特定技能、普及の兆しとこれから
1.特定技能制度の今
先日、出入国在留管理庁から、「特定技能」資格で在留している外国人が87,471人に上ることが公表された(2022年6月末時点)。
昨年同月の29,144人から一気に6万人弱も増えた計算であり、ようやく制度として普及の兆しが見えてきたともとれる。
とはいえ、2019年の制度創設時に掲げられた「5年で34万5千人」規模に達することは、もはや本格的に難しい事態となり、今後コロナ禍の出遅れ分をどのように巻き返していくのか、人材不足に窮する各業界から注目が集まるところだろう。
2.全体的に人材不足は変わらず、特に外食業では・・・
外国人就業やビザ取得に詳しい人材コンサルティング会社、株式会社dialog代表取締役 久保田誠さん(写真)に特定技能の最新動向について話を聞いてみた。
久保田さんによれば、現時点、特定技能人材の約8割が技能実習修了者からの移行で、次いで留学生からの移行者が多く、国外で開催される試験に合格し、初めて来日するケースはまだ少ないという。
また業種によって多少状況は異なるものの、ほとんどの対象職種において人材供給が全く追いついていないそうだ。
「特に外食業は今まさに、特定技能人材の取り合い状態ですよ」と久保田さん。
振り返ってみると、約二年前の緊急事態宣言下においては、多くの飲食店が休業を余儀なくされ業界は落ち込み、従業員の解雇や雇止めが相次いだ。しかし昨年の東京オリンピックが終了したあたりから、都心部で通常営業が再開されるようになり、急激に人手が足りなくなったため、まさに手のひら返しのリバウンド採用に転じているというのだ。
特に大手飲食チェーンでは、正社員として三桁単位の人数を求める大型案件が集中しており、コロナ前よりも多くの採用コストをかけて人材獲得合戦が展開されている。
ファストフードなどの飲食チェーン店であるなら、以前は採用コストを抑えて留学生アルバイトを雇用することが定番であったわけだが、この二年のコロナ鎖国により、留学生の数は大きく減ってしまっている。
3.今後の受入れ体制が鍵
その一方で、いわゆる「コロナ特例」(特定技能へのビザ移行を目指すという名目さえあれば、一年間の在留資格延長を認める)が発動されたことで、本来帰国すべき多くの留学生・技能実習生がそのまま国内に残留することとなった。
そして能力のある外国人は、着実に特定技能試験に合格し、外食業をはじめ様々な職種の就職戦線の表舞台に登場したという構図を久保田さんは指摘する。
コロナがもたらした特例期間は、期せずして特定技能への人材シフトを後押しし、もともと出遅れていた普及を結果的に埋め合わせることとなったとするのは言い過ぎだろうか。だが今後は各国からの受け入れが主軸となることが期待されている。
そのためには適正で円滑な仕組みづくりと、日本という国の魅力が鍵になることだろう。
(※このコラムは、ビル新聞2022年10月24日号掲載「特定技能、普及の兆しとこれから」Vol.43を加筆転載したものです。)