プノンペンの町を支える「SOKEN CAMBODIA」(前編)
経済成長が著しいカンボジアは、商業ビル、ホテル、コンドミニアム・・・と建設ラッシュに湧いている。
スターツの4つ星ホテル「ホテルエミオン・プノンペン」、ショッピングモールを備えた45階建ての大型施設「The Bridge(ブリッジ)」、敷地面積10万平米の「イオンモール2」など、プノンペン市内の各所に大型ビルが建ち上がり、筆者が最初にプノンペンを訪れた2年前から、町は大きく様変わりした。
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それに呼応するように、完成したビルの清掃や設備管理など、ビルメンテナンスの需要も高まっている。中でも圧倒的シェアを占めているのが、日系企業の「SOKEN CAMBODIA」(ソーケンカンボジア)だ。
同社は、茨城県取手市に本社を置くビルメンテンナンス会社「綜合建物サービス」の現地法人である。
8年前、まだ高層ビルが数棟しかなかったプノンペンに、会長の大野操氏(66)がビル管理のニーズを予見し、進出を決意した。当時創業から30年目を迎え、会社としてさらなる飛躍を目指すためには、海外へ打って出るしかないと考えたそうだ。
「最初の3年くらいは、何もかも思った通りにはいかなかったですね(笑)」
と大野会長は振り返る。
何よりも苦労したのは、人材採用と教育だ。まずカンボジア人の「掃除する」・「きれいにする」という作業レベルの低さに困惑した。
日本で行ってきた通常のトレーニング方法だけではSOKENのサービスレベルに到底達しないことがわかった。
そもそもカンボジアでは、「掃除」に対する考え方が日本とは大きく異なるのだ。
日本には、来た時より美しくして帰るとか、他の人が気持ちよく使えるよう予めきれいに整えておくといった考え方がある。それに対してカンボジアでは、自分が利用する際に自分できれいにするのが一般的で、掃除は「自分のため」に行うという文化が根底にある。
「ビルクリーニング」というサービス業自体がまだ成立していなかった段階のこの国において、「お客様のためにきれいにする」「きれいな状態を保つことは心地よい」という感覚を身に付けさせるためには、想像以上に時間と労力を要することとなった。
それでも、
「この国は必ず成長する。いい人材を、粘り強く、地道に育てていくことで、事業も必ずうまくいくはず」
と信じ続けた。
具体的な清掃スキルもさることながら、まずはメンテナンスの意義や作業時のマナーについて、徹底的にマインドセットを「日本式」に変えることに注力したという。
「撤退」の二文字が頭をよぎる苦難を何度も乗り越えながら、設立当時、日本人1人、カンボジア人1人だった同社は、従業員270人を抱えるまでに成長を遂げた。
今では、プノンペンの町を支える日系企業としてその名を轟かせている。
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(※このコラムは、ビル新聞2019年8月26日号掲載「リアルタイム外国人技能実習24時」Vol.10を加筆転載したものです。)