待望のベトナム「特定技能」の幕開け(ベトナム編)

コラム
COLUMN
「外国人技能実習リアルタイム24時」 ー東南アジア各国からの現地報告ー ビル新聞2019年7月29日号掲載「ベトナム送出機関」の話題。
ベトナム_送迎車

ベトナム ノイバイ空港12時25分着のANA857便。
この旅客機は、外国人技能実習生の面接出張と思しき日本人と乗り合わせることが多い。
空港到着ロビーで、監理団体名や企業名が大きく書かれたプラカードを掲げた送出機関の営業マンに出迎えられ、空港出口に横着けされた大型乗用車にスーツケースと共に吸い込まれてく男性グループを見れば一目瞭然だ。
送出機関は、フォード社製のトランジットというミニ・バス(写真)をチャーターすることが多いのだが、このトランジットが何台も並ぶ様から、ベトナム送出機関の並々ならぬ熱意がうかがえる。
空港・ホテルの送迎、観光案内、食事、お土産など、ありとあらゆる接待が繰り広げられ、ある意味至れり尽くせりなのがベトナム送出機関の定番営業スタイルだ。
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ベトナムは、現在日本が受入れをしている実習生の内47%を占めており(2018年6月時点)、300社以上ある送出機関が日本に向けた営業にしのぎを削っている。
しかし、現地視察の案内や実習生の面接などのような必要な手順にとどまらず、中には行き過ぎた接待や悪質な仲介に歯止めが利かなくなっているケースもあるのでは?という問題点も指摘されている。結果的にそのしわ寄せがくるのは実習生で、経済的負担や劣悪な労働状況を生むことが懸念される。

この4月から新設された在留資格「特定技能」は、そんなベトナム送り出しビジネス事情の中、今最も注目されていると言える。
深刻な人手不足と認められた14の特定産業分野で、今後5年間で約34万5千人を上限とする外国人材受入れが行われる。人手不足にあえぐ各業界において大きな期待が寄せれている。
職種毎に求められる日本語能力と技能評価の試験に合格するか、あるいは3年以上の実習を良好に終えた技能実習生は試験免除で、同一職種の特定技能労働者として5年間の在留ができるようになった(特定技能1号)。
すでに実習生の最大の送り出し国であるベトナムにおいては、「特定技能」に移行しやすい側面をもっている。だからこそ、制度の健全な活用が不可欠なのだ。

G20サミットが明けた7月1日、安倍首相とフック首相立会いのもと、「特定技能」の導入に伴うベトナム人労働者の日本への受入れに関する協力覚書が交わされた。
これにより、ようやく正式にベトナムから「特定技能」人材の送り出しがスタートを切ることとなった。政府間の受入枠組みが固まったことから、今後、ベトナムにおける技能評価試験の実施計画、人材募集や送り出しのルール設定が本格化することだろう。

「悪質な仲介業者の排除」の文脈を含む覚書が威力を発揮し、ベトナム人の就労が意義のあるものとなり、制度が両国間の友好の架け橋となることを心から願う。
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(※このコラムは、ビル新聞2019年7月29日号掲載「リアルタイム外国人技能実習24時」Vol.8を加筆転載したものです。)

この記事を書いたライター
川口 環

中央大学卒業後、TOTO株式会社を経てWebマーケティング会社 株式会社ジェイティップスを設立。約20年間多数の大手企業Webマーケティングに関与し、グロースハックさせる。昨今は、外国人技能実習の無料相談ポータルサイト「外国人技能実習360°」運営責任者として、海外送出機関のリサーチと受入企業の相談にあたっている。年間20回以上海外出張し、約150日間を東南アジア各国で活動する。