資料「新たな在留資格「特定技能」について」より)https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000485526.pdf

1-3.「特定技能2号」は家族帯同、在留期間に制限なし

「特定技能1号」は在留期間が1年で、6ヵ月または4ヵ月ごとに更新があり、最長で5年まで在留できます。日本語の能力水準は、生活や業務に必要な日本語能力の有無を試験等で確認します。家族の帯同は基本的に認められていません。

一方、「特定技能2号」は、在留期間が3年で、以後、1年または6カ月ごとの更新です。在留期間は3年とありますが、その後は更新となり、特に支障などがない限り更新をし続けることができます。ですので、原則、在留期間の制限は設けられていません。しかも、家族(配偶者あるいは子)の帯同が認められています。

建設業と舶用工業の分野で、かつ、長期にわたる事業の場合、「特定技能2号」による外国人の受け入れが可能になることから、安定的に就労する環境が整っていれば人手不足の解消につながると期待されるわけです。

2.「特定技能」外国人の受け入れについて

1-1.「特定技能」外国人の受け入れは上限あり

ところで、今回の「特定技能」は、分野(職種)によって外国人の受け入れ数に制限が設けられています。これは、各分野の人手不足の状況を鑑み、今後、5年間で必要と思われる人手がどれぐらいかを考えて算出しています。

「特定技能1号」の受け入れ数については、分野別に以下のようになっています。

1.介護業:6万人
2.ビルクリーニング業:3万7,000人
3.素形材産業:2万1,500人
4.産業機械製造業 5,250人
5.電気・電子情報関連産業:4,700人
6.建設業:4万人
7.造船・船用工業:1万3,000人
8.自動車整備業:7,000人
9.航空業:2,200人
10.宿泊業:2万2,000人
11.農業:3万6,500人
12.漁業:9,000人
13.飲食商品製造業:3万4,000人
14.外食業:5万3,000人

これら14分野の5年間で受け入れる最大人数は、34万5,150人と設定しています。
ただし、「特定技能」による外国人の受け入れが順調に推移し、特定分野において人手不足が解消されるなどすれば、受け入れは中止となります。

特に、介護業や建設業、外食業など人手不足が懸念されている業種については、「特定技能」外国人を受け入れる事業者も集中すると考えられます。「特定技能」外国人を受け入れる状況にあれば、「特定技能」に関する情報収集を図り、具体的に求人募集などをして「特定技能」制度を積極的に活用することが肝要でしょう。

1-2.学歴、転職などに制限なし

今回の在留資格である「特定技能」は、新制度に適合した技能や日本語能力があるかどうかを求めています。よって、学歴などについては特に問われません。
ただし、年齢は18歳以上となっています。

「特定技能」外国人の受け入れ国については2019年4月1日現在、ベトナム、中国、フィリピン、インドネシア、タイ、ミャンマー、カンボジア、モンゴル、ネパールの9か国になります。「技能実習」受け入れ国の15か国に比べると少ないですが、これも今後の「特定技能」がどのように伸展するかで変わるかもしれません。

雇用形態は、国内で働く一般の求人募集と同じく直接雇用です。ただし例外があって、農業と漁業については派遣も可としています。これは、農業と漁業は季節的な影響などにより繁閑・繁忙があることや、産地によって現場ニーズに柔軟に対応することなどが求められるため、雇用形態も直接のほか、派遣形態も認められています。

「技能実習」との違いは色々ありますが、「特定技能」は転職が可能という特徴があります。しかし、同一の業務区分での転職に限られており、他の業務区分に転職する際には、その転職しようとする業務区分の技能試験を受ける必要があります。

3.「特定技能」外国人の受け入れ機関の心得

1-1.特に登録などの必要はなし

(参考:法務省資料 在留資格「特定技能」に係るリーフレット(受入れ機関向け)より)http://www.moj.go.jp/content/001290039.pdf
(参考:法務省資料 在留資格「特定技能」に係るリーフレット(外国人向け)より)http://www.moj.go.jp/content/001290040.pdf
法務省「新たな外国人材受入れ(在留資格「特定技能」の創設等)」

「特定技能」外国人が日本で就労するには、いくつかの方法があります。
具体的なスキーム図は上図の通りですが、海外から日本に来る場合と、すでに日本国内に居住している場合でみていきます。

■海外から来る場合

海外から外国人材を受け入れる場合、二つの方法があります。一つは、「技能実習」を終了している場合、もう一つは、新規で日本に来ようとする場合です。
「技能実習2号」を良好に終了していると、試験は免除され、「特定技能1号」に移行することができます。一方、新規で来る場合は、国外で技能や日本語の試験を受け、合格すると申請することができます。

■日本国内にすでに居住する場合

日本国内で「技能実習2号」を良好に終了した外国人は、試験が免除され、「特定技能1号」に移行できます。この「特定技能1号」への移行にあたっては、技能試験や日本語能力試験が免除されるのですが、このとき、「特定技能1号」への登録の手続きを登録支援機関にする際に時間を要することから、当面の措置として、特例措置がとられることになります。
この特例措置の対象者は、「技能実習2号」で在留した経歴があり、「技能実習2号」「技能の実習3号」および「特定活動」(外国人建設就労者または造船就労者として活動している者)いずれかによって日本に在留している外国人で、2019年9月末までに在留期間が満了する人となっています。
この特例措置によって在留できると、「特定活動」(就労可)という資格を得られ、4ヵ月まで在留期間が認められることになります(原則として更新不可)。

特例措置の許可を受けるための条件等は、下記法務省のHPでご参照いただけます。
法務省「在留資格「特定技能」へ変更予定の方に対する特例措置について」

なお、その他留意事項として、「特定技能1号」の移行による「特定活動」(就労可もしくは就労不可)の申請中(審査中)に、たとえば「技能実習2号」の在留期限が到来した場合は、在留期限から2ヵ月以内は在留を継続することができます。ただし、在留の継続はできますが、この間の就労はできませんので、注意が必要です。

また、日本国内には、留学ビザなどで来日している人もいます。いわゆる留学生などです。留学生は就労目的ではなく、勉強をするために日本にきているわけですが、日本で就労するためには、日本人の学生と同じく、自分自身で面接や試験を受けて会社に入社する必要があります。こうした留学生の中には、日本で学んだ語学や専門的な知識などを就労に生かす目的で、「特定技能1号」試験を受験し、在留資格を得る場合も考えられます。

このように、日本国内に居住する場合には、技能実習経験者か、もしくは留学生か、といった2パターンがあるといえます。

「特定技能」試験を免除もしくは合格した外国人は、受け入れ機関の求人募集に応募し、面談などを経て、内定もしくは採用といった流れになります。
ここから先ですが、受け入れ機関は「外国人支援計画」を策定し、最寄りの地方出入国在留管理局に受け入れ機関として在留資格に関する証明書類を申請します。そして、「特定技能2号」として正式に認可されると、在留資格認定証明書もしくは在留資格変更許可が交付され、受け入れ機関で「特定技能2号」外国人として就労ができます。

1-2.日本人と同等以上の条件で採用する

(参考:外務省「入管法改正による新しい在留資格 特定技能の創設」より)https://www.mofa.go.jp/mofaj/ca/fna/ssw/jp/registration/index.html

「特定技能」外国人を受け入れる場合、「技能実習」の場合と違い、一般の国内求人募集者と同じく、受け入れ機関との間で2者間による契約を結びます。いわゆる直接雇用契約により「特定技能」外国人を受け入れることになります。
給与も、日本人と同等以上の支払いをすることが求められます。

とはいえ、受け入れ機関では語学面やその他、様々な対応をする必要があることから、中小・小規模事業者のなかには自社だけでの対応が難しい面も出てきます。
そこで、受け入れ機関は、必要に応じて登録支援機関などの協力を得ながら、「特定技能」外国人を受け入れ、就業させることになります。

「特定技能」は直接雇用ということもあって、受け入れ機関では「特定技能」外国人への真摯な対応が求められます。
業務の許容範囲については、個々の業種における内容によってまちまちですが、たとえば農業においては、「農業の特性に鑑み、かつ、豪雪地域等年間を通じた農業生産が維持できない農村地域事情を考慮し、特定技能外国人が従事可能な農業関連業務の範囲について柔軟に対応する」という運用方針が示されています。そのうえで、「当該業務に従事する日本人が通常従事することとなる関連業務(農畜産物の製造・加工、運搬、販売作業、除雪作業など)に付随的に従事することは差し支えない」としています。
つまり、日本人が通常従事する関連業務に付随する業務であれば、「特定技能」外国人に従事させてもよいということになります。

ただし、勝手に拡大解釈をして、本来の業務に付随するとはいいがたい仕事まで従事させることはできませんので、その点は注意が必要です。

登録支援機関申請サポートセンター「登録支援機関とは」
法務省「新たな外国人材受入れ(在留資格「特定技能」の創設等)」

「特定技能」外国人の受け入れは、人手不足に苦しむ受け入れ機関(受け入れ先の企業)にとっては活用の仕方次第で雇用問題を解決する一助となることは予想されます。特に、介護や建設、外食産業などの分野では、慢性的な人手不足となっており、ある一定の技能をもち日本語を解する「特定技能」外国人の登用が円滑に進むと、人材を確保する制度として、「技能実習」とは違った利用のしやすさも出てくるといえます。
新法の「特定技能」では、受け入れ機関や外国人労働者のためを考え、登録支援機関が設けられています。今後、外国人の受け入れを考えている受け入れ機関は、新たな制度をよく理解し、登録支援機関などを利用し、就労開始後の「特定技能」外国人に対して十分なケアを行うことで、種々の問題の発生を未然に防ぐだけでなく、慢性的な人手不足への悩みが軽減されることも考えられます。新たな制度の導入により、受け入れ機関にとっては、人手不足に陥らず、事業の継続に活路が見出せるかもしれません。