【工業製品製造業×特定技能】人手不足にストップを!外国人材と築く日本のモノづくりの未来

コラム
COLUMN

日本の工業製品製造業は、世界に誇る高品質な製品を生み出し、長年、日本の経済成長を牽引してきました。しかし、近年は、少子高齢化による人材不足、海外との競争激化などの課題に直面しています。

深刻化する人材不足は、もはや無視できないレベルに達しています。
2020年には7,509万人いた働き盛り世代は、2060年には5,078万人まで減ってしまうと予想されています。

これは、なんと3人に1人がいなくなる計算です。

例えば、令和4年度の求人倍率は、鋳物製造工で6.83倍、金属熱処理工で6.03倍にもなっています。これは、1人の求職者に対して6~7社が求人を出しているという状況です。このままでは、2028年には約42万4,300人もの人が足りなくなると言われており、多くの製造業企業が、人手不足を深刻な問題だと感じています。

出典:「特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針の一部変更について

人材不足は、生産性の低下、競争力の低下、納期の遅れ、技術継承の難しさといった深刻な問題を引き起こします。

「高い技術を持つベテラン従業員が辞めてしまったら、会社の技術はどうなるのか…」
「人材不足で、従業員の負担が大きくなり、離職率が高まっている…」

多くの企業が、このような共通の悩みを抱えているのではないでしょうか?

その解決策の一つとして、近年注目されているのが外国人材の活用です。

2019年4月に始まった特定技能制度により、工業製品製造業でも外国人材の採用が可能になりました。この制度を活用することで、人材不足を解消し、工業製品製造業全体の活性化を図る動きが広がっています。

例えば、ある中小の金属加工企業では、従業員の4人に1人が外国人材が占めるようになりました。最初は、簡単な作業だけをお願いしていましたが、勉強熱心でどんどん新しい技術を身につけていったそうです。今では、金型交換のような、熟練の技が必要な作業も任せることができるようになりました。

社長さんも、「外国人従業員たちの頑張りが、日本人従業員にも良い影響を与えている」と喜んでいるようで、実際に、工場全体の生産性が15%もアップし、納期も短縮できたそうです。

このように、外国人材の活用は、単なる人手不足の解消だけでなく、技術伝承、生産性向上、国際競争力強化にも繋がる可能性を秘めているのです。

この記事では、特定技能「工業製品製造業」の詳細要件や、外国人材の雇用プロセスをわかりやすく解説します。

ぜひ、最後まで読んで、特定技能の外国人材採用について理解を深めてください。

特定技能「工業製品製造業」では、どのような業務内容?

特定技能「工業製品製造業」とは、外国人材に工場などで働いてもらうための在留資格です。

具体的には、各分野で以下の業務内容が想定されています。

業務区分技能種類
機械金属加工鋳造、鍛造、ダイカスト、機械加工、金属プレス加工、鉄工、工場板金、仕上げ、プラスチック成形、機械検査、機械保全、電気機器組立て、塗装、溶接、工業包装、金属熱処理、強化プラスチック成形自動車部品、機械部品、金属製品など
電気電子機器組立て機械加工、仕上げ、プラスチック成形、プリント配線板製造、電子機器組立て、電気機器組立て、機械検査、機械保全、工業包装、強化プラスチック成形スマートフォン、パソコン、家電製品など
金属表面処理めっき、アルミニウム陽極酸化処理自動車部品、機械部品、建築材料など
紙器・段ボール箱製造段ボールシートの切断、折り曲げ、接着、印刷、表面加工、箱の組み立て、梱包商品の包装や輸送に利用される紙器や段ボール箱
コンクリート製品製造コンクリートの配合設計、製造、型枠の設置、コンクリートの打設、養生、脱型、仕上げ道路や橋梁などの土木構造物、建築物の基礎、擁壁、ブロック、管渠など
RPF製造廃棄物の選別、破砕、乾燥、成形、燃料の品質検査、梱包固形燃料(RPF)
陶磁器製品製造原料の調合、成形、素焼き、施釉、本焼き、装飾食器、タイル、衛生陶器など
印刷・製本印刷機の操作、印刷、色調調整、品質検査、製本、加工、梱包書籍、雑誌、パンフレットなど
紡織製品製造紡績、織布、編立、染色、加工、縫製、検査、梱包衣料品、寝具、カーペットなど
縫製裁断、縫製、仕上げ、アイロンがけ、検査、梱包紳士服、婦人服、子供服、寝具、鞄など
出典:「製造業における特定技能外国人材の受入れについて(工業製品製造業分野)

これらの業務に加えて、原材料・部品の調達・搬送作業など、日本人従業員が行っている関連業務をサポートすることもできます。

ただし、関連業務ばかりを行うことはできませんのでご注意ください。

あくまでも、主要な業務が中心で関連業務はそれに伴って行う必要があるということを覚えておいてください。

外国人材を採用すると、どんなメリットがある?

外国人材を採用することで、人材不足を解消できるだけでなく、企業に新たな風を吹き込み、成長を加速させる可能性も秘めています。

まだ外国人材採用に迷いがある方も、ぜひ前向きに検討してみて欲しいです。想像以上に多くのメリットがあることに気づくはずです。

1. 人材不足から解放され、会社に活力が戻る!

「求人広告を出しても応募が全然来なくて、人手が足りずに困っている…」
「納期に間に合わせるために、従業員に長時間労働をさせてしまって申し訳ない…」
「せっかく新しい機械を導入したのに、操作できる人がいなくて宝の持ち腐れだ…」

このような悩みを抱えている企業様も多いのではないでしょうか?
外国人材を採用することで、これらの問題を解決できる可能性があります。

もう、求人広告に無駄なお金を使う必要はありません。

外国人材を採用すれば、人手不足が解消され、従業員の負担も軽減されます。 新しい機械を導入しても、すぐに使いこなせる人材がいれば、 生産性も向上し、会社全体の活力に繋がることでしょう。

2.即戦力となる経験豊富な人材を獲得!

「新しい人を採用しても、一人前に育てるのに時間がかかってしまう…」
「経験豊富な人材を採用したいけど、なかなか見つからない…」

と感じている企業様も多いのではないでしょうか?

特定技能制度では、一定の技能と日本語能力を持つ外国人材を採用できるため、教育に時間をかけることなく、即戦力として活躍してくれる人材を獲得できます。

例えば、母国で長年の経験を持つ熟練工を採用し、すぐに現場で活躍してもらうことができますし、日本の製造業の文化や習慣を理解した人材を採用すれば、スムーズに職場に溶け込んでもらうことも可能です。

人材育成のコストを削減できるだけでなく、ベテランの技術やノウハウを継承することもできますので、イノベーションを促進することにも繋がるでしょう。

3. 多言語対応で、グローバル化に対応!

「海外との取引が増えてきたけど、社内に英語を話せる人材がいない…」
「海外の展示会に出展したいけど、外国語で対応できる人がいない…」
「外国人材を採用してみたいけど、コミュニケーションがうまく取れるか不安…」

といった悩みをお持ちの企業様もいるのではないでしょうか?

特定技能制度では、一定の日本語能力を持つ外国人材を採用できるため、一定のコミュニケーションは取ることができます。また、外国人材の中には、英語や中国語など、複数の言語を話せる人もいます。

このような人材を採用することで、海外との取引をスムーズに進めることができるようになりますし、海外の展示会へ出展し、販路を拡大する際にも活躍してくれるでしょう。

また、外国人材の多様な文化や価値観を理解することで、企業のブランドイメージを高めることにも繋がるでしょう。

そもそも特定技能制度とは、どんな制度?

特定技能制度は、2019年に始まった制度で、人材不足を解消し、日本の経済を活性化させることを目的としています。一定の技能と日本語能力を持つ外国人材を受け入れ、即戦力として活用することができます。

技能レベルに応じて、「特定技能1号」と「特定技能2号」の2つの在留資格が設けられています。

項目特定技能1号特定技能2号
対象分野16分野全て介護分野を除く11分野
在留期間最長5年期限なし
技能レベル各分野の技能試験に合格より高い技能・知識を持ち、1号の要件を満たす
家族の帯同不可可能
  • 転職の自由
    同じ職種内であれば、自由に転職することができます。

誰でも特定技能人材になれる?

日本で工業製品製造業の特定技能人材として働くためには、以下の条件を満たしている必要があります。

1.技能水準「製造分野特定技能1号評価試験」に合格する

この試験は、工業製品製造業に必要な知識や技能を評価する試験です。

紙器・段ボール箱製造、コンクリート製品製造、RPF製造、陶磁器製品製造、印刷・製本、紡織製品製造、縫製の試験は、2025年2月以降に実施予定。

出典:「工業製品製造業分野の特定技能制度に係る評価試験について

※以下の技能実習2号・3号を良好に修了した方は、技能試験が免除されます。

業務区分職種
機械金属加工鋳造、鍛造、ダイカスト、機械加工、金属プレス加工、鉄工、工場板金、仕上げ、プラスチック成形、機械検査、機械保全、電気機器組立て、塗装、溶接、工業包装、金属熱処理、強化プラスチック成形
電気電子機器組立て機械加工、仕上げ、プラスチック成形、プリント配線板製造、電子機器組立て、電気機器組立て、機械検査、機械保全、工業包装、強化プラスチック成形
金属表面処理めっき、アルミニウム陽極酸化処理
紙器・段ボール箱製造紙器・段ボール箱製造
コンクリート製品製造コンクリート製品製造
RPF製造RPF製造
陶磁器製品製造陶磁器工業製品製造
印刷・製本印刷、製本
紡織製品製造紡績運転、織布運転、染色、ニット製品製造、たて編ニット生地製造、カーペット製造
縫製婦人子供服製造、紳士服製造、下着類製造、寝具製造、帆布製品製造、布はく縫製、座席シート縫製
出典:「製造業における特定技能外国人材受入れに関するFAQ

2.日本語能力水準「国際交流基金日本語基礎テスト、日本語能力試験(N4以上)に合格」

日本語能力試験は、日常生活や仕事で必要な日本語力を測る試験です。N4レベルは、基本的な日本語を理解し、簡単な会話ができるレベルです。

※技能実習2号・3号を良好に修了した方は、職種に関わらず日本語試験も免除されます。

外国人材を採用する際は、これらの内容をすべてクリアできているか必ず確認しましょう。

特定技能人材の採用はどうするの?

外国人材を採用する方法は、いくつかあります。

1.人材紹介会社を活用する

特定技能に特化した人材紹介会社を利用することで、適切な人材のマッチングからビザ申請手続き、入国時の対応までサポートを受けることができます。

初めて特定技能外国人を採用する場合に効果的です。

2.登録支援機関を利用する

登録支援機関は、特定技能外国人の生活支援や就労支援を行う専門機関です。 人材紹介会社が登録支援機関を担っているケースもあります。

人材紹介から支援計画の作成、在留手続きのサポートまで幅広いサービスを提供しています。

3.直接外国人材を採用する

海外に住んでいる外国人を直接採用する方法です。 企業が自ら海外の人材と連絡を取り合い、オンライン面接などを通して採用候補者を選考します。

ビザの申請など、必要な手続きもすべて企業自身で行う必要があります。

4.技能実習生から移行する

技能実習生として雇用している外国人を特定技能に変更することができます。
ただし、すべての技能実習生が特定技能「工業製品製造業」に移行できるわけではありません。

各区分ごとに、以下の技能実習2号を良好に修了した方、または技能実習3号の実習計画を満了した方が対象となります。

業務区分職種
機械金属加工鋳造、鍛造、ダイカスト、機械加工、金属プレス加工、鉄工、工場板金、仕上げ、プラスチック成形、機械検査、機械保全、電気機器組立て、塗装、溶接、工業包装、金属熱処理、強化プラスチック成形
電気電子機器組立て機械加工、仕上げ、プラスチック成形、プリント配線板製造、電子機器組立て、電気機器組立て、機械検査、機械保全、工業包装、強化プラスチック成形
金属表面処理めっき、アルミニウム陽極酸化処理
紙器・段ボール箱製造紙器・段ボール箱製造
コンクリート製品製造コンクリート製品製造
RPF製造RPF製造
陶磁器製品製造陶磁器工業製品製造
印刷・製本印刷、製本
紡織製品製造紡績運転、織布運転、染色、ニット製品製造、たて編ニット生地製造、カーペット製造
縫製婦人子供服製造、紳士服製造、下着類製造、寝具製造、帆布製品製造、布はく縫製、座席シート縫製
出典:「製造業における特定技能外国人材受入れに関するFAQ

5.留学生を採用する

現在アルバイトとして雇用している留学生がいる場合、特定技能の試験に合格すれば、特定技能に変更することができます。

外国人材を受け入れるための準備内容

外国人材を採用するには、受け入れ企業にもいくつかの条件をクリアする必要があります。

製造品出荷額等を発生させている

特定技能外国人は、実際に事業活動を行っている事業所でのみ就労できます。まだ稼働していない工場、作った製品をまだ一度も出荷したことがない会社、売上実績がない会社では外国人材を雇うことができません。

「製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会」の構成員になる

外国人材の受け入れや支援を行うために設立された組織である「製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会」に加入し、経済産業省および協議会に協力する必要があります。

協議会に加入することで、外国人材の採用に関する情報提供や相談・支援を受けることができます。

サポート体制を整える

外国人材が安心して働けるよう、生活や仕事のサポート体制を整える必要があります。
具体的には、住居の提供、日本語教育、生活に必要な情報の提供などを行うことが求められます。

外国人材を採用する流れ

外国人材の採用は日本人採用とは異なります。スムーズに外国人材を採用するために、事前準備からの流れをご紹介します。

ステップ内容
事前準備就業規則、賃金システム、住居、生活環境の整備
人材募集人材紹介会社や現地機関の活用、求人サイト、ハローワークなど
面接書類選考、面接(日本語能力、技能、コミュニケーション能力などを評価)
雇用契約雇用契約書締結(労働条件を明確にし、外国人材にも理解できるように説明)
ビザ申請特定技能ビザ申請(必要な書類を揃えて申請)
入社前準備住居確保、生活環境整備
入社オリエンテーション会社規則、業務内容、安全衛生教育など
業務開始実際の業務開始、日本人スタッフとのコミュニケーション促進
定期的な面談業務や生活面での課題を早期に発見するための面談
※上記の内容については、円滑に外国人材を受入れるために、登録支援機関へ委託することもできます。

外国人材を雇用する上での3つのポイント

外国人材の雇用は、人手不足解消の有効な手段となります。しかし、採用する際には注意すべき点もあります。

これらの注意点を理解しておくことで、外国人材とより良い関係を築き、スムーズに業務を進めることができるでしょう。

業務範囲の明確化・キャリア形成支援

特定技能ビザで就労できる業務は、「工業製品製造業」の範囲内に限られます。それぞれの区分で決められた作業内容を把握し、外国人材の技能と経験に合致した業務を割り当てることが重要です。

外国人材が就労可能な業務範囲を明確に伝え、誤解がないようにすることが大切です。また、外国人材が持つ資格や技能を活かせる業務を積極的に任せることで、彼らのモチベーション向上に繋がります。

日本で働きたいと考える外国人材の中には、長く働き続けたいという人も多くいます。

外国人材の長期的なキャリア形成を支援することで、外国人材の定着促進に繋げることができます。具体的には、特定技能2号への移行支援、昇進の機会提供など、外国人材の将来設計をサポートすることが大切です。

就労状況の適切な管理

外国人材の就労状況を適切に管理することは、企業の責任です。

  • 在留管理局への届出
    採用時や離職時など、外国人材の就労状況に変更があった場合は、入国管理局への届出が必要です。
  • 不正就労の防止
    許可されていない業務や就労時間外の労働をさせてはいけません。
  • 派遣労働の禁止
    工業製品製造業では、派遣労働は認められていないので、受入企業と直接雇用契約を結ぶ必要があります。

外国人材が安心して働けるよう、就労状況を適切に管理し、必要なサポートを提供しましょう。

日本語レベルの確認

外国人材を採用する際は、日本語レベルをよく確認しましょう。日本語能力試験に合格しているからといって、必ずしも仕事を問題なくできる日本語レベルに達しているとは限りません。

業務に必要な日本語レベルを習得しているか、面接の際に、実際に日本語で会話をして確認することが大切です。

もし、日本語レベルが不十分な場合は、日本語教育のサポートなどを強化しましょう。

外国人材が日本語を習得することで、結果的にコミュニケーションが円滑になり、業務効率の向上や安全確保にもつながります。

まとめ

特定技能「工業製品製造業」の制度を活用すれば、外国人材を採用し、深刻な人手不足を解消できる可能性があります。

外国人材を採用することは、単に人手不足を解消するだけでなく、生産性向上、企業の活性化、そして国際競争力強化にも繋がる可能性があります。

ぜひ、この記事を参考にして、外国人材の受け入れを検討してみてはいかがでしょうか?

新たな視点や発想を取り入れることで、今までにない製品やサービス、ビジネスチャンスが生まれるかもしれません。

外国人材の活躍が、工業製品製造業の未来を明るく照らしてくれることを願っています。