コロナ禍のインドネシア人材ビジネス事情

コラム
COLUMN
「外国人技能実習リアルタイム24時」 ー東南アジア各国からの現地報告ー ビル新聞2020年8月31日号/9月28日号掲載「コロナ禍のインドネシア人材ビジネス事情」の話題。
インドネシア_コロナ

1.インドネシアのコロナ事情

インドネシア_授業
8月に入り、日本における新型コロナ感染は再拡大し続け、第2波が進行している状況である。4月の第1波と比べ重症患者や死者が少ないなどの理由から、当面は、政府が緊急事態宣言を再発令する可能性は低いようだ。
感染抑止と経済活動維持のバランスを重視する考えは理解できるが、是が非でも「Go To Travelキャンペーン」を推進しようとする国と、「帰省自粛要請」を呼びかける地方自治体との風向きの違いに国民は翻弄されている。
それに加えて連日の記録的な猛暑である。コロナ禍でなくとも外出をためらわせるのに十分な要因となり、結果として移動の軽減につながっていると想像される。
本当なら2020年はオリンピックの熱戦に湧く夏であったが、コロナウイルスとの闘いに臨む「特別な夏」となってしまった。
前回は、コロナ禍におけるベトナムの人材ビジネス事情について取り上げたが、今回は、インドネシアに注目する。日本へやってくる技能実習生の、送り出し国第4位のインドネシアは、コロナ感染者数12万9千人(8月13日時点)と、フィリピンと共にアセアン加盟10ヶ国の中でワースト国となっている。
3月上旬はゼロであったが、3月末には約千4百人まで増加し、4月上旬より首都ジャカルタをはじめ各州や県で、外出・移動や企業活動を制限する「大規模社会的規制(PSBB)」が導入された。
当初14日間の予定であったこの規制は、感染が一向に抑止されないことから幾度となく延長を繰り返し、さらに海外との往来も停止された。
しかしその後、6月にインドネシア政府が、「新しい日常」(ニューノーマル)という考え方を打ち出し、地域毎に段階的な緩和策が取られることとなった。これにより、8月現在、ジャカルタの街はコロナ禍以前と大きく変わらない賑わいを取り戻しつつあるという。
一方、感染者数は増加の一途をたどり、医療関係者の死亡も相次いでいる。制限緩和は「時期尚早で、さらなる感染拡大の危険がある」と、専門家から多くの反対の声が上がっているとのことだ。
規制緩和に踏み切った背景には、街に溢れる失業者、生活困窮者、経営難に追い込まれている企業を救うという、経済的理由がある。7月初旬からは出入国管理局の業務も再開され、海外との往来にも積極姿勢を示している。
しかし日本がインドネシアからの入国を解除する日は、相当先になるとの見方が大勢だ。
外国人材ビジネス周辺への影響も甚大であり、多くの技能実習生が出国できぬまま、5ヵ月が経過しようとしている。
感染の不安におびえ、先行きが見えない中での勉強の日々は、心身ともに負荷が大きいことであろう。そんな中、一部では、新たな展開も起きているようだ。

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2.注目される「オンライン教育」

Kartu-Prakerjaその後、9月に入ってもインドネシアの感染者数は連日3,000人規模で増加し、一向に収まる気配がない。
リゾート地バリ島は、予定していた外国人観光客の受け入れ再開を断念した。
そして、約370万人が失業するなど、経済に深刻な影響が出ている。
今インドネシアは、各国同様感染拡大の抑え込みと、経済の立て直しを同時に進めるという、難しいかじ取りを迫られている。
そんな中、注目を集めているのが「オンライン教育」だ。実はインドネシアには、コロナ以前から、国が職業訓練を通して求職者を支援する「就労前カード・プログラム」(Kartu Prakerja)という仕組みがある。
このプログラムでは、オンライン上で公式パートナーが提供する様々な教育メニューを受講することができるのだが、対象は18歳以上の、それまで一定水準以上の教育を受けていない人に限られていた。そこでインドネシア政府はこのプログラムを一部改変し、コロナ禍により失業した労働者にも間口を広げた。
さらに参加者には、350万ルピア(約25,000円)の援助費を給付するなどの支援も行っている。メニューには「日本語学習」も設けられており、技能実習や特定技能による日本での就業を目指すこともできるそうだ。

3.LPK PDSの「オンライン日本語教育」

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民間企業における「オンライン日本語教育」も活況を呈している。送出機関「LPK PDSS」のダニー・シナトラさん(29歳)によると、3月の休校要請時には日本語学校もオンラインによる授業の実施を余儀なくされたが、今はそれらの映像データの二次利用や再構築がなされ、コンテンツとして有料・無料混在の百花繚乱状態であるという。多くの若者たちが、自宅に居ながら日本語教育を受けられるようになったという点においては大きな前進だとシナトラさん。同社でも、間もなく「日本語オンライン授業」の正式配信開始を予定しているそうだ。従来は対面授業で4~6ヵ月間、約500万ルピア(約3万6千円)で提供していたが、オンラインでは、4ヶ月間25万ルピア(約1,800円)という破格で展開するという。まだしばらくは日本に実習生を送り出せない以上、送出機関として今やるべきことは、“教育”だという。「日本の皆さんには、お待たせして申し訳ないという気持ちだ。いざオファーがあった時には、期待に応えられる人材をしっかりと送り出したい」とシナトラさんは熱く語る。長引くインドネシア国内の不況を鑑み、国外へ目を向けて挑戦する若者たちが、これまで以上に増えると予測しているようだ。人口約2億7千万人、平均年齢29歳の若い国が、このコロナ禍を諦めることなく耐え忍んでいる。そんな多くのインドネシアの若者が、また再び日本経済の担い手として、はじけるような笑顔で来日してくれる日を待ちたい。
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(※このコラムは、ビル新聞2020年8月31日/9月28日号掲載「リアルタイム外国人技能実習24時」Vol.20/21を加筆転載したものです。)

この記事を書いたライター
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川口 環

中央大学卒業後、TOTO株式会社を経てWebマーケティング会社 株式会社ジェイティップスを設立。約20年間多数の大手企業Webマーケティングに関与し、グロースハックさせる。昨今は、外国人技能実習の無料相談ポータルサイト「外国人技能実習360°」運営責任者として、海外送出機関のリサーチと受入企業の相談にあたっている。年間20回以上海外出張し、約150日間を東南アジア各国で活動する。