特定技能 自動車運送業の現在地

コラム
COLUMN
「外国人 人材活用リアルタイム24時」 ー東南アジア各国からの現地報告ー ビル新聞2025年5月26日号掲載「特定技能 自動車運送業の現在地」の話題。

1.期待と課題が交錯する採用現場

いよいよ採用がスタートした特定技能「自動車運送業」分野。

労働時間規制強化による「2024年問題」で苦しむ物流業界からは、大きな期待が寄せられている。

四月にアサヒロジスティクスが国内初となる特定技能中国人トラックドライバーを採用したニュースは、そうした動きの先駆けとなった。

愛知県の人材コンサルティング会社、アイエフピーの林佑介氏によれば、運送業界における外国人ドライバーの需要は極めて高いという。

実際、特定技能ドライバーへの引き合いは強まる一方だ。

しかし、採用実務では数多くの課題に直面している。

まず、特定技能資格の取得には、「自動車運送業分野特定技能1号評価試験」と「日本語能力試験」(トラックドライバーはN4以上、バス・タクシードライバーはN3以上)に合格する必要がある。さらに、日本の運転免許取得も必須だ。

事業者側も、Gマーク認証や「運転者職場環境良好度認証制度」の取得が求められる。

こうした幾重にも重なる要件の中においても、多くの企業が「すぐにでも人材が欲しい」と考える一方、求人から採用完了までは順調に進んでも半年以上、実質的には一年計画を覚悟するのが現実だ。

2.日本での免許取得に加え、期限付きという厳しい条件

特に、日本の運転免許取得は最大の関門だ。

母国で免許を持っていても、各都道府県の免許センターでの厳格な審査と、外国免許切り替えに伴う実技試験をクリアしなければならない。

日本語での指示理解、一時停止や車線変更のルールなど、母国との交通慣習の違いが大きな壁となる。さらに、普通免許から大型免許取得に進む場合、追加の時間とコストが発生する。

そもそも、母国での免許取得から2年以上が経過し、かつ日本語能力試験N4以上の条件を満たす候補者を見つけることは容易ではない。

加えて、特定活動期間の6ヶ月以内に免許取得ができなければ、帰国を余儀なくされるというリスクも負わねばならない。

3.特定技能ドライバーの受入れを成功させるためには・・・

ただ、こうした厳しい現状に対応するため、日本式の運転教育から免許取得支援、日本語能力向上、生活支援まで一貫したサポートを提供する団体も登場してきた。また、過去の本コラムで紹介した、名古屋で活動するボー・タン・リー氏のような、5年間で約500人のベトナム人に運転免許取得を支援した実績を持つトレーナーの存在も心強い。

これらの取り組みを〝点〟で終わらせず、業界全体で支え、拡大していく構えが必要だ。

しかしながら、採用実務が過度な要件に縛られた現行制度のままでは、運送業界の人手不足解消は遅々として進まないであろう。

採用プロセスの効率化を図り、入国後に現場教育を徹底するという、実践重視の体制への転換が、外国人ドライバー確保の鍵となるはずだ。

持続可能な物流インフラ構築のため、ボトルネックを見極めた的確な対応が求められている。

(※このコラムは、ビル新聞2025年5月26日号掲載「特定技能 自動車運送業の現在地」Vol.65を加筆転載したものです。)