インドネシアの特定技能人材の現状
1.ベトナムに次いで人材増、インドネシア政府も前向きな取り組み
2023年6月末時点で、「特定技能」資格を持つ外国人は173,809人に達している(出入国在留管理庁発表)。5年間での目標であった「34万5千人」の達成は困難となっているものの、前年同月の87,472人からは約2倍の増加を見せている。
特に、インドネシアからの受け入れは25,337人と大幅に増加し、これは前年までの約2.7倍に当たる。特定技能人材の日本在留者数においてインドネシアはベトナムに次ぐ第2位となり、全体の15%を占めている。
インドネシア政府は、特定技能人材の派遣人数を2023年までに7万人と目標設定するなど、日本に対する前向きな姿勢がうかがえ、減少が顕著なベトナムの技能実習生と比べて、インドネシアの存在感は増してきている。
2.インドネシア固有のボトルネック~特定技能試験~
しかし、これらの数字の裏側には、インドネシア固有の課題も潜んでいる。
インドネシアの送出機関LPK PDSのダニー・シナトラさんに話を聞いてみた。PDSグループは、日本に留まらずアジアを中心に計15か国へ人材を派遣している総合人材会社だ。これまでに約250名の特定技能人材を日本に送り出している。
シナトラさんは、「特定技能の認知度は徐々に上がっている。農業・漁業・飲食料品製造業などが特に人気」と語る。
しかし、試験の回数や開催場所、さらには特定技能人材を取り扱うライセンスの取得や調整など、現状のままでは、日本の期待するような拡大は難しいともいう。
特に試験回数・開催場所の課題はボトルネックになっているようだ。
「特定技能は職種によって試験開催の回数や場所が限られているため、沢山の希望者が受験する機会を逃している。インドネシアの広域な国土を考慮すると、最低でも7か所位での試験開催が求められる」と指摘する。
そして、この試験回数と開催場所の数が、各職種の認知度や人気度と比例しているとみている。
3.アンマッチの解消が受入拡大の鍵となる
例えば、「農業」は毎月のように、ジャカルタ、バンドン、ジョグジャカルタ等各所で開催され、多くの合格者を輩出しており、十分な候補者を確保できている。
一方、「宿泊」は、年2回しか試験が開催されておらず、会場も限られている。ホテル業に従事している優秀な候補者が集まるバリでは年1回のみと、アンマッチが生じている。
同じく「ビルクリーニング」においても、回数・会場ともに最小であるため、残念ながら認知度が低いという現状だ。
シナトラさんは、「日本のビルメンテナンス業界の外国人材ニーズは高まっていると聞いている。受験環境さえ整えば、インドネシアの若者にとっても魅力的な職種になるはず」と期待する。
今後、ビルメンテナンス業界における特定技能人材の受け入れは、業界発展の鍵となるであろう。インドネシアとの連携をさらに深化させ、双方のニーズを繋ぐ制度設計を行うことは急務である。
(※このコラムは、ビル新聞2023年9月25日号掲載「インドネシアの特定技能人材の現状」Vol.51を加筆転載したものです。)